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金融・経済コラム

ネコノミクスは消費喚起に一石を投じるか

2月22日は何の日かご存知だろうか。ニャンニャンの語呂合わせで猫の日だ。いつから猫の日と呼ばれるようになったのかわからないが、猫に纏わるイベントが各地で開催される。空前の猫ブームだそうだ。猫グッズ、猫カフェ、猫島が国内外で一大ブームになっているという。猫グッズはわかるが、猫カフェや猫島とは何か。

猫カフェは猫と直接触れ合えるカフェで台湾が発祥地だそうだが、日本には300店舗ほどあるそうで世界でも最も多いというから驚く。来日した外国人観光客がSNSに投稿して知名度が上がっているようだ。

猫島は人より猫の方が多い島というくらいの意味で、愛媛県の青島、宮城県の田代島、香川県の直島、福岡県の相島が有名だ。島民と猫たちは仲良く共存し、のんびり暮らしていたのに、猫目当ての観光客が押し寄せ、勝手に餌をやったりして島民とトラブルになっている。観光業で潤うのは良いが、静かな暮らしが阻害されては元も子もない。マナーは守りたいものだ。

今年から、ねこ検定という猫に関する知識をチェックできる検定制度も始まった。合格者には認定証を授与し、受検料などの収益金は猫の保護活動などに充てられるという仕組みだ。猫ブームは止まることを知らないようだ。


犬と猫は人間の傍で暮らす最も身近な動物だろう。2017年1月17日に公表された一般社団法人ペットフード協会の平成28年全国犬猫飼育実態調査によると、犬は790.2万世帯で987.8万頭、猫は554.2万世帯で984.7万匹がペットとして飼育されていると推計されている。

犬の飼育数が近年減少傾向にあり、猫が横ばいのため、早晩逆転すると見込まれている。この飼育数には、家で飼わず餌だけを与えるいわゆる外猫は入っていないので、猫と接する暮らしをしている人は既に犬を超えているのではないだろうか。

平均寿命は犬で14.36歳、猫で15.04歳だが、家から出ない猫は15.81歳なので、猫の方が長生きという人々の感覚は実態に合っていると言えよう。犬や猫は子供達の心を豊かにし、お年寄りの孤独を慰め、夫婦の会話を促進するなど一緒に暮らす効用が大きいことはこの調査結果でも如実に表れているという。

筆者は犬2頭をそれぞれ17歳まで飼育し、その死亡後、猫を飼い出して、現在三匹の猫を飼育している。犬はもともと群れで生活し組織的行動を取る動物なので飼主に忠実で教えたことをよく守り、猫は独立性が高く群れることは避け飼主の言うことを聞かない。一般的にはそう言われるが、家の中で飼う犬や猫にはこのような特質が顕著に表れるとは限らないと実感する。猫もよく言うことを聞いてくれるからだ。甘えん坊で依存心が強く、決まった場所で餌を食べ、割り当てられたケージの中で就寝する。

犬と猫の飼育上の最大の相違は排泄を家の中でできるか否かだろう。犬は外でしか排泄しないから必ず毎日散歩に連れ出さなくてはならないというのは間違っていないが、最近は小型犬の猫化で室内の一定の場所で排泄する習慣を持つ犬も珍しくないと言えるのではないか。


空前の猫ブームの火付け役は和歌山電鉄貴志駅の名誉駅長三毛猫たまだという。集客力のアップや関連グッズの売上げ増などでその経済効果は11億円に上るとも言われた。このような猫ブームによる経済効果をネコノミクスと称したのは、宮本勝浩関西大学名誉教授の「ネコノミクスの経済効果」という論文が先駆けのようだ。

安倍政権がデフレ脱却と経済再生を掲げて提唱した三本の矢ー異次元の金融緩和、機動的な財政出動、大胆な成長戦略ーの経済政策をアベノミクスと称したが、これになぞらえて、ネコノミクスと銘打ったそうだ。この論文によれば、2015年一年間のネコノミクスの経済効果は2兆3,162億円に上るそうだ。

ちなみに、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果は2013年から2020年までの8年間で2兆9,609億円と推計されている(東京都の試算)ことを考えれば、ネコノミクスの経済効果が如何に大きいかがわかる。

この論文によると、ネコノミクスの経済効果は猫の飼育に関係する餌代などの費用、写真集等の猫グッズの売り上げなどの直接効果とこの波及効果に分かれる。直接効果のうち、主たるものは飼育費用だが、猫一匹の餌代は2,348円/月で年間2万8,176円、猫砂等のトイレ費用が650円/月で年間7,800円、ペット保険やおやつ代、遊び用具等の日用品など付属的経費を加算すると、年間11万1,424円となると推計されている。

これに2015年の猫の飼育数約987万匹を乗ずると、約1兆1,000億円となる。この他、ねこの駅長などによる観光客誘致などの観光分野での直接効果約40億円、猫の写真集等猫関連グッズの売り上げで約30億円を加えて、直接効果は、約1兆1,070億円と弾いている。

筆者の家の家計簿を見てみると、2016年で、餌代は猫三匹で年間約5万4,000円なので一匹当たり1万8,000円程度、トイレ費用は年間1万9,200円なので一匹当たり6,400円となり、この論文とは、餌代に大きな差が出た。餌も高級なものから一般的なものまで多種多様なものが出ているからかもしれない。

ペット関連産業の売上げ増などの波及効果は直接効果と同程度の規模と見込んだようで、全体で2兆円超の経済効果となったものだ。


如何に空前の猫ブームとはいえ、ネコノミクスだけでアベノミクスを成功に導くことはできないが、アベノミクスの弱点は消費の喚起にある。消費者も好きなことや興味のあるものには意外と簡単に財布の紐を緩めるものだ。結構高額な消費も厭わない。

そして、ブームが社会的現象にまで高まれば大胆な消費行動に繋がり、一気に拡大することがある。たかが猫、されど猫だ。人間の傍らで決してお前たちの世話にはならないぞというようなしたたかな顔をしながら賢くかつ愛らしく生きる猫たちが我が国の消費喚起に一石を投ずることになれば、猫好きとしてこの上ない喜びである。



(2017年4月27日 掲載)

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