1994年8月:調―94―I―03

『企業の情報化投資による物流の小口多頻度化と環境問題に関する調査研究報告書』

                            第一経営経済研究部研究官 宮尾 好明
                                     研究官 梅村  研 
1.産業連関表からの分析によると、情報関連サービス投入量の伸びは国内生産額の伸びを上回っており、企業の情報化投資が積極的に行われてきている状況がうかがわれる。一方、道路貨物輸送など物流分野への投入量の伸びは国内生産額の伸びとほぼ同じであり、企業の生産活動に付随して物流分野への投入がなされている状況が分かる。

2.物流と環境問題の関係について目を転じると、都市部におけるディーゼルエンジン自動車の走行の増加は、大気汚染をはじめとする環境問題の悪化をもたらした。都市部における環境問題の悪化は貨物の小口化に伴ってトラック運行が増大したために起こったという観点からは、貨物の集約などによる効率的な物流システムの構築に、環境問題改善策策定の主眼が置かれるべきであると思われる。

3.東京都における貨物流動をみると、卸売業から発せられるものが多く、特に衣服・身の回り品卸売業から発せられる貨物については、流動ロットが少量で流動件数が著しく多いことが注目される。また、食料品製造業から発せられる貨物については、流動ロットが少量化して流動件数が増大していることが注目される。いずれの場合でも、流動ロットの少量化をもたらしたものは消費者ニーズの多様化であるが、小売業の情報化による販売情報の把握、在庫削減のための単品単位での発注、などの要因も影響しているといえる。

4.貨物の流動ロットが少量化するとトラック運行の増大が生じることになるが、量販店やコンビニエンス・ストアなどチェーン店においては、納入物流の集約化を行ったり配送センターへの一括納入方式をとることにより、物流作業の効率化・平準化を行っている。また、アパレル業界では量販店の一括納入方式などに対応して、業界内での共同納入システムを構築している例がある。このように、貨物の小口化に伴う多頻度配送の発生を抑えるためには、共同配送・納入処理の集約化などが有効である。

5.物流業務の効率化は物流コストを削減すると同時に環境問題の改善をも実現する。そのため、物流コストの削減により、環境問題の改善が図られたことを認識・評価してもよいのではないだろうか。そして、物流コストの削減を推進するには、情報ネットワークの構築とトラック事業者の運賃・料金に対する規制緩和を行うことが必要であると考えられる。

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