郵政研究所月報
1998.8
「地域の豊かさ指標」に関する調査研究第三経営経済研究部主任研究官 植野 大作
[要約]
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第1章 豊かさ指標にかかわる先進事例の研究1.1 90年以前の既往研究地域の特徴や魅力を経済的要因で捉えるのではなく、経済外的な要因も取り入れて評価しようとの試みは、古くは1960年代にもみられる。1961年には当時大阪市立大学の原田教授が都市の魅力項目として10項目を掲げ、単純積算による都市の比較分析を行っている。先駆的な研究といえるが、今日重視されている生活者からの視点は重視されておらず、かなり個性的な指標を採用している。また、1970年には当時千葉大学の清水教授が大都市企画主幹会議からの委託を受け、6つの指標と30データの数値化から成る「魅力度体温計」という測定法で評価を実施している。ただし、文化環境指数として都市の文化的側面の評価を取り入れているが、全体としてはやや経済偏重の指標選択となっている。
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1.2 90年以降の既往研究生活者の視点に立ち、地域の住み良さといった生活の質を計量的に評価しようとの試みは、特に90年代に入り活発化している。契機となったのは、1991年に経済企画庁が国民生活白書の中で発表した各県別の国民生活指標(NSI)である。それ以前にも、日本経済新聞社や日本開発銀行設備投資研究所が都道府県別の暮らしやすさ指標などを対外的に公表してきたが、国が全国47都道府県を指標によりランキングしたとあって、全国的に大きな反響を読んだ。その後、様々な地域特集を掲載する著名な雑誌が、毎年のように「住みやすさによる都道府県別ランキング」を発表するに至り、地域別の「豊かさ指標」づくりに様々な機関や団体が取り組み始めている。自治体自ら指標開発に取り組んでいるところはまだ多くはないが、経済企画庁の発表したランキングで下位に甘んじた自治体の中には、汚名をはらすために独自の指標開発に乗り出したところもある。豊かさ指標の開発が活発化した背景には、主に2つの理由が挙げられよう。 まず「受け手側」の関心の高まりである。経済企画庁がNSIを発表したインパクトもあろうが、物質的な豊かさが満たされた結果、人々は「生活の質の向上」に対しより関心を払うようになっている。一般に「快適さ」という概念で捉えられている「アメニティ」という言葉も、80年代から90年代初頭にかけて流行した。また、国が「生活大国5か年計画」を閣議決定したのも92年である。こうした潮流を受け、それまで経済発展を第一の目標に掲げてきた地域も、生活者の視点からの地域づくりに方向転換せざるをえなくなり、「豊かさ指標」に敏感に反応するようになってきた。 次に、「指標の開発側」の関心の高まりも挙げられよう。既往研究事例は数多くあっても、万人が納得する豊かさ指標を開発することは不可能である。また、「豊かさ」の概念が高度化するほど指標の開発には困難が伴う。例えば「豊かさ」を生活の質、つまり「快適さ」と捉えるとしよう。従来は、「快適さ」は主として日常生活における利便性や安全性の確保、地域文化や自然環境の豊かさ、居住条件の良さなどを意図していた。しかし、物質面での豊かさがますます高まり、ライフスタイルが多様化・個性化する中で、「多様な価値観への許容」、「選択機会の多さ」、「精神的ゆとり」など、日常生活に求められる快適さも多様化、高度化している。 このように、そもそも計量化するには困難な「生活の質」をいかに客観評価するか、という課題には1つの解が与えられるものではない。地域の生活実感に近い指標を開発できるかどうかは指標開発者の創意工夫によるところが大きく、様々な指標開発が活発化している理由であると考えられる。 図表1−2は、こうした90年代の既往研究事例を一覧表にして示したものである。 |
No. | 年度 | 調査 | 実施主体 | 備考 | |
総合分野 | 1 | 90 | 都道府県別「暮らしやすさ」指標 | 日経産業消費研究所 | |
2 | 90 | 北海道生活指標(HSI) | 北海道 | ||
3 | 90 | 東京が豊かで地方が貧しいか−地域カルテ | 日本開発銀行設備投資研究所 | ||
4 | 91 | 国民生活指標(NSI) | 経済企画庁 | ||
5 | 91 | 幸せライフ IN NIPPON | 地域活性化センター | ||
6 | 92 | 新国民生活指標(PLI) | 経済企画庁 | ||
7 | 92 | 関西における都市アメニティ度評価とその向上に関する調査報告書 | 関西産業活性化センター | ||
8 | 92 | 都市の幸福度に関する調査研究 | 都市文化振興財団 | ||
