郵政研究所月報

2002.1

調査研究論文

行政のスリム化・効率化と電子政府


中央大学経済学部教授  谷口 洋志


シリーズ「電子政府を支える情報通信基盤技術」連載開始にあたって
「インターネット基本戦略のあり方に関する研究会」 座長 浦山重郎
 情報技術(IT)の発展の速度を測る尺度としてよく「ドッグ・イヤー」という言葉が使われてきたが、最近は数ヶ月という短期間内でさえ劇的な変化が起こることは関係者の体験としてよく知るところである。
 しかし別の角度からみると、経済の景気循環論と同様に、ITの発展にも短期、中期、長期の循環があり、最近の現象はこの短期の“ITサイクル”の比重が相対的に増大しているに過ぎない。
 郵政研究所でインターネットの基盤技術、特にサイバー・ネットワークのあり方に焦点を当てた、「インターネット基本戦略に関する研究会」が発足したのは1998年の事である。丁度IT、特にインターネットの発展時期に研究会が発足したところからインターネットのネットワークアーキテクチャの解明、電子商取引とインターネットの機能を始め、電子商取引と情報システムに到るまで、アーキテクチャーの各層においての検討を進めてきたが、この1年間は「グローバルなサイバー・ネットワークの発展と情報通信政策」について電子政府の問題も含め、討議を重ねてきた。
 今回郵政研究所通信経済研究部及び研究交流課のご厚意により、3年間に渡った私共の研究会の成果をもとに、郵政研究所月報での特集を企画して頂けることとなった。貴重な紙面を頂いて1年弱の長きに渡る連載となるが、この間読者の皆様より忌憚のないご叱咤とご助言を頂ければ研究会一同これに勝る喜びはない。
 発表と執筆者の構成については、長期にわたるので若干の変更はあり得るかとも思うが、全部で10回の連載として頂いた。なお最初第1回の掲載については、研究交流課と通信経済研究部のご厚意により、調査研究論文の枠を頂いての掲載となった。

  1. テーマについて  電子政府の議論の中で、その裏づけとなる情報通信ネットワーク基盤技術に関し検討すべき課題について「インターネット基本戦略に関する研究会」の議論の成果を基に研究会の参加者が各々専門家の立場から論ずる。
  2. 執筆陣について(アイウエオ順)
    浅見 徹  (株)KDDI研究所所長
    浦山重郎  麗澤大学国際経済学部教授
    小林 勉  NTT−AT(株) グローバルインテグレーション推進室長
    菰田文男  埼玉大学経済学部教授
    阪田史郎  日本電気(株) インターネット研究所所長
    菅原研次  千葉工業大学 工学部教授
    谷口洋志  中央大学経済学部教授
    中野博隆  (株)NTTドコモ マルチメディア研究所所長
    村上仁己  KDDI(株) 取締役研究開発本部長
      村松 晃  (株)日立製作所MMCソリューションセンター長
    吉田 眞  NTT−AT(株) 取締役ネットワークソリューション事業本部長

  3. 執筆時期と内容
    1月号 行政のスリム化・効率化と電子政府    谷口 洋志
    2月号 ネットワークとハブシステム(その1)  村上 仁己
    3月号 ネットワークとハブシステム(その2)  村上 仁己
    4月号 情報ネットワーク・システムの分散化   吉田  眞・小林  勉
    5月号 電子政府を支えるミドルウエア      阪田 史郎
      6月号 電子政府と無線通信           中野 博隆
    7月号 電子政府とデータベースの役割      菰田 文男・菅原 研次
      8月号 電子政府とユビキタスカード       村松  晃
      9月号 IDCのアーキテクチャーと電子政府    浅見  徹
    10月号 IDCと電子政府            浦山 重郎

 研究会ではグローバル環境における我が国の情報ネットワークのあり方、ひいては我が国の情報通信政策がいかにあるべきかを念頭に置きつつ進めてきたが、ともすれば一般にわかりにくい専門家の議論を歴代の通信経済研究部長、特に勝野成治氏、濱俊之氏、杉山博史氏、西川泰久氏及び宮崎順一郎氏の貴重なご示唆により改訂し、また国家行政の視点から様々なご指導を頂いた。さらに研究官として、宮沢浩氏、葛西義昭氏、島田博也氏及び土谷純二氏には研究、事務処理両面において様々なサポートを頂いた。ここに紙面をお借りして深く御礼申し上げる次第である。

平成13年12月  吉祥寺にて


全文 行政のスリム化・効率化と電子政府