主席研究官 木全 紀元
1 国際電気通信サービスの規制、通信技術の国際標準化、電波の国際的分配、通 信分野での開発協力を任務とするITU(国際電気通信連合−国連の専門機関) は、世界的に拡大しつつある自由化、民営化といった通信制度改革の動きに対応 するため、自らの組織改革にのりだしている。 2 1TUの改革案は、ITUの既存の機能の整理という意味においては、成功と 評価できる。しかしながら、国際電気通信サービスの規制に関しては、有効な改 革案を提示できず、GATTやOECDがこの分野の国際的ルール作りに参入し ている。また、国際標準化についても、改革案により国際標準化活勅における ITUの卓越した地位の確保が可能か否か疑問である。電波監理は最も問題が少 なく、ITUにとり聖域ともいえる分野である。改革案では、開発機能の強化が 提案されたが、これは、ITUの他分野に対する財政圧迫要因となることが懸念 される。 3 1TUが思い切った改革案を提示できなかった理由は、ITUがその構成メン バーとしてPTTという規制と事業連合との複合体を想定しており、ここにメス を入れなかったからではないか。民営化、競争導入により、各国の独占事業体間 の共同事業であった国際電気通信は、グローバル通信マーケットにおけるグロー バル競争の時代に入りつつある。通信改革の1つの帰結は、規制機能と事業運営 機能の分離であり、ITUにおいてもその機能を規制に係わる部分と事業運営に 係わる部分とに分離する必要があると思われる。また、そうすることによって、 将来のITUの展望が開けるのではないか。