郵政研究所研究調査報告書



                                      1994年7月:調―94―I―01

『プリペイドカードに関する調査研究報告書』

                              第一経営経済研究部長 安住  透 
                                     研究官 永野 秀之
 公衆電話のためのテレホンカードが昭和57年12月に発行されて以来、磁気方式の前払式証票であるプリペイドカードは、鉄道・高速道路等の公共機関をはじめ民間のサービス業でも発行されるようになった。また、近年においては、単一の商品・サービスだけでなく、複数の商品・サービスに対して利用可能となるなどの利用範囲の拡大が試みられている。しかしながら、最近では、発行を停止する事業者が出現するなど、プリペイドカード市場は、その普及・定着において過渡期に差しかかっていると言える。

 郵便事業においても、郵便切手・はがき等を購入できるプリペイドカードである「ふみカード」の販売が平成元年12月から開始されたが、十分普及しているとは言えない状況にあり、利便性を向上させるための施策が求められている。

 本報告書は、「プリペイドカードに関する調査研究会」(座長 学習院大学前田庸教授)の成果物であり、最近におけるプリペイドカードの現状やプレミアム化・ジョイント化の付加といった高付加価値化の動向について調査した上、ふみカードの今後の事業展開を図る上での法的な問題及びその普及策を検討した上で、ふみカード及びプリペイドカード全体の今後の在り方について提言している。

プリペイドカードの特徴と現状
 プリペイドカードの特徴としては、・前払性―消費者が発行主体に対し信用供与を行っている、・汎用性―無記名性であり、ある程度、場所・利用範囲の自由度があり紙幣に類似している、・ギフト性―自由にデザインを印刷でき、無記名性であることから、ギフト需要が喚起される、・効率的な決済処理―迅速かつ正確な決済処理が可能である、が挙げられる。

 プリペイドカードの普及状況をみると、1989年以降、販売枚数、金額とも年々増加し、市場は拡大している。用途別にみると、つり銭の返却されないテレホンカードへのニーズが高かったことから、通信分野(電話・郵便)での普及が著しいが、最近ではレジャー(パチンコ・リゾート等)、物品販売分野(百貨店・スーパー、商店街・外食等)の成長が著しい。

ジョイント化(汎用化)・プレミアム化等の現状
 主なプリペイドカードのジョイント化・プレミアム化等の概要は次のとおりである。

・ テレホンカード
 販売状況は、2,371億円(平成3年度)、2,666億円(平成4年度)と、景気後退による企業のノベルティ需要の落ち込み等から、最近伸び悩んでいる。500円と1,000円のカードがあり、1,000円のカードには50円のプレミアムがついているが、ダイヤル通話料を営業所でテレホンカードにより支払うときは、プレミアム分が無効となり、さらに手数料が徴収される。偽造・変造事件が発生したことから、平成4年1月から3,000円、5,000円のカードの販売を中止した。

・ オレンジカード、イオカード
 オレンジカードは券売機を通じてJR6社の路線すべてで利用できるのに対し、イオカードは、事前に乗車券を購入せずに、自動改札機に直接カードを差し込んで利用し、利用範囲はJR東日本の路線内に限られている。オレンジカードは、10,000円のカードに700円、5,000円のカードに300円のプレミアムが付与されているが、イオカードにはプレミアムは付与されていない。販売状況は平成4年度でオレンジカードは324億円、イオカードは68億円であるが、イオカードは乗車券の購入時間の省略といった消費者の利便性が極めて高いため、最近、イオカードのほうが高い伸びを示している。

・ ハイウェイカード
 高速道路及び一般有料道路の通行料金の支払いに使用されるカードであり、料金所における渋滞緩和等を目的に日本道路公団が発行している。プレミアムは30,000円のカードで2,500円、10,000円で500円、5,000円で200円と比較的高額が付与されており、平成4年度の販売金額は2,100億円(増加率23.5%)と増加が著しい。売店でもハイウェイカードの利用ができるように汎用化した場合、利用者の利便性は向上するが、紙幣類似法に抵触する可能性がある。

