郵政研究所月報

2000.12


調査研究論文

イギリスの公益事業における料金規制


前第一経営経済研究部研究官

沼田 吾郎

[要約]

1 公益事業における規制改革は経済の基本的潮流として世界的に広がっている。公益事業の多くの分野で規制改革が進展する一方、伝統的な公正報酬率規制に代わる新たな料金規制方式の導入が試みられている。国内の事例を見るまでもなく、今後も新しい料金規制への変化は続くと考えられるが、今後の公益事業の料金規制政策を予測するうえで、これまでの料金規制の動向を検証することは重要である。

  そこで、今回、1980年代初頭から民営化されたイギリスの公益事業(電気、ガス)における料金規制の実態を検証し、今後の公益事業における料金規制政策の研究に資することとした。

2 調査の結果、イギリスにおけるプライスキャップ規制の問題点として、以下の2点が判明した。

  (1) 時間の経過とともにフォーミュラ、バスケットが複雑化、多様化してきている。

  (2) 料金改定期間に一貫性がない。

3 イギリスでの経験からするとプライスキャップフォーミュラは実用的に改善するほど透明性に欠けるフォーミュラ、システムになりやすく、また、各事業者の経営状況を細かく反映する必要が生じることから、公正報酬率に近づく。

  このことから、日本の公益事業の料金規制に対する示唆として、プライスキャップ本来のインセンティブ特性を重視するならば、その精緻化についてある程度の調整項までにとどめる規制庁の判断が必要である。

⇒本文pdfへ