第二経営経済研究部長 原田 泰 第二経営経済研究部研究官 松浦 秀樹
日本企業の利益率が欧米にくらべて格段に低いということが自明の事実であるかのようにしばしば 論じられている。 しかし、70年代後半から現在にいたるまでの日本企業の利益率を通常用いられる利益率の指標で 国際比較すると、西独よりも高いかほぼ同じである。 さらに、通常用いられる利益率の指標は概念的に問題が多いため、概念を共通にした利益率の指標 で国際比較することが望ましい。これによれば、日本の利益率は世界一高いか、少なくとも米国や西 独の利益率よりも低くはない。 このように、ずさんな国際比較によって日本企業の利益率が低いと主張され、かつその主張が広く 受け入れられるのは、そのような主張が企業にとっても生活者にとってもある種の実感をもって感じ られるからであり、加えて、80年代末の誤った過大投資によって引き起こされたバブルの崩壊後、 日本企業の利益率が急速に低下しているからである。 反省すべきは、過大な金融緩和を行った当局と、それに乗ってしまったごく最近の企業行動だけで あり、日本企業の構造的体質ではない。