・ セブンイレブンカード
 プレミアムは5,000円以上のカードにのみ付けており(平成6年1月までは3,000円のカードにも付けていた。)、タバコや塩等割引ができない商品については、使用できないようにしてある。販売状況は平成5年度で約40億円程度。新宿住友ビルの商店街とジョイントしており、汎用化は消費者の利便性向上、顧客の増加、カード発行コストの低減につながることから、カード発展の要因になると捉えている。

・ 商券カード
 京樽、タクシー及び深川商店街等で使えるカードであり、通算で2億円程度の売上げとなっている。カードの値引き販売を行っており、値引き率は販売代理店により異なるが、プレミアムは付与していない。

・ マクドナルドユーカード
 10,000円、5,000円、3,000円のカードにそれぞれ240円、110円、60円のプレミアムが付与されているが、今年から若干プレミアム率が下がっている。全売上げのなかでカードによる支払い金額の占める割合は10数%程度である。出光興産等とジョイント化しており、特定企業とタイアップすることによるPR効果を期待している。

・ IC―CARDIA
 烏山駅前通り商店街振興組合が発行しているICカードであり、「スタンプ機能」「クレジット機能」「プリペイド機能」を持っている。100,000円、50,000円、30,000円、10,000円の4種類のカードがあり、そえぞれ4,500円、2,000円、1,050円、300円のプレミアムが付与されている。平成5年12月現在で、7,000枚程度発行されており、女性の保有が圧倒的に多い。特定地域の様々な商店で利用できる汎用カードであり、利便性の向上、顧客の囲い込みというメリットがあるが、今後、商店街以外でも利用できるようJCBとの提携も検討している。

各カードの特徴と普及要因
 各カードの特徴と普及要因について、次ページの表のとおり整理した。
 成功しているカードの特徴としては、使用頻度(反復性)が高く使用可能範囲が広いこと(使える機械が多いこと)が挙げられる。また、カード普及の成功の要因の一つとしては「プレミアム付与」が挙げられ、消費者の経済的メリットの増大がポイントとなっている。しかしながら、経済的メリットのみが決定的要因とはいえず、イオカードのようにプレミアム付与がなくても消費者の利便性が著しく向上したために普及した例もある。

 一方、汎用化については「ユーカード」「商券カード」のように決定的な普及要因とはいえず、セブンイレブンカードやIC―CARDIAのように「日用品を反復して買う」というように対象範囲が広いほうが普及促進につながるといえる。

プリペイドカードの法制度の構造
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 プリペイドカードの根拠法は平成元年に成立した「前払式証票の規制等に関する法律」であり、プリペイドカード購入者の保護及びプリペイドカードに対する信用秩序の維持を目的としている。前払式証票(プリペイドカードと紙幣の商品券)は発行形態により発行者は自家型発行者と第三者型発行者に分かれる。自家型発行者とは、物品ないしは役務の提供者と証票の発行者が同一になる発行者をいい、第三者型発行者とは、証票の発行者とは別個に物品ないしは役務の提供者がいる場合の発行者をいい、後者は物品・役務の提供者と消費者との間での現金決済仲介機能を営む等のため、規制はより厳しく、広範囲に及んでいる。
 プリペイドカードとその他の法律との関係は次のとおりである。

(1) 出資法
 プリペイドカードにより生じる前受金は原則として出資法上の預り金ではないとして問題ないが、未使用残高の換金については出資法の脱法行為になる可能性があるので、購入者と発行者との間で交わされる標準約款においては、カードの使用が不可能となる等例外的な場合を除き換金を原則行わないと明記されており、換金するにしても、所定の手数料等を差し引いて換金する旨が規定されている。

(2) 商品切手発行税
 ふみカードには直接関係ないが、プリペイドカードには商品切手発行税(商品切手の発行者に対し、その発行額を基準にして発行者の存する地方公共団体が課する法定外普通税―実際に税を負担しているのは消費者)が課税されていたが、殆どの自治体が1994年4月から廃止している。

