郵政研究所月報  
1998.8 

調査・研究

「地域の豊かさ指標」に関する調査研究



 
 
第三経営経済研究部主任研究官  植野 大作   
 
 

[要約]  
  1.  生活者の視点に立ち、地域の「豊かさ」を計量的に評価しようとの試みは、特に90年代に入り活発化している。90年代の既往研究事例を調査すると、様々な観点から開発された「豊かさ指標」は、30事例以上も存在する。こうした動きは、物質的な豊かさがある程度満たされた結果、人々が経済的要因のみでは測れない「生活の質」の向上に対しより関心を払うようになったことの反映であるとも考えられる。 
  2.  ただし、個々人が実感する「豊かさ」とは本来主観的なものであり、それを客観的に評価しようとの試みには常に困難がつきまとう。そこで本研究においては、「それぞれの生活主体者別の豊かさ」、「人々が生活する地域全体の活力」という2つの切り口を設け、それぞれに多様な評価軸を設定して、「地域の豊かさ指標」を算出することを試みた。 
  3.  前者の視点から作成した「生活者活力指数」では、5つの行動分野を設定した上で、各生活主体者に共通する指標を集計した「共通指数」の他、「こども」、「若者」、「大人(男性)」、「大人(女性)」、「高齢者」の5主体別に指数を試算した。試算結果によれば、「共通指数」では、東京が基礎的な各種インフラの整備や諸機能集積のメリットを受けることから大差で高い。主体別指数では、「子供指数」では東京が首位となったが、「若者指数」や「大人指数」で信越や北陸が上位2位を独占し、東京を含めた大都市管内が比較的下位にランクされるなどの特徴もみられた。また、郵便局が地域のワンストップ行政の窓口としての機能の他、防災拠点、交流拠点としての機能を果たした場合を想定して「共通指数」を再度試算すると、地域間格差が是正されることも確認された。 
  4.  後者の視点から作成した「地域活力指数」では、「経済活力」、「行政活力」、「交流活力」、「情報化活力」の観点から指数を作成し、それぞれをストックとフローの両面及びその合計として試算した。ストックとフローを合わせてみると、東京が全ての面で最も高いパフォーマンスを示し、中でも「交流活力」、「情報化活力」では他を大きく引離す結果となった。ただし、「経済活力」では信越や北陸が比較的上位に位置し、「行政活力」では東京以外の大都市管内が比較的下位、北海道や沖縄などが比較的上位にランクされるなどの特徴もみられた。また、生活者活力指数に用いたと同じ手法を「交流活力」、「情報化活力」に用いて郵便局活用の効果を試算した場合、やはり地域間格差が是正されることが分かった。 
 

 

第1章 豊かさ指標にかかわる先進事例の研究

1.1 90年以前の既往研究

 地域の特徴や魅力を経済的要因で捉えるのではなく、経済外的な要因も取り入れて評価しようとの試みは、古くは1960年代にもみられる。1961年には当時大阪市立大学の原田教授が都市の魅力項目として10項目を掲げ、単純積算による都市の比較分析を行っている。先駆的な研究といえるが、今日重視されている生活者からの視点は重視されておらず、かなり個性的な指標を採用している。 
 また、1970年には当時千葉大学の清水教授が大都市企画主幹会議からの委託を受け、6つの指標と30データの数値化から成る「魅力度体温計」という測定法で評価を実施している。ただし、文化環境指数として都市の文化的側面の評価を取り入れているが、全体としてはやや経済偏重の指標選択となっている。 
図表1−1 都市の魅力度評価の先進事例(90年代以前) 
大阪市立大学 原田教授(1961年) 
 

●概要 
都市の魅力項目として10項目を掲げ、単純積算による都市の比較分析を実施。その後、1974年にも同様の調査を実施している。個性的な指標を採用している点が特徴。 

●指標軸 
1)起源の古さ、2)都市的継続、3)政治的重要性、4)経済的繁栄、5)文化的洗練、6)国際性、7)近代的活力、8)酒、9)女、10)情緒

千葉大学 清水教授(1970年) 
 

●概要 
 「魅力度体温計」という測定法(6つの指標と30データの数値化)で評価を実施。 
●指標軸 
基礎指数:人口、面積、社会的活動人口、事業所数、地方税 
成長指数:人口増加、就業人口増加、商業販売額増加、製造品出荷額増加、等 
文化環境指数:幼児教育施設数、大学学生数、文化施設数、電話加入数、医師数 
消費指数:百貨店売上高、小売商店売上高、娯楽施設数、飲食店売上高、社交飲食店数 
経済中心指数:固定資産税額、最高地価、人口集中地区面積、金融機関数等 
生産指数:生産所得、従業者数、製造品出荷額、従業者給与額、個人所得

 
 