9 | 92 | 情報化未来都市システムの調査・開発 | ニューメディア開発協会 | ||
10 | 92 | 全国111都市の暮らしやすさ度 | 日経産業消費研究所 | ||
11 | 92 | 全国100都市実力ランキング | THE21(PHP研究所) | ||
12 | 92 | 全国661都市豊かさランキング | THE21(PHP研究所) | ||
13 | 92 | 47都道府県別生活大国度ランキング | THE21(PHP研究所) | ||
14 | 93 | 新国民生活指標(PLI) | 経済企画庁 | ||
15 | 93 | 都道府県別「暮らしやすさ」指標(男女別、年齢別、地域別) | 日経産業消費研究所 | ||
16 | 93 | 全国100都市実力番付 | THE21(PHP研究所) | ||
17 | 94 | 新国民生活指標(PLI) | 経済企画庁 | ||
18 | 95 | 新国民生活指標(PLI) | 経済企画庁 | ||
19 | 96 | 新国民生活指標(PLI) | 経済企画庁 | ||
20 | 96 | 埼玉県生活指標 | 埼玉県、 社会開発研究所 | ||
21 | 96 | 指標でみる千葉県 | 千葉県 | ||
22 | 96 | 佐賀県豊かさ指標 | 佐賀県 | ||
23 | 96 | この街に住みたい(都市の総合実力マップ) | 週刊ダイアモンド | ||
24 | 96 | 沖縄県社会指標 | 沖縄県、沖縄計画研究所 | ||
特定分野 | 25 | 93 | 環境にやさしい都市ランキング | THE21(PHP研究所) | |
26 | 93 | 老人にやさしい都市、つめたい都市 | THE21(PHP研究所) | ||
27 | 94 | サラリーマンにやさしい都市 | THE21(PHP研究所) | ||
28 | 94 | 女性にやさしい都市 | THE21(PHP研究所) | ||
29 | 95 | 女性の地位指標 | 労働問題リサーチセンター | ||
特定地域 | 30 | 92 | 四国の都市比較 | 徳島経済研究所 | |
31 | 92 | 新潟県市町村別経済力と住みよさの比較 | ホクギン経済研究所 | ||
32 | 93 | 名古屋市社会指標 | 名古屋市 | ||
33 | 95 | 新潟県市町村別経済力と住みよさの比較 | ホクギン経済研究所 |
(備考)○:報告書で事例を紹介、◎:報告書で時系列的に事例を紹介、◇:指標データ一覧を作成している。
(注)「特定地域」とは“四国”や“新潟県”などの特定のエリアの都道府県或は市町村を対象に実施した調査。 |
第2章 豊かさ指標開発における考え方とデータ加工の方法2.1 本研究における豊かさの概念と指標体系2.1.1 豊かさとは本研究では、「豊かさ」とは「暮らしやすさ」であると考える。すなわち、家族と一緒に日常生活を送る上で、仕事をする上で、個人が自らの価値観に基づいて自己実現を図る上で快適であることを意味するものとする。また、PLIでは「経済的要因を重視しない」立場をとっているが、本研究では生活していく上では経済的基盤は無視できないとの立場から、「経済的要因」も取り込むものとする。特に、個人としての所得だけではなく、住んでいる地域が財政的に豊かかどうかは、高齢化社会を迎えるにあたり重要な要因になると考えられる。 2.1.2 本研究における豊かさの指標体系地域の豊かさは採択する統計データにより結果が異なるため、「地域の豊かさを測る指標」の概念整理が最も重要となる。ここでは、以下の考え方から「地域の豊かさ指標」を表す指標を大きく2つの切り口から捉えることを提案している。@生活主体者からの視点(生活者活力指数)
A地域全体の活力の視点(地域活力指数)
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図表2−2 生活者活力指数による豊かさ指標で採用したデータ系列数
図表2−3 地域活力指数による豊かさ指標で採用したデータ系列数
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2.2 指標を試算する際の基本的方針本研究では「豊かさ指標」の試算・分析において以下の点に留意するものとする。@.地域の経済外要素であるアメニティを多面的に捉える指標とする
A.客観指標の単位に留意
B.解釈が曖昧なデータは不採用
(例)
C.行政で対応不可能な指標については要検討
D.郵便局のポテンシャルに関する試算