(3) 紙幣類似証券取締法―ジョイント化
 プリペイドカードのジョイント化を進めて汎用性が高まると、通貨に近い性格を持つため、国の通貨高権の侵害を守る法律である紙幣類似証券取締法に抵触する可能性がある。同法を所管する大蔵省の見解としては、紙幣の機能とは、何処でも、誰でも、何にでも支払いないし決済の手段として利用できることであるとしており、基本的にこのいずれかの要素が欠ければ紙幣類似とはならないとしている。プリペイドカードに関しては、これらの基準は同法上問題であるか否かの例示にすぎず、これらの基準を満たしたからといって直ちに同法が発動されるわけではないとしているが、以上の要件は換金が一般的に行われないカードに該当する。したがって、法解釈論上は、プリペイドカードの汎用化に対して紙幣類似証券取締法で規制を行っていくことは可能であるが、換金性が確保されるカードについては問題があるものの、原則換金を行わないとするプリペイドカードの現状では、汎用化の進展に対して同法は特に障害とはならない。

(4) 不当景品類及び不当表示防止法―プレミアム化
 同法は、景品や表示により顧客の誘因を防止するため、公正な競争を確保し、一般消費者の利益を保護することを目的としているが、プリペイドカードにプレミアムを付けることが、不当景品に該当するか否かが問題となる。公正取引委員会は懸賞によらない景品類の最高額等を定めており、プリペイドカード販売に関してはこれに該当するが、公正取引委員会へのヒアリングによると、カードに付けられるプレミアムは景品ではなく、商慣習上値引きを行っているにすぎず、同法は値引きを規制するものではないことから、景品類の最高額を超えるプレミアムを付けることは可能である。ただし、これはプレミアム自体が商品に含まれているためであり、例えばカードの番号を基に抽選を行ってプレゼントを贈る、または、カードの購入に付随して景品を付ける等の場合は、そのプレミアムは景品とみなされ、同法の制限に服する。

プリペイドカード以外の各種決済手段との比較
 プリペイドカードと、クレジットカード、デビットカード(銀行POS)及び商品券との決済面等における比較は次のとおりである。

(1) クレジットカードとの比較
 プリペイドカードは料金前払いという点でクレジットカードよりも販売店(加盟店)に有利であり、利用者にとってメリットが少ないが、クレジットカードは代金請求に係るID機能を有しているため信用照会に時間がかかるのに対し、プリペイドカードは処理時間が早く、信用照会の必要がなく、回線利用費、伝票の処理等にかかる費用等が安いことから、小口決済については、プリペイドカードの方が適している。

(2) デビットカード(銀行POS)との比較
 我が国におけるデビットカードとは、買物をしたときに即座に、代金が振り替え決済されるカードであり、銀行POSに該当する。(財)金融情報システムセンターが行った「金融機関の業務のシステム化に関するアンケート調査(平成5年)」によると、一件当たりの利用額は12,358円であり、加盟店は端末の設置費用、手数料がかかり、少額の利用には割高となるため、ふみカードの料金帯での銀行POSの対応は難しい。

(3) 商品券との比較
 商品券には、百貨店の商品券のように未使用金額が現金で支払われるものと、ビール券のように換金を一切認められないものとがあるが、プリペイドカードのようにお釣りをもらう煩雑さが解消されるといった顧客のメリットがなく、小口決済に対して反復利用することはできないため、自己使用のため購入するメリットは少なく、専らギフト用となっている。百貨店の商品券のように確固たる地位を築いているものもあり、また、一枚当たりの作成コストは一般的にプリペイドカードより低く、デザインの自由度も高いため、小口決済・反復使用に向かない、ギフト性が重視される分野においては、商品券はプリペイドカードより有利である。

プリペイドカードの今後の在り方
 プリペイドカードの利点は、反復使用を原則とする個人の小口決済を簡便化することにあり、テレホンカードをはじめとして急速な普及をみた。しかしながら、最近ではいくつかのプリペイドカードで発行枚数が頭打ちになる等、ブームは一つの転換点を迎えている。この点に関しては、郵政省が発行するふみカードも例外ではない。

 以下においては、ふみカードのプレミアム付与、ジョイント化の必要性・可能性の有無及び普及方策、さらにはプリペイドカード全体の今後の在り方について、民間企業のプリペイドカードの状況を踏まえながら、主として消費者の利便性の向上という観点から検討した。

