郵政研究所月報

2001.12

特別寄稿

郵政事業資金における地方債運用の現状と課題


大阪大学大学院国際公共政策研究科教授  跡田 直澄

[要約]

  1.  新しい財政投融資制度(平成13年4月から実施)では、郵貯資金・年金積立金の預託義務が廃止され、市場における自主運用に移行することとなった。ただし、郵貯資金、簡保資金については、市場運用の例外として地方公共団体貸付けを行うこととなっている。

  2.  地方債は、地方公共団体等が発行する多様な債券・借入金の総称であり、事業内容にもかなりの相違があるとみられるが、現状ではこれらの資金の調達条件はほぼ同一である。バブル崩壊以降、地方債の発行は急速に拡大している。

  3.  地方債は、国債などと比較すると一回の発行量が少額となり、発行頻度も低く、流動性は低い。流通性向上のための措置としては、市場公募地方債については満期一括償還方式の導入、繰上償還条項の削除、償還期限の多様化などが実施され、縁故地方債に関しては、発行ロットの大型化、償還方式の標準化、市場を考慮した発行条件の設定、債券決済ネットワークへの登録などが検討されている。

  4.  地方債許可制度の事前協議制度への改正により、地方債の発行に際して自治大臣(現 総務大臣)の許可は不要となる。これにより国の同意のない地方債も発行可能となるが、これは地方債への信用供与の変化を意味する。

  5.  銀行部門への時価会計導入により、特に地方債の引受主体である指定金融機関等では、地方債の価格形成や流動性に敏感にならざるを得ない。転売は可能であるが価格変動がある証券形式と、売却は出来ないが価格変動もない証書形式では、引受けにあたって評価が分かれてくる可能性もある。

  6.  今後の郵政事業の資金運用については市場化への方向付けが働くと考えられるが、これは資金運用の効率化を促進する一方で、リスクも拡大させる。運用スタンスとして地方債の位置づけを明確化しておく必要があろう。


全文 郵政事業資金における地方債運用の現状と課題