No.97 1996年10月

景気循環でみた米国景気

                                        第三経営経済研究部     西沢 和彦

1.本稿は、景気予測のツールとして、景気循環論及び複合循環論を再検討し、米国景気予測に適用したものである。
2.米国には、その振幅の度合は近年小さくなっているものの在庫循環がなお生き続けており、96年第2四半期以降は、在庫積増し局面(短期循環の上昇局面)にあると考えられる。
3.米国には、なお設備投資循環が見出し得るといえ、96年第2四半期以降、下降局面に入ったと考えられる。
4.米国経済の特徴として、政治的景気循環が存在する。政治的景気循環は、大統領選挙年に特徴的であり、次のような現象としてあらわれる。大統領選挙年は前年よりも経済成長率が高くなる、大統領選挙年の9、10月には個人消費が膨らむ傾向がある、大統領選挙年の翌年は景気後退と密接な関係がある。これらの、いわば大統領選挙循環を形成する原因として、金融政策への政治的圧力、政府の移転支出の操作、大統領候補者のリップサービスによる選挙民のマインド高揚がなどが考えられる。
5.こうした個々の景気循環は、独立して景気を形成するのではないとの複合循環論によって、1960年以降の米国の景気を概ね捉えることができる。
6.景気の転換点をとらえるには、景気循環論・複合循環論のみならず、景気先行指数を利用することとなる。米国では、NAPM景気動向指数、実質耐久財受注などの景気先行指数が有益である。また、景気拡大期間も景気予測に利用可能である。