郵政研究所月報

2001.4


調査研究論文

消費者物価指数を巡る議論について


第三経営経済研究部研究官     

荒田 健次

[要約]

物価指数は国内外の経済情勢を反映した「経済の体温計」として重要な経済指標である。

 とりわけ、消費者物価指数(CPI)は厚生年金や国民年金など公的年金の支給額の算定根拠となる他、民間企業の賃金決定に影響を与える等の需要な役割を担っている。

 1999年4月を景気の谷とした回復過程にありながら、CPIが下落傾向をみせるなど、「デフレ」議論と相まって物価指数の在り方を巡って活発な議論が展開されている。

 

 アメリカでは、1990年代後半に入ってCPIを巡る議論が活発になり、1996年12月に米国議会のCPI諮問委員会が上院財政委員会に報告書(ボスキンレポート)を提出し、米国のみならず他の国でも注目された。日本におけるCPIの議論もこのレポートを根拠にしているものが見られる。

 

 我が国でも、1999年5月11日の日本経済新聞に「消費者物価指数が実際より高め」という記事が掲載されたことから、CPIを巡る議論が高まってきている。

 

 その他、卸売物価指数や企業向けサービス価格指数が下落を続けデフレ懸念が言われる状況にあって、CPIはほぼ横ばいで推移していることに疑念の声もある。

 これらのことから、CPIを巡る議論が活発に行われている。

 

 本稿ではまず、それらの議論等を概観することとする。

 

 総務省統計局は現在の1995年基準指数から2000年基準指数へ変更し、2001年8月の公表日から切り替える予定にしている。この改訂によって、情勢の変化や要請をできる限り的確に指数に反映させることとしている。より精度の高い指標になるとどうか注目されるところである。

 

 経済統計にはサンプルバイアスが付きものであり、すべての実態が把握できるわけではない。その他の経済指標と総合的に判断し、国全体、世界全体の状況を判断すべきである。しかし、逐次、経済統計の精度を高める努力は求められる。

 

 最後に、CPIと実感の乖離について、ライフスタイルや家族構成(ライフステージ)の違いによって、CPIと実感に乖離が発生することを検証し、「生計費の指数として世帯属性ごとの指数を作成する」ことを提唱する。

⇒本文pdfへ