No.103 1997年4月

地域特性と地域経済に関する調査・研究

〜郵政局管内の経済成長パターンの変遷とその要因に関する考察〜

                       第三経営経済研究部長     桜井   仁志

1.1980年代以降の各郵政局管内の実質経済成長率をみると、80年代には大都市管内(注)が全国水準を上回る成長率を遂げる一方、地方管内(注)は全国水準を下回る成長となる傾向があった。しかし、90年代以降このパターンが逆転し、地方管内が全国水準を上回る経済成長となる一方、大都市管内は全国水準を下回る傾向に転じている。
2.各郵政局管内の人口、就業者の伸び率の推移をみると、人口の面では80年代以降、基本的には首都圏への一極集中が続いている他、各管内においてもその管内における一極集中の動きがみられる。一方、就業者の動きをみると、80年代以降、大都市管内の伸びが地方管内を上回るというパターンが一貫して続いている。
3.各郵政局管内の経済成長率を、「人口」、「就業者対人口比」、「就業者一人当たり実質GDP」に分けて要因分解してみると、一人当たり実質GDPが成長率に最も近い動きをしており、「90年代以降の経済成長パターンの逆転現象」をもたらしたのは、人口や就業者の動きではなかったということが分かる。
4.各郵政局管内の産業、需要構造を調べてみると、地方管内では押し並べて「建設業」と「政府サービス業」のウエイトが高く、需要面でも「政府最終消費」や「公的固定資本形成」などの「公的需要」の構成比が高いという特徴がある。平成不況期以降、公的部門が景気下支え効果を通じて地域間格差の縮小に寄与しており、90年代以降の経済成長パターンの逆転現象をもたらした最大の要因は公的需要であった。
5.ただし、各郵政局管内の人口一人当たり所得を比較してみると、90年代に入って、その格差は縮小方向に向かっているものの、依然大きな格差が存在している。
 (注)全国の管内を2つに分けるために、本稿では「大都市管内」を政令指定都市のうち人口の多い上位4位(東京、横浜、大阪、名古屋)までの都市が所在する管内とし、それ以外を「地方管内」と定義した。すなわち、「大都市管内」を東京、関東、東海、近畿の各郵政局管内とし、「地方管内」を北海道、東北、信越、北陸、中国、四国、九州、沖縄の各郵政局管内とした。