「農協信用事業と金融自由化」


                           第三経営経済研究部研究官 大澤 一弘
1 我が国の農協は、組合員を対象とした共同組合組織であると同時に、地域に密着した地域金融機
 関という側面ももっている。

2 農協の経営・組織上の特徴として、信用、購買、販売、共済、加工などの複数事業を営む総合経
 営と、市町村段階、都道府県段階、全国段階という3段階の系統組織がある。

3 農協信用事業の業務面の特徴として、貯金については、個人中心、定期性比率の高さ、受入額の
 季節変動などが、貸出については、制度融資と普通融資の存在などが挙げられる。

4 金融自由化の進展に対応して、農業系統金融も、農協合併による経営規模の適正化や、系統3段
 階制の見直しなど、経営の効率化が進行している。それに伴い農協法も改正され、員外貸出基準の
 緩和や事業譲渡の規定の整備等が盛り込まれた。また、金融制度改革法の成立により、業務範囲の
 制約が緩和され、証券・信託業務等への参入も可能となった。

5 農協信用事業は、経営・組織の両面で過渡期にあるが、金融自由化時代の存在意義を考えるとき、
 農協の地域金融機関としての使命と、相互扶助という基本理念を再確認することが肝要である。