1.2 90年以降の既往研究

 生活者の視点に立ち、地域の住み良さといった生活の質を計量的に評価しようとの試みは、特に90年代に入り活発化している。契機となったのは、1991年に経済企画庁が国民生活白書の中で発表した各県別の国民生活指標(NSI)である。それ以前にも、日本経済新聞社や日本開発銀行設備投資研究所が都道府県別の暮らしやすさ指標などを対外的に公表してきたが、国が全国47都道府県を指標によりランキングしたとあって、全国的に大きな反響を読んだ。その後、様々な地域特集を掲載する著名な雑誌が、毎年のように「住みやすさによる都道府県別ランキング」を発表するに至り、地域別の「豊かさ指標」づくりに様々な機関や団体が取り組み始めている。自治体自ら指標開発に取り組んでいるところはまだ多くはないが、経済企画庁の発表したランキングで下位に甘んじた自治体の中には、汚名をはらすために独自の指標開発に乗り出したところもある。 
 豊かさ指標の開発が活発化した背景には、主に2つの理由が挙げられよう。 
まず「受け手側」の関心の高まりである。経済企画庁がNSIを発表したインパクトもあろうが、物質的な豊かさが満たされた結果、人々は「生活の質の向上」に対しより関心を払うようになっている。一般に「快適さ」という概念で捉えられている「アメニティ」という言葉も、80年代から90年代初頭にかけて流行した。また、国が「生活大国5か年計画」を閣議決定したのも92年である。こうした潮流を受け、それまで経済発展を第一の目標に掲げてきた地域も、生活者の視点からの地域づくりに方向転換せざるをえなくなり、「豊かさ指標」に敏感に反応するようになってきた。 
 次に、「指標の開発側」の関心の高まりも挙げられよう。既往研究事例は数多くあっても、万人が納得する豊かさ指標を開発することは不可能である。また、「豊かさ」の概念が高度化するほど指標の開発には困難が伴う。例えば「豊かさ」を生活の質、つまり「快適さ」と捉えるとしよう。従来は、「快適さ」は主として日常生活における利便性や安全性の確保、地域文化や自然環境の豊かさ、居住条件の良さなどを意図していた。しかし、物質面での豊かさがますます高まり、ライフスタイルが多様化・個性化する中で、「多様な価値観への許容」、「選択機会の多さ」、「精神的ゆとり」など、日常生活に求められる快適さも多様化、高度化している。 
 このように、そもそも計量化するには困難な「生活の質」をいかに客観評価するか、という課題には1つの解が与えられるものではない。地域の生活実感に近い指標を開発できるかどうかは指標開発者の創意工夫によるところが大きく、様々な指標開発が活発化している理由であると考えられる。 
 図表1−2は、こうした90年代の既往研究事例を一覧表にして示したものである。
図表1−2 90年代の「豊かさ指標」に関する既往研究事例
  No. 年度  調査  実施主体  備考 
総合分野  1  90  都道府県別「暮らしやすさ」指標  日経産業消費研究所 
2  90  北海道生活指標(HSI)  北海道 
3  90  東京が豊かで地方が貧しいか−地域カルテ  日本開発銀行設備投資研究所 
4  91  国民生活指標(NSI)  経済企画庁   
5  91  幸せライフ IN NIPPON  地域活性化センター 
6  92  新国民生活指標(PLI)  経済企画庁   
7  92  関西における都市アメニティ度評価とその向上に関する調査報告書  関西産業活性化センター 
8  92  都市の幸福度に関する調査研究  都市文化振興財団 
9  92  情報化未来都市システムの調査・開発  ニューメディア開発協会 
10  92  全国111都市の暮らしやすさ度  日経産業消費研究所   
11  92  全国100都市実力ランキング  THE21(PHP研究所)   
12  92  全国661都市豊かさランキング  THE21(PHP研究所)   
13  92  47都道府県別生活大国度ランキング  THE21(PHP研究所)   
14  93  新国民生活指標(PLI)  経済企画庁   
15  93  都道府県別「暮らしやすさ」指標(男女別、年齢別、地域別)  日経産業消費研究所   
16  93  全国100都市実力番付  THE21(PHP研究所)   
17  94  新国民生活指標(PLI)  経済企画庁   
18  95  新国民生活指標(PLI)  経済企画庁   
19  96  新国民生活指標(PLI)  経済企画庁   
20  96  埼玉県生活指標  埼玉県、 社会開発研究所   
21  96  指標でみる千葉県  千葉県 
22  96  佐賀県豊かさ指標  佐賀県   
23  96  この街に住みたい(都市の総合実力マップ)  週刊ダイアモンド   
24  96  沖縄県社会指標  沖縄県、沖縄計画研究所   
特定分野  25  93  環境にやさしい都市ランキング  THE21(PHP研究所)   
26  93  老人にやさしい都市、つめたい都市  THE21(PHP研究所) 
27  94  サラリーマンにやさしい都市  THE21(PHP研究所) 
28  94  女性にやさしい都市  THE21(PHP研究所)   
29  95  女性の地位指標  労働問題リサーチセンター   
特定地域  30  92  四国の都市比較  徳島経済研究所   
31  92  新潟県市町村別経済力と住みよさの比較  ホクギン経済研究所   
32  93  名古屋市社会指標  名古屋市   
33  95  新潟県市町村別経済力と住みよさの比較  ホクギン経済研究所   
 
(備考)○:報告書で事例を紹介、◎:報告書で時系列的に事例を紹介、◇:指標データ一覧を作成している。 
(注)「特定地域」とは“四国”や“新潟県”などの特定のエリアの都道府県或は市町村を対象に実施した調査。
 

第2章 豊かさ指標開発における考え方とデータ加工の方法

2.1 本研究における豊かさの概念と指標体系

2.1.1 豊かさとは

 本研究では、「豊かさ」とは「暮らしやすさ」であると考える。すなわち、家族と一緒に日常生活を送る上で、仕事をする上で、個人が自らの価値観に基づいて自己実現を図る上で快適であることを意味するものとする。 
 また、PLIでは「経済的要因を重視しない」立場をとっているが、本研究では生活していく上では経済的基盤は無視できないとの立場から、「経済的要因」も取り込むものとする。特に、個人としての所得だけではなく、住んでいる地域が財政的に豊かかどうかは、高齢化社会を迎えるにあたり重要な要因になると考えられる。 

2.1.2 本研究における豊かさの指標体系

 地域の豊かさは採択する統計データにより結果が異なるため、「地域の豊かさを測る指標」の概念整理が最も重要となる。ここでは、以下の考え方から「地域の豊かさ指標」を表す指標を大きく2つの切り口から捉えることを提案している。 
 

@生活主体者からの視点(生活者活力指数) 
 過去の先進事例からは、老人にとって住みやすい地域、働くサラリーマンにとって住みやすい地域、女性にとって住みやすい地域はそれぞれ特徴が異なることがわかる。すなわち、誰にとって住みやすい地域なのか、という生活主体者からの視点をひとつの切り口とし、年齢層に応じて「子ども指数」、「若者指数」、「大人(女性)指数」、「大人(男性)指数」、「高齢者指数」の5つの指標を設定する。さらに、どの年齢層にも共通なデータを集めて「共通指数」を設定する。したがって、以上の6つの指標を設定することにした。 
また、サブカテゴリーとして「住む(居住環境)・暮らす(利便環境)」、「働く(就業環境)」、「学ぶ(就学・文化環境)」、「安らぐ(自然環境)・生きる(安全・医療・福祉環境)」、「交わる(交流環境)・興じる(娯楽・余暇環境)」という5つの行動分野を設け、各年齢層の日常生活の視点から指標としてふさわしい客観データを抽出する。 
 

A地域全体の活力の視点(地域活力指数) 
 地域のダイナミズムを把握する目的から、「経済活力指数」、「行政活力指数」、「交流活力指数」、「情報化活力指数」という4つの指標を設定する。 
 また、サブカテゴリーとして「ストック」および「フロー」という領域を設定し、それぞれの活力ごとに指標としてふさわしい客観データを抽出する。 
 なお、「交流」とは国際的な交流と国内交流の両方を意味している。また、情報化は、今後の生活、産業、社会の全てと深くかかわるため、独立して柱を設けている。 
 図表2−1は、本研究で試算した「豊かさ指標」を体系図にして示したものである。 
 生活者活力指数においては、生活主体者別指標の収集につとめるとともに、相関の高い指標の絞り込みなどを行い、最終的に280指標を採用した。主体者別でみると共通指数が87指標と最も多いが、その中でも特に安らぐ・生きるの割合が高いといったように、主体および行動分野別の強弱が生じる。 
 地域活力指数においては、各分野ごとにストックとフローを表す指標をバランスよく収集することに努めている。ただし、交流活力指数についてはフローを表すデータが充実していたため、フローはストックの約2倍の指標を採用することとなった。地域活力指数においても相関の高い指標の絞り込みを行っており、最終的に93指標を採用した。 生活者活力指数においては、生活主体者別指標の収集につとめるとともに、相関の高い指標の絞り込みなどを行い、最終的に280指標を採用した。主体者別でみると共通指数が87指標と最も多いが、その中でも特に安らぐ・生きるの割合が高いといったように、主体および行動分野別の強弱が生じる。 
 地域活力指数においては、各分野ごとにストックとフローを表す指標をバランスよく収集することに努めている。ただし、交流活力指数についてはフローを表すデータが充実していたため、フローはストックの約2倍の指標を採用することとなった。地域活力指数においても相関の高い指標の絞り込みを行っており、最終的に93指標を採用した。 

