82 1995年8月

『リーテイル分野における送金・決済サービスの動向について』

                         第二経営経済研究部主任研究官 田中 元則
     本稿は、今後の金融業のみならず経済・社会全体に大きな影響を与えるものと考えられるリーテイル分野における送金・決済サービスの現状と今後の方向について、各国の状況を比較・分析することを通じて、考察しようとするものである。

    1.  送金・決済サービスの発展の方向
       送金・決済サービスが今後進むべき方向は、顧客―銀行ネットワークの高度化(=エレクトロニクス化)と言うことができる。
    2.  送金・決済サービスのエレクトロニクス化
       送金・決済サービスの今後の姿は、@店頭で商品サービスを購入する場合は、消費者は1枚のICカードを“電子財布”(小口決済)、“デビットカード”(即時決済)、“クレジットカード”(信用供与)として利用し決済、A通信販売などの場合はホームバンキングによって決済、B公共料金等を定期的に支払う場合は自動引落や自動振込で処理するということとなる。
    3.  先進主要国の送金・決済サービスの現状
       今日送金・決済サービスが最も高度化したシステムを確立しているのは、フランスであり、英国についても同様の方向へ進んでいると言える。また、米国は現在急速にEFT―POS化が進んでいる。
       一方、ドイツや日本のように現金指向が高い国では、エレクトロニクス化された送金・決済サービスが普及するには若干時間がかかりそうであるが、国境を越えた決済ネットワークの構築を図っているプラットホーム会社の動向等を考えると、最終的にはすべての国に均質なサービスが提供されることになるものと思われる。
    4.  送金・決済サービスのエレクトロニクス化の影響
       以上の送金・決済サービスのエレクトロニクス化によって、@金融機関経営、A金融業(の産業構造)、B金融政策などへの影響が考えられるが、これらの影響について十分留意する必要がある。