「為替の経済学−為替リスク管理問題−」


                         第三経営経済研究部主任研究官 河原 伸一
1 1990年にフランスの数学者ルイ・バシェリエが投機の期待投資収益率はゼロになると指摘し
 て以来、商品先物市場、株式市場、為替市場における効率的市場仮説の実証研究が数多く行われ、
 市場は基本的には効率的であると結論づけられてきた。ところが、スティーヴン・テイラーをはじ
 めとする多くの研究者達が、従来の金融資産の価格変動分析モデルの妥当性に疑問を持つようにな
 った。そうしたなか、テイラー(1986年)は、新たに非線形条件付分散変動モデルを提案し、
 市場は効率的でないと結論づけるとともに、フィルター・ルールを使って超過利益をあげることが
 できることを示した。

2 本調査は、テイラー(1986年/1992年)のアプローチに手を加え、外債連用の為替リス
 ク管理問題の解決に挑戦したものである。

  本調査のエッセンスは、次の3点にある。

3 為替レート変動のトレンドの存在を観察することを目的に、東京外為市場における円・米ドル為
 替レート変動の確率構造を検討した上で、テイラー(1986/1992年)の非線形条件付分散
 変動モデルに従って算出した基準化収益率を使い、ランダム・ウォーク仮説を検証、棄却した。

4 より効率的な為替リスク回避を目指して、先物為替取引モデルについて検討し、シミュレーンョ
 ンを行った。試行錯誤の結果、良いパフォーマンスをあげられる可能性が出てきた。

5 外為市場参加者がどんな情報に注目して行動しているのかを知るために、最近の注目材料の変遷
 について整理してみた。