図表2−1 豊かさ指標の体系 
 
 
図表2−2 生活者活力指数による豊かさ指標で採用したデータ系列数  
行動軸  住む・暮らす  働く  学ぶ  安らぐ・生きる  交わる・興じる  合計 
サブカテゴリ  住環境 
利便性 
生活基盤 
都市基盤 
就業機会 
労働条件 
産業力 
生涯教育 
国際化 
学校教育 
進学 
医療 
福祉 
保健 
安全 
文化・教養 
スポーツ 
余暇・娯楽 
交流 
共通指数  17  15  7  31  17  87 
子供指数  0  0  15  9  12  36 
若者指数  1  8  12  6  19  46 
大人(女性)指数  4  10  3  12  15  44 
大人(男性)指数  5  4  2  7  16  34 
高齢者指数  4  3  3  18  5  33 
合計  31  40  42  83  84  280 
 

図表2−3 地域活力指数による豊かさ指標で採用したデータ系列数  
  経済活力指数  行政活力指数  交流活力指数  情報化活力指数  合計 
ストック  12  12  8  11  43 
フロー  14  12  15  9  50 
合計  26  24  23  20  93 
 

 

2.2 指標を試算する際の基本的方針

 本研究では「豊かさ指標」の試算・分析において以下の点に留意するものとする。 

@.地域の経済外要素であるアメニティを多面的に捉える指標とする 
 本研究で定義する「豊かさ」には経済要因を含めることとしているが、「生活者活力指数」では主に経済活動以外の要素に着目することとし、より多角的な観点から地域住民の生活実感に近い指標を試算することとする。したがって、経済外的要素であるアメニティ(一般に“快適さ”を意味する)の“質”を代替できる客観データの収集に努めることとし、その際ハードウエア偏重にならないよう配慮する。 

A.客観指標の単位に留意 
 目的とする経済活動やアメニティを指標化するのにふさわしい単位の作成を試みる。例えば、病院へのアクセス性を重視するのであれば「可住地面積あたりの病院数」が妥当であろうし、医療の充実度を重視するのであれば「人口(あるいは患者)あたりの病院数(あるいは医師数、ベッド数)」が適していよう。面積あたりとするか、人口あたりとするかで指標の数値が大きく変わるだけに、『一般的に十分普及しているとみなされる財やサービスではアクセス性を重視する』というように、客観データを加工する際の基本方針を検討する。その際、一律の規定を設けるのではなく、生活者の立場と、評価される財・サービスの性格を考慮した方針を検討する。 

B.解釈が曖昧なデータは不採用 
 アメニティにプラスとなるかマイナスとなるか符号条件が曖昧なデータの採用については慎重に検討し、極力解釈が明確な代替データによる置き換えを試みる。 

(例) 
・自由度を表すプラス指標、安全・安心を表すマイナス指標としての「離婚率」 
 →個人の価値観の相違であり、自由度や安全・安心を表す指標かどうか疑問 
・女性が出産しやすい環境を表すプラス指標としての「合計特殊出生率」 
 →子供を生むかどうかは個人の価値観の相違であり、子供を生みたい人が出産しやすい環境を表すのなら「乳幼児100人あたり託児所定員数」の方が好ましい 

C.行政で対応不可能な指標については要検討 
 本来「気象条件」は地域特性を表す重要なファクターであるが、維持・管理に関与可能な林野や公園・緑地に比べ、気象条件は人為的コントロールが不可能であることから、こうした指標の取り扱いについては慎重に行う。(経済企画庁のPLIが北陸・甲信越地方に有利な結果が出るのは、気象条件を採用していないことも理由としてあげられよう。) 

D.郵便局のポテンシャルに関する試算 
 本調査では、郵便局がワンストップ行政や災害時の連絡窓口、地域活動の拠点などに多面的に活用された場合を想定して、人口あたりの郵便局数を取り入れた試算を行う。これにより、国民生活において郵便局が果たしうる役割を検討することが可能となるように努める。

 

2.3 指標化の手法

2.3.1 客観的データの指標化の方法

 本調査の指標体系は図表2−4のとおりで、レベル1からレベル3へと統合化する。 
図表2−4 指標統合のイメージ
 

2.3.2 指標の統合化の方法

 まず、レベル1の指標値(統計データ、または原データ)は単位が異なるデータで表現されている上、各統計間での数値の大きさやバラツキがまちまちである。そのため、指標間の相互比較が可能となるよう、それぞれ平均と分散をそろえて標準化を図る。 

標準化された原データ=(個別の原データ−全国平均値)/標準偏差 

 次に、各指標ごとにプラス指標(指標値が大きくなるほど豊かさに寄与する、あるいは水準が高いと評価される場合はプラス)、マイナス指標(指標値が小さいほど豊かさに寄与する、あるいは水準が高いと評価される場合はマイナス)を決定する。 
 レベル1〜レベル3までの統合化は均等ウエイト方式で算出する方法が一般的であり、本調査では各レベルごとで平均化し、指数を統合する。○レベル1→レベル2 
例)レベル2指数である「生きる・安らぐ」(高齢者指数のサブカテゴリー)の算出 
 「生きる・安らぐ」がX、Y、Zの3つのレベル1の指標から構成されているとすると、 
 東京都のレベル2の単純平均は、 
(Xt+Yt+Zt)/3=Qt 
 (Xt、Yt、Ztはそれぞれ標準化された東京のレベル1の指標) 
 神奈川県のレベル2の単純平均は(Xk+Yk+Zk)/3=Qk 
 ・・・・・・・・ 
○レベル2→レベル3 
例)レベル3指数である「高齢者指数」の算出 
 高齢者指数は、「住む」(=A)「働く」(=B)「学ぶ」(=C)「生きる・安らぐ」(=D)「交わる・興じる」(=E)の5つのレベル2の指標から構成されている。従って、 
 東京都のレベル3の単純平均は(At+Bt+Ct+Dt+Et)/5=Qt 
 (At、Bt、Ct、Dt、Etはそれぞれ統合化された東京のレベル2の指標) 
 神奈川県のレベル3の単純平均は(Ak+Bk+Ck+Dk+Ek)/5=Qk 

 こうして算出された指数は、全国平均を0とし、当該地域がそれよりも低い水準にある場合はマイナス、高い水準にある場合はプラスとなる指標として再構築される。

 

第3章 生活者活力指数

3.1 生活者活力指数の体系

 生活者活力指数では、6つの生活主体者別指数、5つの行動分野別指数を設定して、それぞれの豊かさについて試算を行った。 

3.1.1 生活主体者別指数の考え方

 

@共通指数 
 各主体に共通して、ベーシックに必要な機能整備(病院、図書館など)、主体が共通して関わる状態を表す数値(火災死傷者数など)を指標とした。(ただし、「働く」に関しては、子ども以外の4主体に共通した指標を共通指数に設定している。) 
 したがって、各主体別の豊かさの大きさ全体(トータル量)をみるためには、本指標の高さをベースとして、その上に各主体別の豊かさをプラスして考えることになる。 

A子ども指数 
 中学生までの年齢の男女を想定し、子どもに関連の深い機能整備(小学校、中学校に関連する指標など)、状態を表す数値(乳児死亡率、15歳以下の交通事故死者比率、14歳以下の自殺率など)を指標とした。 

B若者指数 
 高校生から大学生程度の年齢の男女を想定し、若者に関連の深い機能整備(大学・短大に関する指標など)、状態を表す数値(16〜24歳の交通事故死者比率、16〜24歳の自殺率、15〜24歳の睡眠平均時間など)を指標とした。 

