郵政研究所月報

2002.4

調査研究論文

日本人の遺産動機の重要度・性質・影響について


前特別研究官(大阪大学社会経済研究所教授)  チャールズ・ユウジ・ホリオカ
第二経営経済研究部研究官  山下 耕治
前第二経営経済研究部研究官(埼玉大学経済学部専任講師)  西川 雅史
元第二経営経済研究部  岩本 志保


[要約]
 本稿では、総務省郵政研究所が実施しているアンケート調査からの個票データを用いて、日本(アメリカ)における遺産動機の重要度、性質および親子の行動に与える影響について吟味する。本稿の主な結論を述べると、日本では遺産動機は絶対的にもアメリカに比べても弱く、遺産の大半は死亡時期の不確実性から来る意図せざる遺産であるか、老後における子の世話・介護や子からの経済的援助に対する見返りである。また、日本では高齢者のかなりの割合は貯蓄を取り崩しており、取り崩し率はライフ・サイクル・モデルとほぼ整合的であり、遺産の予定額は高齢者の貯蓄の取り崩し率を引き下げる方向に働く。さらに、親の遺産動機・遺産の分配方法は子の同居・介護・援助行動に影響し、親と同様、子も利己的であるようである。したがって、われわれの分析結果は、ライフ・サイクル・モデルの適合度が日本で極めて高く、その適合度がアメリカの場合よりも日本の場合のほうがはるかに高いことを示唆する。


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