「金融自由化と銀行マーケティング」


                           第一経営経済研究部研究官 丸山 昭治
1 銀行は金融の自由化によって、個人向けの融資を拡大していた。また個人取引には、顧客に対す
 る効率的なアプローチが必要なことから、郵便など通信手段を利用したマーケティング手法が導入
 されている。

2 金利の自由化は、自由金利預金比率の上昇と預金獲得競争の激化を招いたため、資金調達費用が
 上昇し、収益拡大の必要性が生じた。また企業は資本市場の整備によって直接資本市場から資金調
 選出来るようになったことから、銀行は企業以外の新たな融資先を求めて、高収益の期待できる個
 人向けの貸出業務に参入することになる。

3 個人向け融資への傾斜は、金利自由化の影響の大きい都市銀行において顕著に見られ、全体的に
 自由金利預金比率の高い銀行ほど個人向け融資額が大きいという傾向がある。また85年以降にお
 ける自由金利預金の増加が個人向け融資を増やした一面がある。

4 個人業務はその大量取引という性格から、企業金融の場合とは違った顧客へのアプローチが必要
 なこと、また収益確保のためには営業経費を抑える必要があることから、ダイレクトマーケティン
 グの手法が採用されている。この手法は金利自由化が完了した米国の銀行で既に確立されたもので
 あり、米銀のマーケティング推進に当たっては、顧客セグメントとリレーションシップ・バンキン
 グが重要な要素となっている。

5 銀行と顧客との接点は、金融自由化が進行する過程で多様化が見られたが、今後は顧客のニーズ
 に的確に応えるためにも、サービスの内容・提供方法の差別化が求められることになるだろう。