C大人(女性)指数 
 25〜64歳程度の女性を想定し、女性に関連の深い機能整備(保育園数など)、状態(女性の現金給与額、25〜64歳女性の交通事故死者比率、25〜64歳女性の自殺率、25〜64歳女性の睡眠平均時間など)を表す数値、などを指標とした。 

D大人(男性)指数 
 25〜64歳程度の男性を想定し、男性に関連の深い機能整備(ゴルフ場数など)、状態を表す数値(男性の現金給与額、25〜64歳男性の交通事故死者比率、25〜64歳男性の自殺率、25〜64歳男性の睡眠平均時間など)などを指標とした。 

E高齢者指数 
 65歳以上の男女を想定し、高齢者に関連の深い機能整備(老人ホームヘルパー数など)、状態を表す数値(65歳男性の交通事故死者比率、65歳男性の自殺率、65歳男性の睡眠平均時間など)などを指標とした。 

3.1.2 行動分野別指数の考え方

 行動分野は、次のようなサブ・カテゴリーによって構成されている。 

@住む・暮らす 
住環境 
利便性 
生活基盤 
都市基盤
持ち家率や1住宅あたり延べ面積など、住宅に関する指標群 
小売業や金融機関の集積など、利便性に関する指標群 
可処分所得など、基本的な生活力に関する指標群 
公共下水道普及率など、都市インフラに関する指標群
 

A働く 
就業機会 
労働条件 
産業力
有効求人倍率など、就職に関する指標群 
初任給や労働時間数など、労働環境に関する指標群 
製造業粗付加価値額など、産業の競争力に関する指標群
B学ぶ 
生涯学習 
国際化 
学校教育 
進学
青少年学級や成人学級の受講者数、公立図書館蔵書数など、学校意外の自主的な学習活動に関する指標群 
留学生数や国際会議開催数など、国際的な学習や研究に関する指標群 
小・中・高校での学校教育に関する指標群 
高等学校卒業者の進学率など、上級学校への進学に関する指標群
C安らぐ・生きる 
医療 
福祉 
保健 
安全
病院数や病床数など、医療機関に関する指標群 
児童福祉、身体障害者福祉、老人福祉に関する指標群 
保健婦家庭訪問や薬局数など、健康の維持に関する指標群 
出火件数や警察署数など、防災、防犯などに関する指標群
D交わる・興じる 
文化・教養 
スポーツ 
余暇・娯楽 
交流
県民文化会館収容定数など、文化活動に関わる指標群 
体育館延面積など、スポーツに関わる施設や活動に関する指標群 
旅行や映画館数など、余暇に関わる施設や活動に関する指標群 
町内会数や1日交流可能面積など、交流に関する指標群
 

 

3.2 生活主体者別指数の試算結果

3.2.1 生活主体者別指数の結果総括

 2章及び3章1節に示した方法に基づいて試算した主体別指数は以下のような結果となった。まず「共通指数」についてみると、東京管内が大きな差をつけて高い。「共通指数」で東京管内が高いのは、施設集積の諸指標(面積あたりの利用施設数)において大きな差をつけており、それが指数を押し上げているためである。東京管内は「大人(女性)指数」「大人(男性)指数」「高齢者指数」では下位であるが、それには地価や家賃の高さなど、利便性故のマイナス条件が影響している。 
 その他の主体別では、「若者指数」では北陸管内、「大人(女性)指数」、「大人(男性)指数」、「高齢者指数」では信越管内が高くなっている。信越管内は、「大人(女性)指数」「大人(男性)指数」「高齢者指数」で高い。これは、住居関連(持ち家率など)、就職率、成人学校講座受講者数などの指標が寄与している。 
 北陸と信越が多くの指数で上位にあるが、これらの管内は住居関連や機能集積などでゆとりがあるほか、通勤時間や学習時間などが高いなど時間的なゆとりも比較的高いことなどから、各主体で手堅く得点して平均以下となる領域が少ないためである。また、中国管内及び四国管内も、総じて全国平均以上の分布となっている。 
図表3−1 主体別の12管内ランキング(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  共通指数  子ども指数  若者指数  大人(女性)指数  大人(男性)指数  高齢者指数 
1  東京管内  1.1542  東京管内  0.3596  北陸管内  0.4885  信越管内  0.3764  信越管内  0.5143  信越管内  0.4183 
北陸管内  0.3100  北陸管内  0.3016  信越管内  0.4771  北陸管内  0.2387  北陸管内  0.2524  北海道管内  0.2389 
北海道管内  0.1730  北海道管内  0.2537  四国管内  0.2129  中国管内  0.2127  中国管内  0.1872  東北管内  0.2152 
4  信越管内  0.1484  中国管内  0.1043  中国管内  0.0757  四国管内  0.1275  北海道管内  0.1441  北陸管内  0.1438 
5  中国管内  0.1461  九州管内  0.0966  東京管内  ―0.0108  沖縄管内  0.0246  四国管内  0.0513  中国管内  0.1113 
6  近畿管内  0.0122  信越管内  0.0888  沖縄管内  ―0.0150  東北管内  ―0.0314  東北管内  ―0.0209  四国管内  0.0810 
7  四国管内  0.0043  四国管内  0.0840  九州管内  ―0.0368  東海管内  ―0.0483  東海管内  ―0.0295  九州管内  ―0.0415 
8  東海管内  ―0.0122  沖縄管内  0.0711  東海管内  ―0.0542  近畿管内  ―0.0564  近畿管内  ―0.0359  東海管内  ―0.0833 
9  関東管内  ―0.0788  東北管内  0.0052  東北管内  ―0.0611  九州管内  ―0.0582  九州管内  ―0.0936  沖縄管内  ―0.1621 
10  東北管内  ―0.1587  東海管内  ―0.1455  北海道管内  ―0.1477  北海道管内  ―0.0587  関東管内  ―0.2143  関東管内  ―0.1891 
11  九州管内  ―0.2029  近畿管内  ―0.1743  関東管内  ―0.1713  東京管内  ―0.1293  東京管内  ―0.2177  東京管内  ―0.2130 
12  沖縄管内  ―0.4020  関東管内  ―0.2467  近畿管内  ―0.2393  関東管内  ―0.2503  沖縄管内  ―0.2394  近畿管内  ―0.2260 
 

3.2.2 生活主体者別指数の管内間比較

 

@共通指数 
 東京管内が大差をつけて高い。これには、利用者の視点から採用した、利便施設(商店、金融機関など)の面積あたりの指標が高いことが寄与している。 
 最も低い沖縄は、可処分所得、交流(選択可能情報量、旅行の年間行動者率、一日交流可能人口)などが低い。本州からの距離という地理的な要因も反映している。 

図表3−2 「共通指数」管内間比較(95年) 
 

A子ども指数 
 東京管内が最も高い。理由は、利用施設の可住地面積当たりの数が高く、「大人(男性)指数」、「大人(女性)指数」、「高齢者指数」で大きくマイナスに働いている地価、家賃の指数の影響がないためである。 
 北海道、北陸管内は、「学ぶ」が北海道は校地面積、北陸は外国語指導助手数などで、「交わる・興じる」がレク施設などの集積で高く、上位となっている。 

図表3−3 「子ども指数」管内間比較(95年) 
 

B若者指数 
 北陸と信越がほぼ並んで最も高い。特に、「交わる・興じる」のレクリエーション関連施設の指標(海水浴場、スキー、プール、県民文化会館など)、教育関係(高校卒業者の進学率、外国語指導助手数)などが高いことが寄与している。 