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2.3 指標化の手法2.3.1 客観的データの指標化の方法本調査の指標体系は図表2−4のとおりで、レベル1からレベル3へと統合化する。2.3.2 指標の統合化の方法まず、レベル1の指標値(統計データ、または原データ)は単位が異なるデータで表現されている上、各統計間での数値の大きさやバラツキがまちまちである。そのため、指標間の相互比較が可能となるよう、それぞれ平均と分散をそろえて標準化を図る。標準化された原データ=(個別の原データ−全国平均値)/標準偏差 次に、各指標ごとにプラス指標(指標値が大きくなるほど豊かさに寄与する、あるいは水準が高いと評価される場合はプラス)、マイナス指標(指標値が小さいほど豊かさに寄与する、あるいは水準が高いと評価される場合はマイナス)を決定する。
こうして算出された指数は、全国平均を0とし、当該地域がそれよりも低い水準にある場合はマイナス、高い水準にある場合はプラスとなる指標として再構築される。 |
第3章 生活者活力指数3.1 生活者活力指数の体系生活者活力指数では、6つの生活主体者別指数、5つの行動分野別指数を設定して、それぞれの豊かさについて試算を行った。3.1.1 生活主体者別指数の考え方@共通指数
A子ども指数
B若者指数
C大人(女性)指数
D大人(男性)指数
E高齢者指数
3.1.2 行動分野別指数の考え方行動分野は、次のようなサブ・カテゴリーによって構成されている。@住む・暮らす
A働く
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3.2 生活主体者別指数の試算結果3.2.1 生活主体者別指数の結果総括2章及び3章1節に示した方法に基づいて試算した主体別指数は以下のような結果となった。まず「共通指数」についてみると、東京管内が大きな差をつけて高い。「共通指数」で東京管内が高いのは、施設集積の諸指標(面積あたりの利用施設数)において大きな差をつけており、それが指数を押し上げているためである。東京管内は「大人(女性)指数」「大人(男性)指数」「高齢者指数」では下位であるが、それには地価や家賃の高さなど、利便性故のマイナス条件が影響している。その他の主体別では、「若者指数」では北陸管内、「大人(女性)指数」、「大人(男性)指数」、「高齢者指数」では信越管内が高くなっている。信越管内は、「大人(女性)指数」「大人(男性)指数」「高齢者指数」で高い。これは、住居関連(持ち家率など)、就職率、成人学校講座受講者数などの指標が寄与している。 北陸と信越が多くの指数で上位にあるが、これらの管内は住居関連や機能集積などでゆとりがあるほか、通勤時間や学習時間などが高いなど時間的なゆとりも比較的高いことなどから、各主体で手堅く得点して平均以下となる領域が少ないためである。また、中国管内及び四国管内も、総じて全国平均以上の分布となっている。 (単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
3.2.2 生活主体者別指数の管内間比較@共通指数
A子ども指数
B若者指数
C大人(女性)指数
D大人(男性)指数
E高齢者指数
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3.3 行動分野別指数の試算結果3.3.1 行動分野別指数の結果総括「交わる・興じる」以外の行動分野では、東京管内が大差をつけて高い。これは、施設や機能の集積に関する諸指標を中心に得点が高いことに起因する。「交わる・興じる」では、情報集中度(郵便物引き受け数、加入電話総発信量など)で東京管内が高く、その他上位の地方管内は人口あたりの施設容量(県民文化会館等収容定数、キャンプ場の数など)が高いことに起因して、上位にランクされている。 (単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
3.3.2 行動分野別指数の管内間比較@住む・暮らす
A働く
B学ぶ
C安らぐ・生きる
D交わる・興じる
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3.4 郵便局のポテンシャル3.4.1郵便局活用の考え方郵便局は他の多くの施設と比較して、人口が少ない地域にもその分布があり、利便施設として重要な役割を果たしている。そこで、生活者活力指数では「郵便局数/人口」を取り上げ、郵便局が将来、地域における拠点ネットワークを生かし、 @.ワンストップ行政の窓口(「住む・暮らす」への貢献)
といった視点で様々な生活分野で機能を果たした場合に、各管内の豊かさにどのような貢献をしうるかを試算した。
