社会資本形成の現状と課題−財源を中心として−


                              第二経営経済研究部 平川 本雄

1. 我が国は、いま、生活関連社会資本の整備充実が生活大国という内政上の重要な課題の実現にと
 って必要不可欠なものとして改めてクローズアップされている。生活関連社会資本の整備充実にと
 ってその財源、すなわち「原資をどうするか」、「原資の調達をどうするか」ということが金融市
 場の活性化という視点から重要なポイントである。生活関連社会資本形成の財源如何によって、経
 済主体と金融市場との関わり方も異なってくるからである。

2. 生活関連社会資本の整備充実は、生活者としての「個人」と生活場所としての「地域」を基本に
 据え、生活関連社会資本に対するニーズの方向と強さを踏まえて、その地域の人々が能動的に、し
 かも、より良い生活関連社会資本の形成のための地域間の競争のなかで展開されていくことが、そ
 の立脚点である。生活関連社会資本のハード(施設)とソフト(サービス)の発想とそれを形成す
 るための財源は人々の生活する地域に出発点があるからである。

3. 生活関連社会資本の整備充実とその財源を考察するにあたって、まず、「何が原資であったか」
 について、1961〜91年度までの30年間で分析している。社会資本全体の財源の規模は財政
 投融資、地方公共団体、国という順に大きい。租税か租税以外かでは租税以外、租税以外を債券か
 債券以外かでみると債券以外の規模が大きい。また、これらは最終的に企業部門44.2%、家計
 部門55.8%の割合で役割を分担していることになっている。生活関連社会資本については財政
 投融資と地方公共団体の規模が大きい。

4. 生活関連社会資本の「原資をどうするか」については、企業・家計という経済主体、とりわけ家
 計部門と現実にも規模の大きい財政投融資と地方公共団体とを中核に据えていくことが重要である。

5. 生活関連社会資本の整備充実を通して、家計の多様な金融資産選択機会の確保と厚みのある地域
 金融市場の形成が図られる方向で家計部門の貯蓄が活用される仕組みを構築することが生活関連社
 会資本の「原資の調達をどうするか」を考える基本的な方向である。

6. 何よりも生活関連社会資本の財源の主体であり、生活関連社会資本のサービスを享受する位置に
 ある家計部門(個人)が金融市場と直接的に結びついたメカニズムによって、目にみえる形で生活
 関連社会資本の整備充実が進められていくことが重要である。そのためにも財政投融資や地方債の
 機能の活性化が必要である。

7. また、税収増加引当ファイナンス(TIF)、レベニュー・ボンドなどのプロジェクト・ファイ
 ナンス手法やコミュニティ・ボンドなどの活用による多様な資金調達の仕組みも必要である。

8. 郵政行政は、地域情報通信基盤整備という社会資本形成の役割を担い、郵便貯金資金・簡保資金
 は社会資本金融の役割も担っている。郵政行政のこの二つの役割が車の両輪となって、豊かな生活
 関連社会資本の形成、厚みのある地域金融市場の形成、そして、活力ある地域社会の形成に貢献し
 ていくことは、郵政行政に期待される一つの方向と考えられる。