図表3−4 「若者指数」管内間比較
 

C大人(女性)指数 
 大人(女性)指数は特に信越管内で高い。「住む・暮らす」では通勤・通学平均時間(25〜64歳女)、「学ぶ」が成人学校受講者数などが高いことが寄与している。 
 北陸は「住む・暮らす」が通勤・通学時間や住居関連指標などで、中国は「学ぶ」が成人一般学級・講座受講者数などで、四国は「住む・暮らす」が通勤・通学時間などで高く、上位となっている。 
 東京管内の順位は低い。これは、大人(男性)指数および高齢者指数と共通に、「住む・暮らす」の土地平均価格(住宅地)や家賃が高いことに起因する。 

図表3−5 「大人(女性)指数」管内間比較
 

D大人(男性)指数 
 最も高いのは信越である。「学ぶ」では成人学校受講者数などが高く、「住む・暮らす」では通勤時間が短いこと、居住関連が全てプラスであることなどが寄与している。  
 東京管内の指数は低い。これは、大人(女性)指数および高齢者指数と共通に、「住む・暮らす」の土地平均価格(住宅地)や家賃が高いことに加え、特に通勤・通学時間が長いことに起因する。 

図表3−6 「大人(男性)指数」管内間比較
 

E高齢者指数 
 最も高いのは、信越である。「住む」で住宅に住む高齢夫妻世帯の持ち家率など、「学ぶ」で成人学校受講者数などが高いことが寄与している。また、北海道および東北管内が高いが、北海道は「働く」で就職率(65歳以上)、「交わる・興じる」でスポーツ平均時間(65歳〜)などが高いこと、東北は「住む・暮らす」で家賃が低く、高齢夫妻世帯の持ち家率の高いことなどが寄与している。 

図表3−7 「高齢者指数」管内間比較
 

3.3 行動分野別指数の試算結果

3.3.1 行動分野別指数の結果総括

 「交わる・興じる」以外の行動分野では、東京管内が大差をつけて高い。これは、施設や機能の集積に関する諸指標を中心に得点が高いことに起因する。 
 「交わる・興じる」では、情報集中度(郵便物引き受け数、加入電話総発信量など)で東京管内が高く、その他上位の地方管内は人口あたりの施設容量(県民文化会館等収容定数、キャンプ場の数など)が高いことに起因して、上位にランクされている。 
図表3−8 行動分野別指数の12管内ランキング(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  住む・暮らす  働く  学ぶ  安らぐ・生きる  交わる・興じる 
1  東京管内  0.9637  東京管内  1.1748  東京管内  0.9556  東京管内  0.5109  北陸管内  0.4221 
2  北陸管内  0.2546  北海道管内  0.2463  北陸管内  0.4089  北海道管内  0.2508  信越管内  0.3879 
3  信越管内  0.1450  中国管内  0.1565  信越管内  0.2760  北陸管内  0.2125  東京管内  0.3612 
4  中国管内  0.1067  北陸管内  0.1253  中国管内  0.1710  中国管内  0.1520  北海道管内  0.3275 
5  東海管内  0.0855  信越管内  0.1232  北海道管内  0.1405  四国管内  0.1348  中国管内  0.1197 
6  近畿管内  ―0.0109  四国管内  0.1174  近畿管内  0.1087  九州管内  0.1284  東海管内  0.0222 
7  四国管内  ―0.0564  東海管内  0.0869  四国管内  0.0774  東北管内  0.0574  関東管内  ―0.0050 
8  東北管内  ―0.0662  関東管内  0.0049  東海管内  ―0.0805  信越管内  0.0383  東北管内  ―0.0896 
9  関東管内  ―0.0745  近畿管内  ―0.0093  東北管内  ―0.1413  沖縄管内  0.0128  近畿管内  ―0.0931 
10  沖縄管内  ―0.1530  九州管内  ―0.1795  関東管内  ―0.1653  近畿管内  ―0.1519  四国管内  ―0.1164 
11  九州管内  ―0.1773  東北管内  ―0.3265  九州管内  ―0.2617  東海管内  ―0.2720  九州管内  ―0.2213 
12  北海道管内  ―0.2888  沖縄管内  ―0.4062  沖縄管内  ―0.5326  関東管内  ―0.2902  沖縄管内  ―0.2722 

3.3.2 行動分野別指数の管内間比較

 

@住む・暮らす 
 東京管内が大きな差をつけて高い。金融機関や商店など利便施設の集積(可住地面積あたりの数)が高いことなどに起因している。 
 北海道管内の低さは、住居関連(持ち家率など)や、面積の広さと本州からの独立性に関連した指標(道路延長比率、一日交流可能人口)などの低さに起因している。 

図表3−9 「住む・暮らす」管内間比較
 

A働く 
 東京管内が最も高い。産業の先端性(特許・実用新案出願数、ベンチャー企業数など)を表す指標や、商業年間販売額などが寄与している。 
 沖縄管内の低さは、就職出入率、有効求人倍率、ベンチャー企業数/事業所数などの指標の低さに起因する。  

図表3−10 「働く」管内間比較
 

B学ぶ 
 東京管内が最も高い。高等教育に関する指標(高等教育機関職員数、留学生数、大学生数)などが高いことが寄与している。 
 沖縄管内の低さは、中学および高校卒業者の進学率、選択可能情報量、学習・研究(学業以外)(25〜64歳男)などの低さに起因する。 

図表3−11 「学ぶ」管内間比較
 

C安らぐ・生きる 
 東京管内が最も高い。それは、病院や歯科医院、警察署・交番・駐在所数の集積(可住地面積当たりの数)が高いことに起因する。 
 関東管内の低さは、人口あたりの医療関係の従事者数(児童福祉施設従事者数、医師数など)や、公害苦情件数、社会福祉費の低さなどに起因している。 

図表3−12 「安らぐ・生きる」管内間比較
 

D交わる・興じる 
 北陸管内が最も高い。施設容量のゆとり(県民文化会館等・収容定数/人口)、耐久財保有率・衛星放送受信装置、都市公園面積/人口などが寄与している。 
 沖縄管内の低さは、旅行の年間行動者率、耐久財保有率・パソコン、全メディアの選択可能情報量などの低さに起因する。 

図表3−13 「交わる・興じる」管内間比較
 

3.4 郵便局のポテンシャル

3.4.1郵便局活用の考え方

 郵便局は他の多くの施設と比較して、人口が少ない地域にもその分布があり、利便施設として重要な役割を果たしている。 
 そこで、生活者活力指数では「郵便局数/人口」を取り上げ、郵便局が将来、地域における拠点ネットワークを生かし、 

@.ワンストップ行政の窓口(「住む・暮らす」への貢献) 
A.防災拠点や災害時の連絡窓口、(「安らぐ・生きる」への貢献) 
B.地域活動の交流の拠点(「交わる・興じる」への貢献) 

といった視点で様々な生活分野で機能を果たした場合に、各管内の豊かさにどのような貢献をしうるかを試算した。 
 具体的には、主体別の共通指数において、「郵便局数/人口」を「住む・暮らす」「安らぐ・生きる」「交わる・興じる」に加え、その効果をみた。 

3.4.2 郵便局活用による影響(管内別比較)

