No.98 1996年11月

電気通信を応用した新郵便サービス

                                    松下通信工業        則包 直樹
                       (前技術開発研究センター主任研究官)

 インターネット等の電気通信技術と郵便の特性を融合した新たなサービスの可能性について、技術的な観点から調査研究した。まず、インターネットを利用した諸外国における郵便への電気通信技術応用の事例として、米国郵便事業体(USPS)が行っているWINGS(Web Interactive Network Government Services )、カナダポストのハイブリッドメールサービス等を調査し、それらをふまえながら、新サービスの総称を「ハイブリッドサービス」と名付け、「ハイブリッドサービス」の定義とこれに伴う郵便局の機能について、検討した。
 具体的な新しいサービスアイディアとしては、個別のサービスを組み合わせて複合・統合的にサービスイメージを想定することを試み、次の4つのサービスを想定し、サービスの内容、システム構成などを検討した。
・流通ハイブリッド郵便サービス
 追跡確認システムと物流と決済サービスを電気通信で結びつけ、小企業における商品販売事業のプラットフォームを提供することでベンチャーの振興に寄与する。
・パブリックデータハイブリッドサービス
 郵便物配送に関わる情報と利用者個人の嗜好に関する情報をデータベース化し、これを電子情報社会の商取引やマーケティング等に有効に利用してもらうことにより、プライバシーの保護、情報洪水の抑止などの効果をあげる。
・パーソナルデータハイブリッドサービス
 コンピュータを活用したメディア変換や加工により、個人の郵便物作成支援を郵便局が代行するサービス。産業側ではコンピュータ・ネットワークを活用した新しいサービスの事業機会の拡大、利用者側では提供されるサービスにより情報弱者への配慮ができるというアイディア。
・電子公証サービス
 郵便局において、電子的文書の証拠認定機能を実現することにより、電子情報社会で実現が期待されている電子商取引の円滑化や公正な取引の保証を行うことができる。
 情報化に伴い必要となる公共サービスのひとつとして、コンピュータ郵便を多様なメディアに対応させ、外部のコンピュータ・ネットワークと組み合わせることによって、郵便サービスを発展させる可能性が開かれており、この方向での開発を早期に行うことが望まれる。その際、郵便サービスの公共性から見て、郵便局が地域情報化の一つの核となることを検討すべきである。