郵政研究所月報

2002.11

調査研究論文

日本国債の流動性と市場制度の動向


郵政研究所第三経営経済研究部主任研究官  山浦 家久


[要約]

 本稿では、我が国の国債市場の効率性を示す国債の流動性と、近年様々な改革が進められている国債市場制度の動向について、整理・分析するものである。
 国債の流動性を示す尺度はいくつか存在するが、代表的な尺度の一つである国債の売買回転率の時系列的な変化をみると、(1)国債全体の売買回転率は低下傾向にあり、 (2)国債の種類別には、中期利付国債は売買回転率が近年上昇傾向にあるものの、長期利付国債及び割引短期国債の売買回転率が 低下傾向にある。
 また、BIS(国際決済銀行)の調査結果をみると、(1)欧米主要国と比較して、日本国債の売買回転率は低く、又、ビッド・アスク・スプレッドは広いことから、日本国債の流動性は低く、 (2)その原因として、国債の商品性、取引形態、市場参加者の特性、税制、決済等の制度的要因が考えられる。
 我が国においては、入札制度の改善、税制改正、国債の発行年限の多様化、国債のベンチマーク銘柄形成、国債決済のRTGS導入、リオープンの実施、シ団制度の見直し等、国債市場制度改革を近年積極的に実施してきた。平成12年9月以降開催されている、国債発行当局と市場参加者、学者・研究者との対話の場である「国債市場懇談会」では、14項目の「流通市場における流動性向上のための提言」を打ち出している。
 我が国の国債市場は他の先進主要国と比較して遅れていることから、同提言を含めた国債市場制度改革の一層のスピードアップが必要である。さらに、財務省及び日本銀行主導の施策だけでなく、国債電子取引、清算機関の創設など市場参加者が中心となって推進される改善策の実施にも一層期待がかけられるところである。



全文 日本国債の流動性と市場制度の動向