1994年8月:調―94―I―04

『郵便物数の動向と将来予測に関する調査研究報告書(企業間通信の需要構造に関する調査研究)、(企業・生活者間通信構造(資料編))』

                              第一経営経済研究部長 安住  透 
                                     研究官 村尾  昇
はじめに
 企業間通信を取り巻く環境は、電気通信手段の発展により急激に変化し、郵便と電気通信との競合関係・代替関係が想定されるにもかかわらず、企業間における、郵便を中心としたよりミクロのレベルでの通信構造や、そこにおける郵便と電気通信との代替関係は必ずしも十分に明らかにされているとは言いがたい。そこで本報告書においては、まず、企業と企業との間の通信構造はどのようなものであるのかを、企業ヒアリングにより明らかにした上で、これを基に郵便と電気通信との代替関係及び企業間郵便物の短期的な予測の枠組みとなる計算式の導出について検討した。

企業間通信の需要構造の実態
 企業間通信の需要構造の実態を把握するため、20業種50社を対象として企業ヒアリングを実施した。ヒアリングは、「業務内容」「郵便物及び他メディアの利用状況」「利用状況の変化」などについて行い、・通信に関連する業務フローと通信パターン、・通信目的とメディア選択、・業種別通信需要とメディア利用の特徴などについて整理した。  このようなヒアリング結果からは、受発注などの物流に付随する通信は、郵便からファクシミリやオンラインシステムへのシフトが見られるのに対し、請求書は郵便の利用率が高いことなどが明らかになった。

郵便と電気通信との代替関係
 このようなヒアリング結果を基に、企業間通信を大きく商流通信、物流通信、マーケティング通信に分類し、通信の書面化、従ってそれと一体的な関係にある通信メディア選択について検討した。この結果、通信の書面化は法制度上の理由のみによるのではなく、・企業を単位に債権債務に関して行われる商流通信は、債権債務を表すという通信の性格から現物性が要求される、ということに加え、事業所を単位としてなされる通信と区別し、企業間の通信であることを明確化するため書面化され、・事業所を単位としてモノの流れに関して行われる物流通信は、効力の即時性・現場性からより利便性の高い電気通信(従って書面化の省略)が指向され、・企業(企業の意思決定主体)を単位とするものの債権債務を表す通信ではないマーケティング通信は、郵便が利用される一方で、その効果を目指して自由に通信メディアが選択されているものと考えられた。

郵便需要の月次推計
 以上のような企業間通信の需要構造を前提として、郵便需要の核需要となっていると考えられた「請求書」を基準として、以下のような企業間郵便物の短期的な予測の枠組みとなる計算式について検討を行った。

・企業別ヒアリングの結果を基に、請求書1枚当たりの金額及び年間の請求書枚数を100%とした場合の、その他の郵便の発送比率を求める。

・統計より得られる各業種の年間生産高を、請求書1枚当たりの金額で割り、業種毎の年間の総請求書枚数を求める。

・・で求めた総請求書枚数に、・で求めた請求書に対するその他の郵便の発送比率を乗じ、業種毎の郵便需要総数を算出する。

 このような考え方に基づき算出した郵便需要総数(推計値)と、郵便利用構造調査の結果から求められる企業間郵便物数(計算値)との比較を行った。この結果は、推計値と計算値との間に乖離が見られ、企業規模が郵便需要に与える影響などいくつかの検討課題が明らかになった。

おわりに
 以上の分析結果から企業間通信の構造は、商流通信は郵便、物流通信は電気通信、マーケティング通信はこれらを含めたあらゆる手段の組み合わせ、という機能分離の傾向を持ち、さらにこのような機能分離は必ずしも法制度のみによるものではないことなどが明らかになった。そして、現在行われている郵便から電気通信への代替は、現段階においては書面化され、かつ郵送されている物流通信の一部が、郵便→電話・ファクシミリ→EDIシステムというように情報通信システムの構築段階に応じて、より高度な電気通信に移行してきているものであると捉えることができた。

 このような通信構造を基に、企業間郵便物の短期的な予測の枠組みとなる計算式の導出を行ったが、この推計の結果は、現状では得られるデータに制約があるため、郵便利用構造調査を基に算出した数値との間に乖離がみられた。しかしながら、本報告書に示した考え方に基づき、今後さらにデータを精緻化していくことにより、よりミクロのレベルからの需要動向予測が可能であると考えられる。

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