No.89 1996年3月

「紙」をめぐる最近の技術開発について

−郵政事業用品を中心として−

                             技術開発研究センター 牛山  聡
  1.  紙は様々な形で我々の身近にあって、毎日の生活に役立っている。郵政事業も、郵便葉書、郵便切手の発行から各種申込用紙、通帳等の事業用式紙類の使用にいたるまで、紙を大量に使用する事業であり、紙とは密接な関係にある。本論では、長い歴史のある紙の概要と物性等を述べるとともに、近年の紙技術及び郵政省における紙の動向について述べることとした。

  2.  1993年の世界の紙生産量は約2億5千万トンであるが、日本は2,776万トンで米国の7,656万トンに次いで世界第2位である。また、世界の一人当たり年間紙消費量は、平均46kgであり、日本は225kgとなっており、これは米国、フィンランドに次ぐ第3位となっている。

  3.  紙の用途の多様化とともに紙の製造方法も複雑化してきているが、紙の物性に対する評価方法あるいは、製造に際しての各種試験方法も変わりつつある。郵政省においても、紙に関して各種検査を実施しているが、特にお客様へ商品として販売する式紙類等については、郵政研究所において、年間50件程度の物理科学試験(物性試験)を行っているところである。

  4.  現代の紙はほとんどの場合、現紙に加工を施して使用されている。これを一般に加工紙と呼んでいるが、その中で特殊な用途のために考案された紙は特に特殊紙と呼ばれている。また、近ごろでは従来の紙では考えられなかった性質をもたせて作られた紙を機能紙と呼び、その呼ばれ方が定着しつつある。このような機能紙としては、合成紙、感圧紙、導電紙、水溶紙などがある。

  5.  郵政省における紙(式紙類)の年間使用量のうち、切手・葉書類の占める割合は約40%となっている。また、我が国最初の郵便葉書が発行されたのは、明治6年であり、我が国の官製葉書は120年以上にわたって使用され続けていることになる。その官製葉書は、幾多の変遷を経過し現在の大きさ、紙質になっているが、最近では、地球環境保全と森林資源保護に貢献するため、再生紙葉書が発売され、さらには郵便葉書利用者ニーズの多様化にともない、版画用葉書も発売された。また、現在は非木材紙による葉書も検討されている。