No.94 1996年7月

国民の生活意識とマクロ経済変数

−「豊かさ」の経済分析−

                             第三経営経済研究部  石関 貴史

 戦後、我が国の経済は飛躍的な発展を遂げ、国民生活は豊かさを増してきたようにみえるが、一方では環境汚染、人口集中による生活環境の悪化などマイナスの効果も目立っている。では、経済成長にともなって人々の生活意識はどのように変化してきたのだろうか。
 本稿では、まず、人々の生活に対する満足度を、物価・所得・失業率等のマクロ経済変数で説明する推計式により検討した。この結果、戦後の経済成長を通して人々は、(1) インフレの昂進に対しては満足感を減少させている、(2) 1970年以降においては、人々は所得の上昇よりもレジャー・余暇生活の増加によって満足感を上昇させている可能性がある、(3) ただし、それは構造変化といえるほどドラスティックな変化ではない、等がわかった。
 次に、人々の立場を、(1) 現在の経済状況に満足しその継続を望んでいるか、(2) 現在の経済状況の変革を強く望んでいるか、の2つに分類し、我が国における「ポリティカル・ビジネス・サイクル」の可能性を「指示率関数」を使って分析した。その結果、我が国では失業率が低水準で推移してきたことなどから、米英独において実証されている「ポリティカル・ビジネス・サイクル」の存在する可能性は低いことがわかった。