 地方管内では、中国、九州、四国、東北、信越を中心にプラスに働く。特に東京管内では、地方管内の上昇によって突出度が低下する。つまり、郵便局活用により、相対的に東京管内が低下するのに対して地方管内が上昇し、管内間の格差が縮まる。 
 郵便局活用による共通指数の変化量だけを取り出してみると、多くの地方管内ではプラスに寄与し、東京管内を中心とした大都市圏を含む管内では相対的にマイナスとなることが鮮明になる。 
図表3−14 郵便局活用による影響(管内別)
 
図表3−15 郵便局活用による共通指数の変化分(管内別)
 
図表3−16 郵便局活用による共通指数の変化(管内別) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  北海道  東北  関東  東京  信越  北陸  東海  近畿  中国  四国  九州  沖縄 
標準ケース(A)  0.173  ―0.159  ―0.079  1.154  0.148  0.310  ―0.012  0.012  0.146  0.004  ―0.203  ―0.402 
郵便局活用 (B) 0.179  ―0.145  ―0.106  1.082  0.162  0.313  ―0.032  ―0.004  0.172  0.023  ―0.184  ―0.425 
差(B―A)  0.006  0.014  ―0.027  ―0.072  0.013  0.003  ―0.020  ―0.016  0.026  0.018  0.019  ―0.023 
 
図表3−17 郵便局活用による共通指数の変化(管内別)
 

3.4.3 郵便局活用による影響(都道府県別比較)

 都道府県別では、島根、高知、鹿児島などの相対的上昇度合が大きい。郵便局活用により、共通指数の47都道府県の最大格差は1.63σから、1.55σへと縮小した 
 郵便局が将来、生活の多様な分野において機能することにより、地域間格差を是正する役割を果たしうる可能性が示されている。 
図表3−18 共通指数の郵便局活用による変化【都道府県別】
 
 

第4章 地域活力指数

4.1 地域活力指数の体系

 地域活力指数は4つの分野を設け、各分野ごとにストックとフローに区別して指標を構成し、それぞれの豊かさについて試算を行った。 
 地域活力指数は、経済活動や住民生活を行う上での基盤整備の状況や経済社会のダイナミックな動き、あるいは地域のポテンシャルを表すことを目的としており、以下の4分野にわたる指数で構成されている。 

@経済活力指数 
 地域の経済活動や潜在的な経済力を表すことを目的としており、ストックとしては就業者数や労働力人口、持ち家比率や金融機関の店舗数などを、フローとしては可処分所得や有効求人倍率、工場立地件数や新設住宅戸数などを指標として採用した。 

A行政活力指数 
 地域のインフラストラクチャーの整備、および地方行政の活動状況や住民活動面などを表すことを目的としており、ストックとしては都市公園面積、道路整備状況などを、フローとしては財政力指数や地方債発行額、選挙の投票率やボランティアの活動状況などを指標として採用した。 

B交流活力指数 
 地域間交流や国際交流を行う際のインフラストラクチャーの整備状況や、主に人やモノに関する交流の状況を表すことを目的としており、ストックとしては姉妹都市提携数や空港数、フローとしては海外渡航者数やコンベンション開催数、国内線や国際線の発着便数などを指標として採用した。 

C情報化活力指数 
 地域における情報産業の集積状況や、住民生活や行政面における地域情報化の状況を表すことを目的としており、ストックとしては情報サービス産業の事業所数や従業者数、衛星放送契約数やパソコン所有率を、フローとしては携帯・自動車電話総発信数や全メディアの選択可能情報量、郵便引受数などを指標として採用した。 

4.2 地域活力指数の試算結果

4.2.1 地域活力指数の結果総括

 ストックとフローを合わせた地域活力指数でみると、全ての活力面で東京管内が最も高くなっている。特に、交流活力と情報化活力では他地域を大きく上回る結果となった。 
 指数別にみると、経済活力指数では東京管内に次いで北陸管内、信越管内が高く、最も低いのは沖縄管内となっている。全国平均を下回っている管内は5つ存在するが、中でも沖縄管内が全国平均を大きく下回っている。 
 行政活力指数では、やはり東京管内に次いで北陸管内が高くなっている。また、経済活力指数では11位、12位と下位、最下位に位置していた北海道管内と沖縄管内が、行政活力指数ではそれぞれ3位、5位と上位に位置しており、経済活力の低い地域に行政支援が手厚くなっていると推察される。 
 交流活力指数では、東京管内に次いで、近畿管内、沖縄管内、東海管内、関東管内と続いており、沖縄を除き大都市圏が上位に位置している。 
情報化活力指数では、東京管内に次いで北陸管内が高い。北陸管内は交流活力指数を除き、全ての活力面で東京に次いで高いパフォーマンスを示している。 
 地域活力をストック面からみると、経済活力指数を除いては東京管内が最も高くなっている。北陸管内は持ち家比率や一住宅あたり延べ床面積、人口当たりの金融機関店舗数などの経済活力指数が高く、この分野では東京管内を上回っている。行政活力指数では、東京管内に次いで北海道管内と沖縄管内が高くなっているが、両道県の行政活力指数のフローは下位にあることから、ストックでの高さが先のストック&フロー全体でみた行政活力指数の高さに寄与していることがわかる。交流活力指数では、東京管内に次いで近畿管内、東海管内といった大都市圏が続き、沖縄管内が4位に入る。情報化活力指数は、東京管内に次いで、北陸管内、信越管内が高くなっている。 
 地域活力をフロー面からみると、行政活力指数を除いては東京管内が最も高くなっている。北陸管内は、選挙の投票率や一人あたり地方債発行額、一人あたり地方交付税額などの行政指標が高く、この分野では12管内中最も高くなっている。沖縄管内は全般に低いパフォーマンスとなっているが、交流活力指数においてはストック、フロー共に高く、特にフローでは東京管内に次いで高くなっている。これは、ストックでは面積あたり空港数、フローでは人口あたり国内線発着便数、航空旅客輸送人員といった航空関連指標が高いことに起因している。 
図表4−1 地域活力(ストック&フロー)の12管内ランキング(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  経済活力  行政活力  交流活力  情報化活力 
1  東京管内  0.915  東京管内  0.643  東京管内  2.307  東京管内  2.724 
2  北陸管内  0.494  北陸管内  0.360  近畿管内  0.370  北陸管内  0.329 
3  信越管内  0.351  北海道管内  0.274  沖縄管内  0.322  東海管内  0.174 
4  四国管内  0.167  中国管内  0.187  東海管内  0.283  近畿管内  0.157 
5  東海管内  0.148  沖縄管内  0.085  関東管内  0.219  中国管内  0.142 
6  中国管内  0.139  九州管内  0.077  信越管内  0.055  信越管内  0.130 
7  近畿管内  0.000  信越管内  0.049  北海道管内  ―0.002  関東管内  0.011 
8  関東管内  ―0.147  東北管内  0.027  中国管内  ―0.211  北海道管内  ―0.053 
9  東北管内  ―0.148  四国管内  ―0.011  北陸管内  ―0.219  四国管内  ―0.152 
10  九州管内  ―0.241  近畿管内  ―0.025  東北管内  ―0.308  東北管内  ―0.286 
11  北海道管内  ―0.437  東海管内  ―0.308  九州管内  ―0.319  九州管内  ―0.441 
12  沖縄管内  ―1.008  関東管内  ―0.341  四国管内  ―0.457  沖縄管内  ―0.928 
 
