郵政研究所月報
1998.11
郵便情報活用に関する調査研究―新型区分機を利用した郵便情報の活用―
技術開発研究センター主任研究官 中嶋 明彦
研究官 高橋 正人
[要約]
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1.はじめに1.1 研究の目的と背景
平成10年2月より実施された新郵便番号制で新型区分機が導入され、道順組立作業の機械化及び読取不能郵便物の機械処理が可能となった。この新型区分機は7桁の新郵便番号と住所情報を読みながら、バーコードを印字し、また印字されたバーコードより住所情報を読みながら、処理を行う。一方、新型区分機で読めなかった郵便物については、その郵便物の画像情報を蓄積し、人間がVCS(ビデオコーディングシステム)により郵便画像情報を見ながらバーコード情報を打鍵する。 1.2 新郵便番号制
新型区分機が導入される背景となった新郵便番号制について、以下に簡単に述べる。 @配達区分(丁目・字・番地により配達区画ごとに区分) の3つの作業工程を要していたが、新郵便番号制後の新郵便処理システムでは、これらの作業を区分機でまとめて処理できるようになった。 |
2.新型区分機で収集される郵便情報本項では新型区分機で収集される郵便情報を説明するために、まず新型区分機の機能等を説明し、その後収集される郵便情報について述べる。 2.1 新型区分機(改造型を含む)2.1.1 基本機能新型区分機は、従来の郵便物あて名自動読取区分機の動作に加え、道順組立等に必要な機能として、郵便番号とあて名を同時に読み取る「合わせ読みモード(OCR・ビデオモード)」と、バーコードのみを読み取る「バーコードモード」の2種類の動作モードが新たに追加された。これらのモードの基本機能は、以下のとおりである。 (1)合わせ読みモード(OCR・ビデオモード)
(2)バーコードモード
2.1.2 付加的な機能(1)ビデオコーディングシステムへの送信、バーコード印字の要否の自動判断 郵便番号の上3・5けた(配達局が特定できる部分)まで読み取れれば、次のどのグループに属するかを自動的に判断し、読取りの状況に応じ、VCSに回すべきか、どこまでバーコードを印字すべきか、の判断を自動的に行う。
(2)同一局あてをバーコード印字状況によって区別して区分可能 同一局、同一地域あての郵便物を、バーコードの印字状況(フルバーコードが印字されたもの、新郵便番号部分のバーコードが印字されたもの、バーコードが印字されていないもの)によっても区別して(別々の区分口へ)集積ができる。 (3)フルバーコード化のためのビデオコーディングは行わずに差立区分を優先させる機能 あて名合わせ読み対象局あて郵便物であっても住所表示番号部分のコーディングを不要として、郵便番号のみで差立区分を行える。 (4)ビデオコーディング作業の進捗状況表示 ビデオコーディング作業の進捗状況は、ビデオコーディングシステムの制御端末機、新型区分機、バーコード区分機の表示部でも確認できる。 (5)小字起番地域あて郵便物に対するバーコード印字 新郵便番号は、住所の「小字」に対しては原則として設定していないため、同一の「大字」に複数の「小字」があり、「小字」を省略すると同一の住所となる地域は、そのままでは道順に並べることができない。 (6)配達総合情報システムとの通信、情報転送 バーコード情報、区分情報、稼働情報、道順情報等を配達総合情報システムとの間でやり取りができる。これにより、配達総合情報システムで区分面、認識辞書の管理、更新ができる。 2.2 バーコードの種類新型区分機で処理されるバーコードには、住所情報を表わす局内バーコードと郵便物個別を示すIDバーコード、及びお客様が予め印字されるカスタマバーコードがある。 2.2.1 局内バーコード
郵便物を引き受けた郵便局では、郵便局の新型区分機で、新郵便番号とあて名を読み取って自動的にバーコード(局内バーコード)を印字し、以後の処理はバーコードを読み取って行う。局内バーコードは、透明又は極淡い色の特殊なインクを用いている。このインクは、紫外線を当てると発光するもので、あて名の文字や模様と重なっても読み取ることができるものである。
以後、バーコードそのものを表わすときには局内バーコード、新型区分機内で処理するため情報化されたものを局内バーコード情報と呼ぶ。 |
2.2.2 IDバーコード
新型区分機で読取りが完了しなかった郵便物は、ビデオコーディングシステムを用いて局内バーコードを印字する。郵便物には、キー入力が終わった後、新型区分機に再供給して、局内バーコードを印字する際に郵便物を識別するためのバーコード(IDバーコード)を予め印字する。IDバーコードも、透明又は極淡い色の特殊なインクを用いる。
以後、バーコードそのものを表わすときにはIDバーコード、新型区分機内で処理するため情報化されたものをIDバーコード情報と呼ぶ。 |
2.2.3 カスタマバーコード
お客様が予め印字するバーコードであり、情報の内容は局内バーコードと同じである。
以後、バーコードそのものを表わすときにはカスタマバーコード、新型区分機内で処理するため情報化されたものをカスタマバーコード情報と呼ぶ。 |
2.3 ビデオコーディングシステム(VCS)
ビデオコーディングシステム(VCS)は、新型区分機のOCR(光学式文字読取装置)で、バーコードの印字に必要な郵便番号、あて名住所の情報が読み取れなかった場合に使用する情報入力装置である。 |
2.4 新型区分機で収集される郵便情報
