郵政研究所月報

2000.10


調査研究論文

信託と信託商品の特徴


第三経営経済研究部研究官

山本 和尋

[要約]

 信託の定義は、「財産権を有するもの(委託者)が法律行為(信託契約や遺言などの信託行為)によって相手方(受託者)に財産権(信託財産)の移転その他の処分をなし、相手方をしてその財産権につき一定の目的(信託目的)に従って、委託者本人または他の第三者(受益者)のために、管理・処分をなさせるところに成立する法律行為」である。信託の特徴としては、(1)財産権を移転すること、(2)信託財産の管理・処分権は受託者に帰属すること、(3)信託財産に独立性があること、(4)信託財産には物上代位性があること、(5)信託財産から生じた収益に対する課税については、実質所得者課税の原則が適用されること、(6)委託者の名前が表面に出ない「匿名性」の側面を持つこと、などである。
 信託商品は、これらの信託の特徴を生かした商品であり、社会経済的なニーズを受けてさまざまな商品が提供されてきており、新しい信託商品も登場している。信託商品の特徴は、(1)信託拠出することにより特定の資産を全体の資産から切り離すことができる、(2)受託者の専門的な財産管理能力を活用できる、(3)信託の基本的な仕組みをベースとしつつも、信託商品ごとに個別に法律、税制などが定められ、制度の内容が信託の利用の促進に大きく影響を与える、(4)財産権を信託受益権に転換し、さまざまな種類の信託受益権に分割したりすることによって、多様化する投資家のニーズに合わせた商品を提供できる、などである。
 信託商品は、今後は資金流動化と資金運用のスキームとしてこれまで以上に活用されることが期待される。

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