82 1995年8月

『新郵便処理システムのシミュレーション分析』

―局内処理モデルの開発―

                       技術開発研究センター前主任研究官 渡辺 昇治
                                  主任研究官 磯部 俊吉
  1.  シミュレーションはOR(オペレーションズ・リサーチ)の手法の1つであり、システムや設備の設計において、実際にこれらを稼働させる前段階での検討、分析手法として、生産システム、ロジスティックシステム、通信システム等の分野で幅広く使われている。
  2.  一方、郵便処理システムの分野においては、新しいシステムを導入する場合、機械が何台必要かとか、処理が結束時刻に間に合うかとか、ボトルネックを見つけ出し、より効果的な処理方法を探す等々の検討には、これまでシミュレーションはほとんど使われていなかった。
  3.  本研究ではバーコードを用いた新しい郵便処理システムによる1つ地域区分局の局内作業のシミュレーションモデルを開発し、上記検討のほか、必要なマンパワー、機械設備の稼働率、運用方法等について検討を行った。新しい郵便処理システムでは個々の郵便物にバーコードを付与し、差立て(あて先ごと)から配達(配達順に並べる道順組立の作業を含む)までの区分を機械処理で行うものである。配達側では道順組立の作業が大幅に効率化されるが、差立側では新たにVCS(ビデオコーディングシステム:郵便物のあて名画像を見て、打鍵入力等によりバーコードを付与)の作業が追加となる。VCSには各種の形態が考えられるが、シミュレーションによりこれらの稼働効率や所要人員を把握しておくことも必要である。さらに、システムの変動要因として、時間帯別引受郵便物数、バーコード記載率(機械処理率)、ハンドリング時間等も考慮した。これらがシステムにどのように影響しているかの感度分析を行った。
  4.  時間帯別郵便物数等(郵便局の規模に対応)を入力し、シミュレーションを実行すれば、システムの稼働状況のダイナミックな把握が可能となり、必要となる新型区分機の台数、VCS所要人員について、適切かどうかおよその目安となる情報が出力される。このことは、局内郵便物処理システムの構築に際し、ある条件を決めれば、シミュレーションが設備の台数、所要人員を決定する場合の支援ツールとして活用し得ることを示している。
  5.  シミュレーションの活用を成果あるものとするには、問題点の明確化、モデルの簡素化・単純化、データ収集が必要であり、他に、シミュレーション技術者と現場との絶えざるコミュニケーションも重要である。
  6.  なお、本論文はシミュレーションによる1つの検討例を示すものであって、新郵便処理フローやパラメータ値はバーコード導入後の新郵便処理システムの実施計画そのものを示すものではない。