図表4−2 地域活力(ストック)の12管内ランキング(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  経済活力  行政活力  交流活力  情報化活性力 
1  北陸管内  0.682  東京管内  1.046  東京管内  2.229  東京管内  2.455 
2  東京管内  0.598  北海道管内  0.543  近畿管内  0.472  北陸管内  0.552 
3  信越管内  0.456  沖縄管内  0.436  東海管内  0.355  信越管内  0.425 
4  四国管内  0.428  北陸管内  0.256  沖縄管内  0.216  中国管内  0.335 
5  中国管内  0.329  近畿管内  0.128  信越管内  0.174  東海管内  0.098 
6  東海管内  0.064  中国管内  0.098  関東管内  0.130  東北管内  ―0.016 
7  東北管内  ―0.051  九州管内  0.024  北海道管内  0.016  関東管内  ―0.074 
8  近畿管内  ―0.136  関東管内  ―0.135  中国管内  ―0.158  四国管内  ―0.117 
9  九州管内  ―0.179  四国管内  ―0.157  北陸管内  ―0.304  近畿管内  ―0.219 
10  関東管内  ―0.352  信越管内  ―0.203  東北管内  ―0.312  北海道管内  ―0.232 
11  北海道管内  ―0.846  東北管内  ―0.216  九州管内  ―0.396  九州管内  ―0.471 
12  沖縄管内  ―1.481  東海管内  ―0.236  四国管内  ―0.406  沖縄管内  ―1.103 
 
図表4−3 地域活力(フロー)の12管内ランキング(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  経済活力  行政活力  交流活力  情報化活性力 
1  東京管内  1.233  北陸管内  0.465  東京管内  2.385  東京管内  2.992 
2  北陸管内  0.307  信越管内  0.302  沖縄管内  0.427  近畿管内  0.533 
3  信越管内  0.247  中国管内  0.277  関東管内  0.309  東海管内  0.249 
4  東海管内  0.232  東北管内  0.269  近畿管内  0.268  北海道管内  0.125 
5  近畿管内  0.135  東京管内  0.239  東海管内  0.211  北陸管内  0.106 
6  関東管内  0.058  四国管内  0.134  北海道管内  ―0.019  関東管内  0.097 
7  北海道管内  ―0.028  九州管内  0.129  信越管内  ―0.065  中国管内  ―0.050 
8  中国管内  ―0.051  北海道管内  0.006  北陸管内  ―0.135  信越管内  ―0.165 
9  四国管内  ―0.094  近畿管内  ―0.178  九州管内  ―0.242  四国管内  ―0.186 
10  東北管内  ―0.245  沖縄管内  ―0.266  中国管内  ―0.265  九州管内  ―0.412 
11  九州管内  ―0.304  東海管内  ―0.380  東北管内  ―0.303  東北管内  ―0.557 
12  沖縄管内  ―0.534  関東管内  ―0.548  四国管内  ―0.508  沖縄管内  ―0.752 
 

4.2.2 地域活力指数の管内間比較

 以下では、ストックとフローを合わせた地域活力指数について、その試算結果を図示し、簡単な解説を加える。 

@経済活力指数 
 ストックとフローを合計した経済活力指数では、東京管内が最も高く、次いで北陸管内、信越管内となっている。 
 東京管内の高さには、ストック面で世帯あたり銀行預金残高や人口あたり民間生命保険契約件数の指標が他管内に比べて極めて高いこと、フロー面では他県からの就業比率従業者、1人あたり商業年間販売額、一人あたり全機関旅客輸送人員、ベンチャー企業輩出率などの指標が全国平均を大きく上回っていることが寄与している。 
 北陸管内や信越管内が上位に位置するのは、持ち家比率や1住宅あたり延べ面積などの住環境に関する指標や一人あたり金融機関の店舗数が高いことやなどが寄与しているためである。 
 最も低い沖縄管内については、一人あたり県民所得や可処分所得、有効求人倍率などの低さが影響している。 

  

図表4−4 経済活力指数・ストック&フロー管内間比較(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 

A行政活力指数 
 ストックとフローを合計した行政活力指数では、東京管内が最も高く、次いで北陸管内、北海道管内となっている。 
 東京管内の高さはストック面の寄与が大きく、トイレ水洗化人口比率や公共下水道普及率、市町村道舗装率や一般道路舗装済延長率といった都市的インフラ整備に関する指標が高くなっている。 
 一方、関東、東海、近畿といった東京以外の大都市部は下位を占めている。ストック、フローともに低い関東管内は最下位となっており、行政活力指数が最も低い地域といえる。都市部で特に水準の低い指標としては、投票率、人口あたり行政投資額、人口あたり地方交付税額となどである。 
 行政活力指数にみる大都市部の相対的な低さは、地域間格差の溝を埋めるという行政の役割を反映しているとも考えられる。 

  

図表4−5 行政活力指数・ストック&フロー管内間比較(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
B交流活力指数 
 ストックとフローを合計した交流活力指数では、東京管内が最も高く、次いで近畿管内、沖縄管内、東海管内となっているが、東京管内と2位以下の他管内との格差は非常に大きく、交流活力指数においては全国の中でも東京が飛び抜けて高い水準にあるといえる。 
 東京管内では貿易事務所比率、面積あたり空港数や新幹線駅数、一日交流可能面積比率などのストック指標が高いほか、フローにおいても人口あたり鉄道旅客輸送人員、コンベンション開催数、外国人の訪問率などことが高い。 
 近畿管内は大阪府が、東海管内は愛知県が大半の指標において高い水準を示しており、管内全体の水準を引き上げている。 
 沖縄管内は面積あたりの空港数の指標が全国において極めて高い水準にあることが寄与しているほか、人口あたり国内線発着便数や航空旅客輸送人員の指標が高い。ただしこれには、離島が散在する性格上、交通手段として空路が発達せざるを得ないとう面もあると考えられる。 
 また、経済活力指数、行政活力指数、情報化活力指数ではストックとフローでかなり管内格差の状況に違いが認められたのに対し、交流活力指数はストックとフローでみた場合の管内格差の状況が似通っている点が特徴としてあげられる。これは、飛行機、新幹線、自動車という3つの交通モードにおいて、それぞれ飛行場数と離発着便数といったような対応関係でハードとソフトの指標を採用していることも起因していると考えられる。 

  

図表4−6 交流活力指数・ストック&フロー管内間比較(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 

C情報化活力指数 
 ストックとフローを合計した情報化活力指数では、東京管内が飛び抜けて高い。この背景としては、ストック面ではシンクタンク数、人口あたり公衆電話施設数、情報サービス業事業所比率、情報サービス業従業者比率などの指標が高いこと、フロー面では人口あたり情報サービス業の年間売上高、人口あたり郵便引受数、人口あたり加入電話総発信数などが飛び抜けて高いことなどが寄与している。 
 一方、沖縄、九州、東北、四国の4管内が全国平均を下回っており、その他7管内では2位の北陸管内以下には大きな格差は認められない。北陸管内、信越管内、中国管内といった地域が比較的高いのは、世帯あたりの衛星放送の加入率やラジオ・テレビ放送契約数、衛星放送受信装置所有率、人口あたりの公立図書館蔵書数などの指標が高いことに起因している。 
 低さが目立つ沖縄管内は、ストックでは衛星放送の契約率や衛星放送受信装置所有率、フローでは全メディアの選択可能情報量や自治体の情報メディアへの取り組み状況などの指標が低くなっている。 
 

