郵政研究所研究調査報告書



                                       1995年9月:調―95―I―01

『地域間交流と地域の活性化に関する調査研究報告書』

                             第一経営経済研究部長 桜井 仁志
                                  主任研究官 丸岡 新弥
                                    研究官 小原  宏
1.我が国の人口増加も2010年頃には頭打ちとなり、多くの地方都市や農山漁村地帯では、現状の定住人口を維持することが難しくなると予想されている。
 このような状況においては、従来のような人口規模を前提とした地域経営を続けていくことは困難になってくる。そこで、地域の活性化のためには、地域外から地域にかかわりを持つ「交流」が必要とされ、これを促進するための事業として「地域間交流事業」が注目されている。

2.このような視点から、自治体(「自治体」とは、本報告書では「市町村及び東京都の特別区」を示す。)が行っている地域間交流事業の現状をみると、この5年間に特に力を入れた事業としては、「観光型行事」・「特産品展示会への出展」が上位に挙げられており、地域への経済効果を指向するものが多いものの、同期間内に新たに取り組み始めた事業としては、「研修生等の派遣」・「体験学習型交流」が上位を占めており、一方向型のものから双方向型の人づくりを目的とした取組が増えてきている。
 一方、地域間交流事業を進める上での問題点としては、「資金の不足」、「交流施設の不足」、「地域資源の不足」、「企画力の不足」及び「人材の不足」を挙げる自治体が多いのが現状である。

3.また、地域間交流の担い手となる住民の意識調査として、「ゆうパックの会(ふるさと小包の購入者の組織)」会員を対象に調査したところ、特産品を購入する場合には、特定の地域に対する「こだわり」や「思い入れ」よりは、普遍的でかつ気軽な動機により購入を決定していることが分かった。しかし、特産品を入手した際には、その特産品の産地に対して関心を持つ層が9割弱存在すること、また、少数派ではあるが地域との「長く・深い交流」を求める層が2割弱存在していること、地域のイベントや特産品に関する情報を求めている層が5割弱いることが注目された。

4.さらに、地域間交流事業に取り組んでいる郵便局長に対するヒアリング結果によると、自治体には見られないような柔軟な対応や個性的な取組が行われており、交流に際してヒト・モノ・情報の要素をうまく組み合わせて地域間交流を促進している様子がうかがえる。これらの結果から、地域間交流の展開イメージとしては、交流の要素であるヒト・モノ・情報を有機的に組み合わせ、その規模を拡大し、内容を充実していくことが求められていることが分かる。

5.これからの地域間交流を推進する上での課題は、単なるノウハウの提供や人材の育成プログラムの提供といった情報提供型の支援体制よりも、効果的な交流事業が見出せない自治体と一体となった取組がますます必要となってくると考えられる。
 そこで、(1)ヒトの観点(職員としての人の存在)、(2)組織の観点(全国規模のネットワークの存在)、(3)業務の観点(利用者・国民の生活に密着したサービスの提供)、(4)施設の観点(郵便局者等施設の提供)、(5)経営の観点(国営事業としての信頼・安定)から郵便局ネットワークの「地域性と広域性を兼ね備えた安定したヒューマン・ネットワーク」としての優位性が注目される。

6.このようなことから、今後の地域間交流事業における郵便局の役割としては、「自治体等が主体的に取り組む地域間交流事業に対する支援」と「郵便局が率先して行う従来型の地域間交流事業の推進」が求められる。
 前者は、地方の個々の郵便局区域内で取り組まれている地域間交流事業の事例を収集し、分析・評価し、データベース化するとともに、これらの成果を郵便局ネットワークを通じてフィードバックするシステム作りが有効な方策として考えられる。なお、その地域に実在していなければ入手できないような個別具体的な情報に対するニーズも考えられるので、地域が限定された加工されていないインフォーマルな情報を提供していく方向も考慮に入れる必要がある。
 また、後者は、既に取り組まれている「ふるさと小包」、「活き活き情報交流サービス」、「かんぽ健康増進支援事業」等のように郵便局が率先して本来業務及びそれに密接にかかわる役務の範囲内で地域間交流事業を行っていく方策である。