郵政研究所月報


                                          No.61 1993年11月

「都市銀行の無人店舗戦略とその効果」

                            第三経営経済研究部研究官 小谷 和成
1 銀行の店舗数は、92年度以降伸び悩むなか、80年代半ば以降急速に増加してきた店舗外にATM・CDのみを設置するいわゆる無人店舗は引き続き高い伸びを維持している。

2 73年に初めて設置が認められた店舗外ATM・CDは、当初既存店舗の補完的役割程度に見られていたが、その後の金融自由化の進展とともに現在では、小口の個人預金を取り込む手段としての重要性が認識されている。

3 都市銀行の無人店舗も、規制の緩和が進んだ80年代半ばから急速に数を増やし、現在では年間 400か店以上の開設が行われている。しかし、開設ペース、開設場所で、個別銀行間で大きな違いが生じている。

4 都心型無人店舗の年間ランニング・コストを回収するには、開設により新たに3〜5億円の普通預金の増加が必要となる。しかし、他業態と比較し都市銀行全体で見れば、個人の普通預金口座数は増加しているが、それがコストに見合う預金量の増加に結びついていないと言える。預金量の面で効果的となっていないのは、無人店舗戦略は、・効果が出るまで長期の期間を要する戦略であること、・都市銀行間の競争戦略となっていて、都市銀行全体のシェアアップを狙ったものではないこと、などが要因であると思われる。

5 無人店舗開設に対する取組の積極性は、金融機関の規模、利益水準、業態よりもむしろ、その金融機関の営業地域でのシェアに大きく影響される。大都市圏で都市銀行が多数の無人店舗を開設しているなかで、都市銀行と地域的に競合する地方銀行、第二地方銀行の無人店舗は、開設数、開設ペースともに低水準に止まっている。

6 無人店舗が利用者の利便に大きく貢献しているとしても、現在の開設ペースが続くかぎり、将来、大都市圏では過剰感も出てこよう。そのとき、無人店舗に預金の入出金以外の新たな機能を付加することにより、他行との差別化を行うことが重要となるであろう。

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