「生活のゆとりを中心とした生活実感」


                             第三経営経済研究部長 中津 道憲

1 生活全体についてのゆとりを感じている人は34.8%、ゆとりを感じていない人は51.0%
 とゆとりを感じていない人が半数以上みられた。

  女性より男性、特に男性で働き盛りの35〜44歳にゆとりのない人が多い。一方、男女とも若
 年層と高齢層にゆとりのある人が多くみられる。

2 生活のゆとりを経済的、時間的、精神的、住空間的といった4つの局面からとらえると、経済的、
 時間的、精神的ゆとりの3つについては、いずれもゆとりのない人の方がゆとりのある人より多い。

  また4つの局面のゆとりと生活全体のゆとりの相関を求めると経済的ゆとりとの相関が最も高い。

3 経済的ゆとりがある人は29%、ゆとりのない人は57%。

  ゆとりのある人に比べて、ゆとりのない人が約2倍に達する。

  経済的ゆとりを“欲しいものの購入状況”との関係でとらえると、経済的ゆとりがない人でも

 「必要なものはそろっている」と答えている人が約60%みられる。

  この状況を踏まえると、経済的ゆとりに関する実感は実生活水準よりも低位とみることができる。

  心理面で認められる水準の相対的な低さに留意すべきと思われる。

4 将来、経済的ゆとりが実感できるようになった場合のお金の使い方を尋ねた結果によると、「万
 一の時に困らないように貯蓄する」という人が75%と圧倒的に多い。

  これは現在の経済的ゆとりの有無との関連でみても、貯蓄志向の強さに差はみられない。

  これに対して、現在の生活全般への満足感はかなり高いとともに、前述のように実生活水準もか
 なり高いと思われるレベルに達している。

  これらのことを総合的に考え併せると、生活意識の基本部分に将来の生活に対する不安感がある
 ものと考えられる。

  とりわけ40代前後の働き盛りの層にゆとり感が低いのは、自分の高齢化に伴っての生活に自信
 が待てないことによる不安心理が潜在的に強くあるものと考えられる。

5 時間的ゆとりは、時価不足よりも、「仕事の満足度」といった心理面との相関が強い。

  また労働時間短縮と所得増加を同時に比較すると、所得増加を優先する人がやや多い。

  経済的ゆとりと時間的ゆとりの有無との関係からみると、経済的ゆとりがある人は時間的ゆとり
 の有無にかかわらず労働時間短縮を優先し、経済的ゆとりかない人は時間的ゆとりの有無にかかわ
 らず所得増加を優先している。

  一般的に労働時間短縮を求める声が強いものの、労働時間短縮と所得増加を比較した場合には、
 まず所得増加による経済的ゆとりを求め、経済的ゆとりがある程度できた段階で労働時間短縮を求
 めることがうかがえる。

6 住空間的ゆとりのある人は全体の半数を超えるが、東京居住者に限定すると約3分の1に過ぎな
 い。

  しかし東京居住者は、東京での生活に対して相対的に高い魅力感を持っている。

  東京一極集中のもと、住空間、通勤時間等の諸問題が指摘されるもとにあって、東京居住者は問
 題点と同時に東京での生活の喜びも併せ持っているといえる。

7 土地、住宅価格を現状水準より「下げるべき」という人が77%、持家層だけでみても「下げる
 べき」という人が73%とほぼ同程度である。

  しかし、持家層で自分の住宅価格が下がることに賛成者はわずかに25%弱、反対者は25%強
 みられる。

  生活者の意識の二面性が認められる。

8 92年6月に新経済計画「生活大国五ケ年計画」がまとめられた。

  その方向性、あるいは具体的に設定された目標等、広く合意が得られるものと考えられる。

  ただし、今後の生活大国実現に向けての政策展開に際しては、生活者の生活実感、特に生活意識
 の二面性あるいは将来に対する潜在的な不安心理ともいえる部分を念頭に置いた取組か望まれるの
 ではなかろうか。