- 金利の決定に関する基本的な考え方は、「金融資産の需要と供給で金利は決まる」というものである。価格の伸縮性に関する評価に応じて、実物経済要因と貨幣的要因を重視するそれぞれの立場があるが、いずれにおいても経済のファンダメンタルズが重要な決定ファクターである。
- 長期金利と短期金利を特に区別して考える「金利の期間構造」理論において、もっともベースとなるのが「期待仮説」である。その基本的発想は、「長期金利は短期資産をロールオーバーした運用収益率に等しくなる」、すなわち「長期金利は将来の短期金利の期待値から想定される収益率と裁定関係にある」というものである。
- 期待理論をより精緻化して現実に近付けるために、期間毎のプレミアムを想定することが多い。そのための仮説が、(1)残存期間が長いほどプレミアムは大きくなるとする流動性選好仮説、(2)債券市場は残存期間毎に分断されており各期間毎の需要と供給から利回りが決まるとする特定期間選好仮説である。また、プレミアムは時間を通じて変化するとの見方が有力である。
- 長期金利は満期が長いため物価変動の影響を受けやすいが、名目金利と実質金利の関係を説明する有力な仮説が、「名目金利は実質金利と期待インフレ率の和になる」とするフィッシャー仮説である。
- 期待仮説、プレミアム仮説、フィッシャー仮説のいずれについても実証研究を困難にしているのが、対象とする変数が直接観察できない点にある。この点について、各研究とも、別途時系列モデルにより変数の推計値を作成したり、データの選択を工夫するなど腐心している。もっとも、その結果を総じてみれば、各仮説とも一定の説明力を持っているとみられる。
- 異なる期間の金利格差をみる期間構造に対し、信用リスクや流動性などから生じる金利格差をみる視点が「リスク構造」である。例えば、格付けは信用リスクを表す重要な指標である。国債は他の債券に比べ、信用度、流動性とも優れていることからリスク構造上のベンチマークとされるのが一般的である。また、信用不安が高まったり、政府債務残高が膨れ上がると、その国の債券市場におけるリスク構造に変化が生じることになる。
- 実際の予測については、学界・実務関係者の見解も考慮していえば、圧倒的に説明力の高い単一のモデルがあるわけではなく、(1)ベースとする理論モデル、(2)説明変数の選定、(3)モデルの形式、(4)予測期間毎のモデルの使い分け、(5)異なる期間モデルの接合、(6)推計期間などを考慮しつつ、適合性がよく使いやすいモデルを模索することになる。
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