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金融・経済コラム

ふるさと納税制度は本当にふるさとを応援しているのか

8月8日、野田聖子総務大臣は、ふるさと納税の返礼品競争の是正を巡って、「極端な例だけを見て押さえ込むのではなく、転売をどう止めるかを考えたい」と述べた。総務省は返礼品の過当競争を是正するため、4月に返礼品額を寄附額の3割以内、電化製品や家具などの資産性の高いものや高額なものを止めるように自治体に通知していた。

野田大臣は、自治体から反発の声が上がっていることを踏まえ、返礼品の対象になることで地元特産品の利用が増大し地場産業の振興に繋がっていることなどを重視し、一律の自粛要請に疑問を呈したという。


ふるさと納税制度とは、総務省ホームページによると、

「ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限はあります。)。例えば、年収700万円の給与所得者の方で扶養家族が配偶者のみの場合、30,000円のふるさと納税を行うと、2,000円を超える部分である28,000円(30,000円−2,000円)が所得税と住民税から控除されます。

また、自分の生まれ故郷だけでなく、お世話になった自治体や応援したい自治体等、どの自治体でもふるさと納税の対象になります。」と記載されている。


2016年度のふるさと納税受け入れ総額は、約2,844億円で、前年度の約1,653億円に比べ、約1,200億円近く増加している(総務省ふるさと納税に関する現況調査2017)。これは、この年に、ふるさと納税の上限が約二倍に引き上げられ、税金の控除を受けるための確定申告の手続きが緩和されたためだ。各自治体の返礼品競争が加熱し、寄附額を上回る価値の返礼品を提供する自治体が多額の寄附を集めたこともこれに拍車を掛けていることは言うまでもない。

ちなみに、最も寄附を集めた自治体は、宮崎県都城市で約73億円に上る。昨年度も約42億円でトップだったが、返礼品の高級和牛肉などが人気を博したそうだ。増加の理由として各自治体が上げたのは返礼品の充実が最も多く、前述の総務省の自粛要請に都城市などは反発し、応ずる構えを見せていないという。


筆者の地元栃木県もふるさと納税の過当競争に巻き込まれているが、地元紙に興味深い記事を見付けた(2017年8月21日付け下野新聞)。寄附受け入れ額から他自治体に流出した市町民税額を引いた、県内各自治体の収支一覧が掲載されたのだ。

これによると、那須町が最も収支がよく、約2億円の黒字で、宇都宮市は約3億4,000万円の赤字となっている。さらに、返礼品調達経費、寄附募集のため経費などの必要経費については、那須町は約1億円、宇都宮市は約1,500万円支出している。特出すべきは栃木市で、収支が約4,900万円の黒字にもかかわらず。必要経費に約5,500万円を支出し、トータルで持ち出しになっていることだ。これでは何のためのふるさと納税なのかと市民に批判されそうな状況だ。


ふるさと納税制度は、自分を一人前に育て都会に送り出してくれたふるさとが高齢化・過疎化で衰退しつつある実態を見て、ふるさと再生のために何かできないかという気持ちに応える制度として構築されたものだ。地方創生の一環でもあるという。それが、今や、税金を逃れ、寄附に乗じて高額の返礼品を貰おうという気持ちを煽る制度に変質してしまっているのではないかという疑問が拭えない。


問題は二つあると思う。

一つは、もちろん、返礼品の過当な高額化競争だ。返礼品は、この制度を使って多額の寄附をしてくれた人に、自治体がお礼の気持ちとして、ふるさとを思い出してもらおうと地場産品などを送ったのが始まりではないだろうか。特出する地場産品のない自治体が、寄附を集めようと、商品券などの換金性の高い商品(現在、各自治体は批判を受けて自粛している)や家電製品・家具などの高額商品に手を出したところから、そもそもの制度の趣旨を忘れ、返礼品目当てに寄附するという間違った行動を煽ったと思う。

ネット上では仲介サイトが氾濫し、どの自治体が高額の返礼品を提供してくれるかを特集し、寄附額に対する返礼品の価値をコストパフォーマンスと称して序列化するまでに至っている。寄附とは、対象となる活動が自然保護や災害対応など社会貢献を目的とするなど自らの考えに沿う場合に何らかの支援をしたいという純粋な気持ちからなされるものであり、そもそも対価や見返りを求めないものではないだろうか。

高額な返礼品で寄附を募り、その調達経費等で結果的に持ち出しになるなど本末転倒だと思える。総務省が制度の趣旨に反し、ふるさとだけではなく、お世話になった自治体や応援したい自治体にも寄附ができると、実質上、対象自治体を無制限にしたことが過当競争に拍車をかけたことも間違いない。


もう一つは、この制度で寄附した人は、上限はあるが、2,000円を除いて全額が所得税や住民税から控除されることだ。所得税の控除は一般の自治体への寄附の場合と同じだ。これに住民税の控除も加わったことが問題の発端だ。

この控除で居住する自治体の税収は減少する。税収が減少すれば、暮らしに必要な住民サービスの質や量が低下するのは必然だ。居住地でふるさと納税をしない人と同様の行政サービスを受けながら、一部の税金を払わず、他の自治体に寄附して高額の返礼品を受け取るのはおかしくはないだろうか。実質的にふるさと納税をしない人がしている人の税制上の負担を肩代わりをしていることにならないだろうか。


自治体は寄附額で、絶滅危惧種の生物の保護・育成や地震被害からの早急な復旧・復興事業などに充当している。このような自然保護や未来への投資に賛同して、寄附している人もたくさんいる。ふるさと納税の趣旨は間違っていないと思う。寄附が見返りを求めて、税の控除や返礼品提供と結びついていることが問題の根幹ではないだろうか。

ふるさと納税と謳っていても実態は寄附でしかない。寄附は寄附とし、税制上の特別な優遇措置からは切り離すべきだ。死後、遺産の中からお世話になった人・自治体や公的な目的を掲げて活動する団体に寄附される遺贈も寄附である以上、役に立ててもらいたいという純粋な気持ちだけで見返りを求めない。


ふるさと納税制度の税制上の措置は一般の寄附の場合と同等の措置に戻すべきで、居住地の住民税を控除することは即刻廃止すべきではないだろうか。そうすれば、居住地での税制負担の不平等性は是正される。

また、自治体間の返礼品の高額化競争にも総務省が口を出す必要もなくなる。自治体が高額な返礼品を提供すれば、寄附金を返した上に利子も付けたのと同じではないかと市民の批判を招いて自ずから是正されよう。ふるさと納税制度が始まって10年。本当に自治体の財政と活動に貢献しているのか冷静に検証すべき時期に来ているのではないだろうか。

前述の総務省の「ふるさと納税に関する現況調査」でも、返礼品を提供していない自治体で今後とも提供する考えのない自治体が61(3.4%)もあることも忘れてはならない。


(茶臼岳)
(2017年9月12日 掲載)

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