  

図表4−7 情報活力指数・ストック&フロー管内間比較(95年) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
 

4.3 郵便局のポテンシャル

4.3.1 郵便局活用の考え方

 地域活力指数では、郵便局が地域の交流拠点や情報化拠点として機能すると想定し、「郵便局数/人口」を郵政指標として取り挙げ分析を行っている。具体的には、 
@郵便局が地域コミュニティの活動拠点として機能するとの想定から「郵便局数/人口」を交流活力指数のストック指標として採用し、また、 
A郵便局が地域情報化の拠点施設として機能するとの想定から「郵便局数/人口」を情報化活力指数のストック指標として採用し、それぞれの指数がどのように変化するかについて分析を行った。 

4.3.2 郵便局活用による影響

@交流活力指数(ストック) 
 郵便局が地域コミュニティの活動拠点として機能するとした場合、北海道管内、東北管内、信越管内、北陸管内、中国管内、四国管内、九州管内の交流活力指数が相対的に上昇した。一方、東京管内をはじめ、関東管内、東海管内、近畿管内の大都市圏では地方管内の上昇により相対的に交流活力指数が低下し、全体にみて地方と都市部との格差が縮小する結果となった。また、沖縄管内は人口あたりの郵便局数が少ないため、相対的に低下する結果となった。 

  

図表4−8 郵便局活用による交流活力指数(ストック)の変化(管内別) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
図表4−9 郵便局活用による交流活力指数(ストック)の変化(管内別) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  北海道  東北  関東  東京  信越  北陸  東海  近畿  中国  四国  九州  沖縄 
標準ケース (A) 0.016  ―0.312  0.130  2.229  0.174  ―0.304  0.355  0.472  ―0.158  ―0.406  ―0.396  0.216 
郵便局活用(B)  0.047  ―0.238  0.008  1.826  0.219  ―0.220  0.244  0.360  ―0.027  ―0.301  ―0.305  0.062 
差(B―A)  0.031  0.074  ―0.122  ―0.403  0.045  0.083  ―0.111  ―0.112  0.131  0.105  0.091  ―0.155 
 
図表4−10 郵便局活用による交流活力指数(ストック)の変化分(管内別) 
 

A情報化活力指数(ストック) 
 郵便局が地域情報化の拠点施設として機能するとした場合も同様に、北海道管内、東北管内、信越管内、中国管内、四国管内、九州管内の情報化活力指数が相対的に上昇するが、交流活力指数に比べるとその影響度合いはやや小さい。 
 図表4−8、4−9で示した郵便局活用の効果を地図にして色分けしてみたのが4−10、4−11である。 
 まず、交流活力指数の変化でみると、中国管内と四国管内で最も交流活力が高まり、次いで東北管内、北陸管内、九州管内など地方管内へのプラスの影響が大きい。地方管内の全国との格差が相対的に縮まる結果、東京管内、関東管内、東海管内、近畿管内では交流活力の突出度合が相対的に低下する。 
 次に情報化活力指数の変化をみると、中国管内、四国管内、九州管内の情報化活力が最も高まり、次いで北海道管内、東北管内、信越管内内のプラスの影響が大きい。一方、関東管内、東京管内、東海管内、近畿管内では情報化活力が相対的低下し、特に東京管内の低下が大きい。 
 全般に、大都市管内の情報化活力が相対的に低下し、地方都市の情報化活力が高まるという結果が示されている。 

  

図表4−11 郵便局活用による情報化活力指数(ストック)の変化(管内別) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
図表4−12 郵便局活用による情報化活力指数(ストック)の変化(管内別) 
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ) 
 
  北海道  東北  関東  東京  信越  北陸  東海  近畿  中国  四国  九州  沖縄 
標準ケース(A)  ―0.232  ―0.016  ―0.074  2.455  0.425  0.552  0.098  ―0.219  0.335  ―0.117  ―0.471  ―1.103 
郵便局活用(B)  ―0.188  0.015  ―0.149  2.134  0.438  0.543  0.037  ―0.246  0.392  ―0.063  ―0.396  ―1.109 
差(B―A)  0.044  0.031  ―0.074  ―0.321  0.013  ―0.009  ―0.062  ―0.027  0.057  0.055  0.074  ―0.006 
 
図表4−13 郵便局活用による情報化活力指数(ストック)の変化分(管内別) 
 
図表4−14 郵便局を交流活力指数(ストック)に取り込んだケース【管内別】  
図表4−15 郵便局を情報化活力指数(ストック)に取り込んだケース【管内別】  

おわりに

 本調査は、生活者の豊かさを主体別に試算することにより、誰にとって住み良い地域なのかという視点を重視した。また、経済活動のみで評価されがちな地域の活力についても、行政、交流、情報化といった様々な分野からも評価できるよう試みた。そのために、生活者活力指数においては280の指標を、地域活力指数においては93の指標を採用し、地域の豊かさを多面的に捉えるよう努めた。また、指標を採用する際には、豊かさの質をあらわすことが可能な指標や地域のダイナミックな動きを反映できる指標の抽出に努めた。 
 以上のように、本調査では生活者活力指数と地域活力指数の2本立てで地域の豊かさを試算し、かつ、生活者活力指数においては主体別に豊かさの違いを評価してみるという、既存の調査にはみられない特徴的な分析を試み、一定の成果を納めることができたといえる。しかしながら、試算結果は採用される指標に大きく影響され、また、定性的な豊かさをいかに定量的なデータを用いて分析を行うかという問題点は依然として残されており、今後の研究においては指標の精査や豊かさの質を評価できる指標の入手、開発に努めていくことが課題となっている。 
 
 

<参考文献>

90年 都道府県別「暮らしやすさ」指標 日経産業消費研究所
90年 北海道生活指標(HSI) 北海道
90年 東京が豊かで地方が貧しいか 日本開発銀行設備投資研究所
91年 国民生活指標(NSI) 経済企画庁
91年 幸せライフ IN NIPPON 地域活性化センター
92年以降 新国民生活指標(PLI) 経済企画庁
92年 都市の幸福度に関する調査研究 都市文化振興財団
92年 全国111都市の暮らしやすさ度 日経産業消費研究所
92年 全国661都市豊かさランキング THE21(PHP研究所)
92年 47都道府県別生活大国度ランキング THE21(PHP研究所)
93年 都道府県別「暮らしやすさ」指標 日経産業消費研究所
96年 埼玉県生活指標 埼玉県 、 社会開発研究所
96年 指標でみる千葉県 千葉県
96年 佐賀県豊かさ指標 佐賀県
96年 沖縄県社会指標 沖縄県、 沖縄計画研究所
93年 環境にやさしい都市ランキング THE21(PHP研究所)
93年 老人にやさしい都市、つめたい都市 THE21(PHP研究所)
94年 サラリーマンにやさしい都市 THE21(PHP研究所)
94年 女性にやさしい都市 THE21(PHP研究所)
95年 女性の地位指標 労働問題リサーチセンター
92年 四国の都市比較 徳島経済研究所
92、95年 新潟県市町村別経済力と住みよさの比較 ホクギン経済研究所
93年 名古屋市社会指標 名古屋市
 
 
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