郵政研究所月報

2000.12


調査研究論文

地方財政危機の要因分析

―大阪府の事例を中心に―


第三経営経済研究部研究官

土屋 岳宏

[要約]

 今日の大都市圏自治体を中心とした財政の危機的状況は、その歳入構造が景気の変動に影響されやすい法人二税に依存しているという歳入面の構造的要因によるところが大きい。しかし、大阪府のバブル経済期の財政運営が示すように、好景気に支えられた地方税の増収を財源に、不要不急の普通建設事業や第三セクター関係事業を拡大させ、本来ならば景気低迷期の財政需要に備えて基金等に留保すべき財源を浪費した財政規律の低下も、地方財政危機を招いた要因の一つといえる。さらに、バブル景気破綻以降も、起債許可方針や交付税措置を手段にした国の景気対策目的の財政誘導に呼応し、地方債や債務負担行為の増発、あるいは基金の取り崩しで財源を捻出して地方単独事業を拡大していった自治体の財政運営も、地方財政危機の重大な要因となった。加えて、自治省の地方債許可制度を通じた自治体財政監視機能の後退、あるいは財政の実態が把握しにくい財源保証システムの存在、自治体会計における債務ストック等に関する情報の欠如等もこの要因として指摘できる。以上から、今日の地方財政危機の背景には、景気低迷による税収の落ち込みという側面があったとはいえ、バブル経済期以降の無規律な行財政運営や財政の健全性を監視する上で不可欠な債務ストック等の会計情報の欠如といった側面も存在する。

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