「不動産不況とその金融機関に与える影響」
−その2 不動産不況下の米国銀行の現状−


                           第三経営経済研究部研究官 山本 敏正

1 米国では、80年代に入り、銀行倒産が増加している。

  その原因としては、「3つのL」、すなわちLDC(発展途上国)、LBO(買収先企業の資産
 を担保とした企業買収)、Land(不動産)向け貸出の問題があるが、そのなかで、最近では、
 不動産不況の影響が特に深刻化している。

2 不動産不況の直接の原因は、オフィス・ビル等の供給過剰によるものである。

  その背景には、需要、税制、外国企業の投資のほかに、金融機関が、調達コストの上昇や競争の
 激化から、ハイリスク・ハイリターンの不動産向け貸出を増加させたという事情がある。

3 米国の金融不況を背景として、91年11月に成立した金融制度改革法では、預金保険制度の強
 化や規制当局の監督強化が定められた。

  また、今後の金融制度改革においては、州際業務規制の撤廃が焦点となる見通しである。

4 日米の不動産・金融不況の共通の背景として、金融の規制緩和の影響があること、税制の影響が
 大きいこと挙げられる。

  一方、不況の進行の程度、金融業における市場の原理、銀行のダウンサイジングの性格などの点
 で、日米間の相違がある。

5 米国のケースから日本が教訓として学ぶべきこととしては、1.対米不動産投資を行う場合は、投
 資採算を慎重に評価し、地域、不動産の種類などの点で、リスクを分散する必要があること、2.金
 融の規制緩和を進める一方、市場原理を機能させるための諸制度の整備を同時に進めるべきである
 こと、などが挙げられる。