3 計量方法について 公定歩合は、連続的に変化するのではなくある一定以上の大きなショックが加わった場合に変更される。ある一定以上のショックがあるときにのみ反応する場合の分析方法としてFrictionモデル(Rosett[1959],Maddala[1983]参照)がある。また変更しない=0、引き下げ=1、引き上げ=2と各々の政策決定内容を質的変数に変換して分析するMultinomial Logitモデルがある(Grrene[1997]参照)。両者について簡単に解説する7)。 ある一定以上の負のショックが加われば、引き下げを行い、逆にある一定以上の正のショックが加われば引き上げる。またショックがその範囲内であれば現状を維持するというモデルを考え、次のように定式化する。
yi = yi*−α if yi* < -α 1.1) yi = yi*+α if α<yi* 1.3) を考える。yi* は外部の負のショック-αが大きいとき引き下げ(1.1式)、逆に正のショックαが大きいときは引き上げ(1.2式)、その範囲内であれば現状を維持することを示している(1.3式)。 このとき尤度関数は次式により求められる。
i番目の経済主体によりs個の選択肢からj番目の選択が行われたとする。このことはiにとり他の選択肢よりもjの効用が等しいか大きいことを意味している。効用を Uij =xijβj+εij 3) と書くこととする。ここでxijは経済主体iがjを選ぶときに影響すると考えられる説明変数ベクトル、βjは係数ベクトル。εijは誤差項で互いに独立で exp(-exp(-z))の累積分布とする。jは他の選択肢より効用が高いのだから P(Uij ≧Uik) for all other j≠k となる。書き換えると次のようである。 Uij*=Uij −Uik=vij+εij* 4) vij =xijβj−xikβj εij*=εij−εik このときMultinomial Logitモデルは以下により求められる。
Multinomial Logitモデルの場合、その推計結果の係数は相対的なoddsの比率を示すので8)、解釈は必ずしも容易ではない。個々の説明変数の直接的な影響をみるためには次のマ−ジナル効果を分析する必要がある(Cramer[1991],Greene[1997]参照)。マ−ジナル効果をδj と書くことにする。
δjの漸近的な分散共分散は次により求められる。 ^ Asy.Var[δj]=GjAsy.Var[β]Gj′ βは全てのパラメ−タベクトル。 ^ ^ Asy.Var[δj]=ΣlΣm Vjl Asy.Cov[βl,βm]Vjm′ j,m=0,---J 8) ここで Vjl=[1(j=l)-Pl]{PjI-δjx′}-Pj[δlx′] 1=1 if j=l 0 otherwise これによりマ−ジナル効果の有意水準を求めることができる。したがってマ−ジナル効果の有意水準とMultinomial Logitモデルの有意水準が一致するという必然性は必ずしも無い9)。 この2二点が、Multinomial Logitモデルから得られる係数自体の解釈は必ずしも容易ではないという理由である。 |