月例経済概観


米国経済
総合指標でみる景気の現状

〇実質GDP成長率・・・1−3月期は前期比年率+4.2%


 《ポイント》
  • 米国の1−3月期の実質GDP(暫定値)は、前期比年率+4.2%と、年率4%を上回る高い伸びを記録した。一方、GDP価格指数は同+0.9%と64年4−6月期(同+0.9%)以来の低い伸びとなり物価の安定を示唆した。
  • 1−3月期の伸びを需要項目別にみると、政府支出が4四半期ぶりにマイナス寄与となったものの、最大の需要項目である個人消費が、前期比年率+5.7%と高い伸びを記録したほか、設備投資も前期比年率+17.6%と二桁の伸びとなった。住宅投資も住宅抵当金利の低下等を反映して前期比年率+17.6%と96年4−6月期以来の高い伸びとなり在庫投資もプラス寄与となった。純輸出については、輸出の伸びが94年1−3月期以来4年ぶりにマイナスとなった上、輸入の伸びが2四半期ぶりに二桁の高い伸びとなったことから2四半期ぶりにマイナス寄与となった。     

(出所:商務省 4月30日発表)



【解 説】

米国経済は拡大している。1−3月期の実質GDP(暫定値、季節調整値)は、前期比年率+4.2%と、年率4%を上回る高い伸びを記録した。

4月の製造業の景気実態を表すNAPM(全米購買部協会)景気総合指数は、52.9と前月比1.9ポイント低下したものの、23か月連続で景気拡大・縮小の分岐点である50を超えており、製造業の景気拡大の持続を示唆した。

需要面では、3月の小売売上高は、季節調整済み前月比0.0%と横ばいとなったものの、四半期ベースでみると、1−3月期は季節調整済み前期比+1.9%と10−12月期(同+0.2%)と比較して大幅に伸びは拡大している。設備投資の先行指標とされる3月の非軍需資本財受注(航空機を除く)は、季節調整済み前月比+0.1%と4か月連続で増加した。3月の住宅着工件数は季節調整済み前月比−2.8%と4か月ぶりに減少したものの、年率換算の水準では159.0万戸と7か月連続で150万戸を超える高水準で推移している。一方生産面では、3月の鉱工業生産指数は季節調整済み前月比+0.2%と堅調に推移している。  

2月の貿易・サービス収支(国際収支ベース、季節調整値)の赤字幅は、前月比+4.2%の121.1億ドルと3か月連続で増加し過去最高となった。地域別貿易収支(通関ベース、原計数)では、対日貿易赤字が52.9億ドルとなり、貿易赤字全体に占める比率は39.0%と、5か月連続で国別赤字トップとなった。

雇用面では、4月の非農業部門雇用者数は、サービス業を中心に前月比+26.2万人と同−2.4万人の減少となった3月分から再び増加基調に戻った。一方、失業率(季節調整値)は4.3%と前月から0.4%ポイント低下し70年2月(4.2%)以来約28年ぶりの低水準となった。

この間、物価面では、3月の生産者物価は季節調整済み前月比−0.3%、消費者物価は同0.0%とそれぞれ落着いた動きを示した。 

(5月12日記)

消  費

〇個人消費(実質GDPべース)…1−3月期は、前期比年率+5.7%

《ポイント》
  • 最大の需要項目である個人消費は、前期比年率+5.7%と高い伸びを記録し、成長寄与度でみても同+3.8%ポイントと最大の成長押し上げ要因となった。
  • 項目別にみると、耐久財が自動車等の増加から前期比年率+18.4%と3か月連続でプラス寄与となったほか、非耐久財も食品・衣料の増加で同+5.2%と2か月ぶりにプラス寄与となった。
  • サービス消費は住宅関連消費等の増加から同+3.5%と堅調な伸びとなった。



設 備 投 資

〇設備投資(実質GDPべース)…1−3月期は、前期比年率+17.6%

《ポイント》
  • 設備投資は、前期にマイナスとなった反動もあって前期比年率+17.6%と2四半期ぶりに二桁の高い伸びなった。
  • 項目別にみると、全体の約4分の1を占める建設投資が前期比年率−8.9%と2四半期連続でマイナスとなったものの、約4分の3を占める機械設備投資が同 +28.8%と高い伸びを記録した。機械設備投資の中では、コンピューター関連投資をはじめ、産業用機械投資や輸送機械投資などが増加した。



外 需

〇輸出(実質GDPべース)…1−3月期は、前期比年率−3.4%
《ポイント》
  • 輸出は、財輸出の減少などで前期比年率−3.4%と94年1−3月期(−1.8%)以来のマイナスとなった。
  • 一方、輸入は、内需好調を背景に消費財の輸入が好調で同+11.6%と2四半期ぶりに二桁の高い伸びとなった。
  • この結果、輸出から輸入を差し引いた純輸出は、年率換算−1,997億ドル(92年価格)と赤字幅が拡大し、成長寄与度は前期比年率−2.2%ポイントと2四半期ぶりにマイナス寄与となった。