(1) ふみカードのプレミアム付与について

 プレミアム付与の法的状況としては、公正取引委員会は、あまり好ましくないと指導しているものの、例えば1,000円のカードに対する50円程度のプレミアムは景品でなく、原則的には不当景品類及び不当表示防止法の対象外であるため自由に行えるとしている。同じ公共料金である電話・鉄道のプリペイドカードではプレミアムが付与されていることから、ふみカードにプレミアムを付与することに対する法的障害は、一見すると、形式的にはないように見受けられよう。 しかしながら、現実にプリペイドカードに付与されているプレミアムの性格をみると、「利息補償」(前払い額に対する消費者への機会利息の補償)としての性格に限られるものと、それに加えて、料金徴収事務の簡素化といった(社会的)コストの削減の目的を持つ「誘導割引」(主として非競争市場)ないしは同一顧客によるサービスの利用の反復性に対する特典としての「回数割引」(または顧客の取り込み、主として競争市場)の性格が加わったもの、とに分けられる。そして利息補償のみの場合には、料金の前払い性が確保されていることが前提となる(なおプリペイドカード自体は切手同様、サービスの給付ではないから、カード自体が実際のサービスの購入量の大きさに応じてなされる「数量割引」を持つことはない)。

 現在、発行されているプリペイドカードの付与状況を、この観点からみると、「テレホンカード」は、利息補償に、公衆電話の現金集金事務が簡素化されるカード利用への誘導割引の要素が加わったものと考えられる。従ってプレミアムの効力は、公衆電話による利用形態に限定されており、窓口における料金支払いに際しては、プレミアムを無効にした上、手数料を課す措置が採られている。また「ハイウェイカード」は、比較的高率のプレミアムを付与した例であるが、沿革的に回数券の代替商品であり、料金所における渋滞緩和のための誘導割引の要素が大きいとみるべきであろう。

 これらに対して、「オレンジカード」は、利息補償が主体で、誘導割引の要素は薄いと考えられる。従って利用は原則として自動券売機に限られているものの、例外的にはプレミアムを有効として窓口でも受け付けている。ただし、誘導割引を持たないことから、一般の回数券・定期券より割引率は低い。その一方で、自動券売機を通さない「イオカード」は、利用の反復性・小口性を担保するのが事実上不可能であるため、社会的コストの削減効果が期待されながらも、プレミアムを付していないが、その利便性から発行枚数は伸びている。

 また「セブンイレブンカード」「マクドナルドユーカード」に付与されたプレミアムは、本質的には回数割引であるが、前者では1994年1月に3,000円のカードのプレミアムを防犯上の理由等から廃止、後者でも同様の理由から1994年よりプレミアム率が圧縮されているが、やはり一定程度の成功を収めている。

 ふみカードのプレミアムの意義は、現在の郵便切手・はがき販売機の配備場所・配備状況から、誘導割引とは見なされ難く、オレンジカードのように、あくまでその前払い額に対する消費者への利息補償であると考えられるから、その導入には前払い性が確保されること、換言すれば、利用の反復性・小口性が確保されることが前提となる。従って、窓口での全額一括利用を制限し、切手発売機に利用全額の上限を設ける等の措置が、制度的・技術的に難しいとすれば、プレミアムは利息補償というその本来的な意義が正しく認識されず、消費者に対し、競争市場における回数割引との混同をもたらすものとなると考えられる。

 以上のことから、ふみカードへのプレミアム付与は、誘導割引の要素が希薄な場合には、郵便料金の公共性・無差別性との整合性を考慮に入れる必要があるとともに、それ自体成功の必須要件とはいえないことから、利息補償の前提となる料金の前払い性を担保する制度的・技術的手段が整わない限りは、導入に慎重になるべきであると考えられる。

(2) ふみカードのジョイント化について

 次に、ジョイント化については、原則換金を行わないとする現状では、プリペイドカードの汎用化の進展に対して紙幣類似証券取締法は特に障害にならないと解される。

 ふみカードが他のカードとジョイント化を実施すれば、カードの利用範囲が広がることにより、消費者の利便性は高まると予想される。しかし、現在ジョイント化しているプリペイドカードは、すべて精算やカード発行のために第三者機関を利用する第三者発行型であり、そのためのかなりの追加的費用がかかる。また、「ユーカード」や「商券カード」ではジョイント化(汎用化)が行われているが、その普及のための決定的な要因とはなっておらず、ジョイント化のみで成功している事例は見当たらない。