ここで新型区分機で収集される情報を整理すると、以下のような情報が挙げられる。
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3.郵便情報活用システムの提案
2項で述べた新型区分機で収集される郵便情報(郵便物の画像情報、バーコード情報)を活用することで、機械処理可能な一般書状に対し以下の様なシステムを提案する。
各システムのシステム概要等については、5項で述べる。 |
4.現状の調査本項では、3項で提案したシステムにより効率化、高品質化が図られる作業等について、現状を調査した結果を述べる。 4.1 追跡調査
一般書状における不着申告時の追跡調査について、東京郵政局管内の4局(ビジネス街3局、住宅街1局)でヒアリングを行った。ヒアリング結果をもとに現状を以下に示す。
4.2 物数調査物数調査の現状についても、郵便局で同様にヒアリングを行った。調査結果も含めて、現状を以下に示す。
4.3 流通時間の管理
郵務局等でヒアリングを行った内容も含め、現状を以下に示す。
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5.郵便情報活用システムの概要3項で提案した各システムについて、概要を以下に示す。 5.1 簡易追跡システム差立局の区分機に蓄積された郵便物の画像情報により、不着申告された郵便物を特定し、そのIDバーコード情報により追跡する、一般書状用の簡易な追跡システムである。以下に、その概要について述べる。 5.1.1 システム概要簡易追跡システムのシステム概要を以下に、またシステム概要図を図5.1に示す。
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5.1.2 郵便物の追跡方法簡易追跡システムで、郵便物を追跡する方法について以下に述べる。
(3)郵便物の追跡方法 (1)、(2)項をもとに、簡易追跡システムを使った郵便物追跡までの流れを図5.3に示す。 |
5.1.3 期待される効果簡易追跡システムを導入することにより、期待される効果として以下のことが考えられる。
5.2 交流物数管理システム差立局の区分機で収集される局内バーコード情報等の住所情報により、一般書状のあて地別交流物数を管理するシステムである。以下に、その概要について述べる。 5.2.1 システム概要交流物数管理システムのシステム概要を以下に、またシステム概要図を図5.4に示す。
なお、ここでいう外部(上位)とは、集中管理端末で、郵務局や地方郵政局など交流物数を集計する部署におくものとする。 |
5.2.2 機能概要交流物数管理システムの機能概要を以下に示す。
5.2.3 期待される効果交流物数管理システムを導入することにより、期待される効果として以下のことが考えられる。
5.3 流通時間管理システム差立局の区分機で印字されたIDバーコードから印字機械番号情報、印字日付情報及び印字時間帯情報を配達局の区分機で読むことにより、差立局〜配達局の一般書状の流通時間を実便で管理するシステムである。以下に、その概要について述べる。 5.3.1 システム概要流通時間管理システムのシステム概要を以下に、またシステム概要図を図5.5に示す。
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5.3.2 機能概要流通時間管理システムの機能概要を以下に示す。
(2)集中管理端末から配達局へ集計及び集計結果の転送指示
5.3.3 期待される効果流通時間管理システムを導入することにより、期待される効果として以下のことが考えられる。
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6.おわりに6.1 まとめ
本研究では、まず新型区分機で収集される郵便情報の調査を行い、以下の4つ情報を活用することとした。
6.2 今後の検討課題(1)画像圧縮方法の検討 簡易追跡システムにおいて、郵便物の画像情報の蓄積容量を減らすため、郵便物の画像情報に適した画像圧縮方法について、以下のような点の検討が必要である。
(2)IDバーコード付与方法の検討 区分機で処理する全郵便物にIDバーコードを付与する場合の問題点として、以下のような事項が考えられる。
(3)郵便物の特定率の検証 簡易追跡システムにおいて郵便物を特定する際、検索キーで候補画像の絞り込みを行い、後は目視確認となる。そこで、検索キーでどの程度まで候補を絞り込めるか(特定率が何%になるか)検証をとる必要がある。自動の絞り込みに使用できる検索キーは次のものが考えられる。
(4)通信ネットワークの検討
トラヒックに見合ったネットワーク構成の検討が必要である。現在ある保険、貯金及び書留追跡システムの情報も相乗りさせる場合、セル損失のない高品質のネットワークが必要となり、画像のみで独立させる場合はATMに代表される高速ネットワークが必要になる。簡易追跡システムや交流物数管理システムで必要となる区分情報のためには、高品質ネットワークが必要と考えられる。 (5)端末の操作方法の検討
検索項目、集計項目及び操作性の検討が必要である。 (6)コストの計算
システムを構築する際のイニシャルコスト、ランニングコストを試算してみる必要がある。 (7)区分機を通過しない郵便物の検討
区分機を通過しない郵便物について、その分の情報をどのようにして収集するか、またどういう処理の仕方にするか検討する必要がある。 |
(参考文献)「新郵便番号制の円滑な導入のために」 郵政省郵務局 1997.3 |