郵政研究所月報

2001.9

調査研究論文

インクジェット用年賀葉書の課題と仕様改善への取組

−より一層お客さまにご満足いただくために−


通信経済研究部技術開発研究グループ主任研究官  細川東洋一
研究官  北島 光泰

[要約]

  1.  ここ数年、パソコン・プリンタの高性能化・低価格化、デジタルカメラ・葉書作成用ソフトの普及などが相まって、年賀状等の作成手段にインクジェットプリンタを活用する割合が確実に増加してきている。
     こうした状況にあわせ、総務省(旧郵政省)は、プリンタ向けの年賀状として、平成9年度(平成10年用)において初めて、41億7,680万枚の年賀葉書のうち2億枚(全発行枚数の約4.8%)について、「コート紙」と称する新しいタイプの年賀葉書(現在の「インクジェット用年賀葉書」)を発行し、翌平成10年度(平成11年用)からは、名称を「インクジェット紙」に改め、現在に至るまで順調に発行枚数を伸ばしてきている。
     ちなみに、直近の平成13年用の発行枚数は、発行当初の3倍強に当たる6億6,199万枚(発行枚数42億2,500万枚の約15.7%)を数え、さらに、平成14年用は約6倍に当たる11億8,746万枚の発行が予定されている。

  2.  初年度においては、その前年度(平成9年用)の「版画用」仕様から180度転換したことから、お客さまから紙質等に関する苦情や照会を多数いただく一方で、PR不足から販売が伸び悩み、無地の年賀葉書を求められるお客さまに、「コート紙」に関する説明を行って購入していただくなど、今日の利用状況とは隔絶の間がある。
     当初は、にじみ、発色濃度、コート層の形成などの葉書品質にバラつきが散見され(用紙の抄造が複数メーカによって行われていることによる)、また、平成12年用のものについては、コート面(通信面)の色合いに微妙な品質差(クリーム色に見えるものと白色に見えるのものとが存在する)が発生するなど、より一層お客さまにご満足いただくために品質を向上させていくことが必要である。

  3.  こうした状況に対応するため、インクジェット用年賀葉書に求められる品質の確保と均一化を目的として、お客さま意見・要望の把握、品質格差の分析、研究会を開催しての規格の検討、試作見本の調製などを経て、新しい性能書の作成に取り組んできた。
     その結果、7項目の新規格〔(色合い、裏抜け、表面強度、にじみ・はじき、粉落ち、裁断、見本品の提出(発色・濃度・紙詰まりを確認する)〕を加えた新しい性能書を作成するに至った。中でも、コート面の色合いについては、「標準色スケール」による色合わせ方式の導入を提案している。

  4.  このような取組にあわせて、私製のインクジェット用葉書の販売実態、品質等に関する調査も進めてきた。
     私製のものには、マットタイプ(インクジェット用年賀葉書と同タイプ)と光沢タイプがあるが、販売は光沢タイプが主流になっている現状にあり、一部の光沢タイプにおいては原紙に「ポリエチレン両面ラミネート紙」を使用した写真向けの高品質のものも販売されていることが分かった。一方マットタイプのものについても厚さ、坪量、コート面の色合い、あて名面(コート化)などに多くの違いがあることが分かった。

  5.  さらに、インクジェット用年賀葉書の品質等についてお客さまがどう評価しているかを確認するため、インクジェットプリンタを使用して、平成13年用インクジェット用年賀葉書により年賀状を作成された方々を対象としたアンケート調査を実施した(平成13年1月16日〜1月29日 有効回答数1,029票)。
     その結果、コート面の色、発色、にじみなど品質評価8項目すべてにわたり、80%以上の方に「満足している」との評価をいただいたほか、97%の方からは「来年も使用したい」との回答をいただいた。


全文 インクジェット用年賀葉書の課題と仕様改善への取組