 以上のことから、ジョイント化は、費用上の問題を持ち、かつ成功のための必須要因とは思われないことから、現状においては慎重になるべきと考えられる。

(3) ふみカードの推進方策について

 以上のように、ふみカードのプレミアム化、ジョイント化については、その実施は困難であるとともに、必ずしも適切な方策とは思われない。従って、ふみカードの一層の普及には、プリペイドカードが消費者に支持された原点に立ち返ることが必要であり、換言すれば、ふみカードを利用することにより消費者の利便性が向上するような施策が必要である。

 この点に関して市場をみれば、消費者は、郵便切手・はがきの小口の購入に際して、例えば公衆電話のように、現金決済自体からくる特有の不便を感じているわけではない反面、定型規格・外国郵便料金・記念切手販売日等の情報の確認の煩わしさや、郵便切手が購入できる場所・時間帯についての制約は感じていると思われる。従って、消費者に対する利便性を向上させるための方策としては、ふみカードによる情報提供、及びふみカードの利用による郵便サービスに対するアクセシビリティの向上が考えられる。

 ふみカードによる情報提供については、ふみカードの表面に料金表や記念切手年間発売予定表を意匠することが考えられよう。

 一方、ふみカードの利用態様に関しては、郵便局窓口でふみカードの利用金額に応じてカードの金額を減額していくカード用減算機は、全郵便局(約19,000か所)に配備されているため、全局の窓口で利用が可能になっている。また、ふみカードが利用できる郵便切手・はがき発売機は、約2,000台配備(平成5年度末現在)されている。しかしこれらは、郵便局内の設置にとどまっているため、ふみカードによる不便さを回避することにはなっていても、追加的な利便性が消費者に提供されるまでには至っていない。

 アクセシビリティに関して、消費者にとってのふみカードのメリットは、本来切手を購入できないような場所・時間帯に切手を購入できるようになることにある。また、ふみカードによる郵便切手発売機を設置する行政当局にとっての最大のメリットは、現金を扱わないことからくる、管理・維持、その他のコストの低減にある。このため、ふみカード・現金併用機は、積極的な存在意義が薄いと考えられる。

 従って、現金取り扱いを伴わないふみカード専用の郵便切手発売機だけを、消費者の利便性が著しく向上すると思われながら、防犯上・安全上、その他の理由により現状では設置することが困難な場所、例えばポスト本体に設置する方法も考えられよう。ただし、これについては、行政当局側のコストの増大要因も考慮に入れる必要があることから、当面は試験的に実施し、利用者の反応を調査するのが適当と思料される。

(4) プリペイドカードの今後の在り方について

 プリペイドカードは、一時期の熱狂的なブームのあと、テレホンカードのようにほとんど日常生活の必需品として定着したものがある一方で、いくつかのカードの撤退事例も、最近ではみられる。これらのカードに共通してみられる点は、運用益、顧客の取り込み、ギフト需要といった発行者にとっての利点ばかりに目を向け、消費者の利便性の向上といった原点を見失っていたことである。

 郵便、電話等の通信料金、鉄道、バス、高速道路等の交通料金といった公共的性格の強い分野においては、まず第一にプリペイドカードがもたらす利用者の便を考慮に入れる必要があり、カードの前払い分の運用益を、事業にとっての追加的収入とみなし、それを目的の一部とする考えは、それ自体が利用者の持続的支持を得るのが困難であるのみでなく、事業の健全な発展を阻害する恐れがある。

 従って、これらの事業にあたっては、プリペイドカードによる利用者の利便性の向上に一層努めるとともに、前払い分の運用益相当額をプレミアム、ないしはそれが(ふみカードのように)困難である場合にはカードの利便性の向上を図ることにより、積極的に利用者に還元すべきである。そのことにより、小口決済の簡便化という優れた特性を持つプリペイドカードの一層の健全な発展と、消費者の支持に支えられた事業の安定と成長が確保されるものと考える。

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