76 1995年2月

『社会資本整備の財源について』

                         第二経営経済研究部主任研究官 山崎 勝代

  1.  本格的な高齢化社会が到来する前に他国に比べ整備が遅れている社会資本を日本においても整備すべきである、ということが主張されてきている。昨年(1994)には公共投資基本計画が見直され、今年(1995)以降の10年間での公共投資の総額を630兆円とするという新しい計画が策定された。一方、このような公共投資を行うための財源をどのように捻出するのかということも問題とされている。計画の中でも、財源については、一般論が述べられているに止まっている。
     本稿ではこれまでの公共投資を中核とする社会資本整備のための財源についての内訳を推計し、今後の社会資本整備における財源の議論の基礎的資料の形成に寄与したい。
  2.  本稿の特徴は、既存の研究がすべて依っていた当初予算額や計画額ではなく、補正予算額、決算額又は実績額を使用したこと、国の特別会計や地方公営企業会計についても推計したこと、財政投融資機関についても事業費のみを取り出してできるだけ建設投資額に近似したことである。
     推計した結果は、1992年度における社会資本整備の財源は総額で約48兆6千億円であり、そのおおよその内訳は税が30%、国債は20%、地方債は19%、地方公営企業債が8%、財政投融資資金が9%、その他が14%である。この規模の推移は、1980年代に入るまでは、年率20%近いペースでの増加が、80年代に入ると一転ほぼ横這いとなり、87年以降再度年率約10%で増えている。また、税と公債との関係は、税収が落ち込んだ時期には公債により社会資本が整備されてきたことがわかった。なお、ここで国債や地方債と分類されているもののうち、資金運用部資金や簡保資金により引き受けられた部分が少なくない。
     今後は、投資的経費の精査が課題であるが、その実績値の公表、建設勘定による財源の特定が今後のデータ公表に求められる点でもある。
  3.  公債や財政投融資資金等により社会資本を整備するという状況であり、社会資本が長期にわたって便益を生むことから、便益を享受する後世代も負担すべきである。一方、公債による資金調達は将来税収から利子を支払い、償還をしなければならないことになるが、現実の税収及びその伸びは経済の規模や成長の程度に依存している。そこで、社会資本の持つ生産力効果すなわち社会資本により民間資本の生産がどれだけ底上げされるかということが問題となる。また、社会資本は生産基盤としてだけではなく、生活基盤としての機能も有し、現在は後者へのニーズが高まり、生活関連社会資本の整備を拡充させることが計画されている。しかし、これは、GDPに含まれる生産という側面からみると、今後の社会資本の生産力効果が低下することにつながりうる。
     今後どのような社会資本を整備し、その財源をどのように調達することが適当か、より詳細な分析が可能となるようなデータの整備を行うとともに、より幅広い議論がなされるべきであろう。