3.4.2 郵便局活用による影響(管内別比較)地方管内では、中国、九州、四国、東北、信越を中心にプラスに働く。特に東京管内では、地方管内の上昇によって突出度が低下する。つまり、郵便局活用により、相対的に東京管内が低下するのに対して地方管内が上昇し、管内間の格差が縮まる。郵便局活用による共通指数の変化量だけを取り出してみると、多くの地方管内ではプラスに寄与し、東京管内を中心とした大都市圏を含む管内では相対的にマイナスとなることが鮮明になる。 (単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
3.4.3 郵便局活用による影響(都道府県別比較)都道府県別では、島根、高知、鹿児島などの相対的上昇度合が大きい。郵便局活用により、共通指数の47都道府県の最大格差は1.63σから、1.55σへと縮小した郵便局が将来、生活の多様な分野において機能することにより、地域間格差を是正する役割を果たしうる可能性が示されている。 |
第4章 地域活力指数4.1 地域活力指数の体系地域活力指数は4つの分野を設け、各分野ごとにストックとフローに区別して指標を構成し、それぞれの豊かさについて試算を行った。地域活力指数は、経済活動や住民生活を行う上での基盤整備の状況や経済社会のダイナミックな動き、あるいは地域のポテンシャルを表すことを目的としており、以下の4分野にわたる指数で構成されている。 @経済活力指数
A行政活力指数
B交流活力指数
C情報化活力指数
4.2 地域活力指数の試算結果4.2.1 地域活力指数の結果総括ストックとフローを合わせた地域活力指数でみると、全ての活力面で東京管内が最も高くなっている。特に、交流活力と情報化活力では他地域を大きく上回る結果となった。指数別にみると、経済活力指数では東京管内に次いで北陸管内、信越管内が高く、最も低いのは沖縄管内となっている。全国平均を下回っている管内は5つ存在するが、中でも沖縄管内が全国平均を大きく下回っている。 行政活力指数では、やはり東京管内に次いで北陸管内が高くなっている。また、経済活力指数では11位、12位と下位、最下位に位置していた北海道管内と沖縄管内が、行政活力指数ではそれぞれ3位、5位と上位に位置しており、経済活力の低い地域に行政支援が手厚くなっていると推察される。 交流活力指数では、東京管内に次いで、近畿管内、沖縄管内、東海管内、関東管内と続いており、沖縄を除き大都市圏が上位に位置している。 情報化活力指数では、東京管内に次いで北陸管内が高い。北陸管内は交流活力指数を除き、全ての活力面で東京に次いで高いパフォーマンスを示している。 地域活力をストック面からみると、経済活力指数を除いては東京管内が最も高くなっている。北陸管内は持ち家比率や一住宅あたり延べ床面積、人口当たりの金融機関店舗数などの経済活力指数が高く、この分野では東京管内を上回っている。行政活力指数では、東京管内に次いで北海道管内と沖縄管内が高くなっているが、両道県の行政活力指数のフローは下位にあることから、ストックでの高さが先のストック&フロー全体でみた行政活力指数の高さに寄与していることがわかる。交流活力指数では、東京管内に次いで近畿管内、東海管内といった大都市圏が続き、沖縄管内が4位に入る。情報化活力指数は、東京管内に次いで、北陸管内、信越管内が高くなっている。 地域活力をフロー面からみると、行政活力指数を除いては東京管内が最も高くなっている。北陸管内は、選挙の投票率や一人あたり地方債発行額、一人あたり地方交付税額などの行政指標が高く、この分野では12管内中最も高くなっている。沖縄管内は全般に低いパフォーマンスとなっているが、交流活力指数においてはストック、フロー共に高く、特にフローでは東京管内に次いで高くなっている。これは、ストックでは面積あたり空港数、フローでは人口あたり国内線発着便数、航空旅客輸送人員といった航空関連指標が高いことに起因している。 (単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
4.2.2 地域活力指数の管内間比較以下では、ストックとフローを合わせた地域活力指数について、その試算結果を図示し、簡単な解説を加える。@経済活力指数
A行政活力指数
ストックとフローを合計した交流活力指数では、東京管内が最も高く、次いで近畿管内、沖縄管内、東海管内となっているが、東京管内と2位以下の他管内との格差は非常に大きく、交流活力指数においては全国の中でも東京が飛び抜けて高い水準にあるといえる。 東京管内では貿易事務所比率、面積あたり空港数や新幹線駅数、一日交流可能面積比率などのストック指標が高いほか、フローにおいても人口あたり鉄道旅客輸送人員、コンベンション開催数、外国人の訪問率などことが高い。 近畿管内は大阪府が、東海管内は愛知県が大半の指標において高い水準を示しており、管内全体の水準を引き上げている。 沖縄管内は面積あたりの空港数の指標が全国において極めて高い水準にあることが寄与しているほか、人口あたり国内線発着便数や航空旅客輸送人員の指標が高い。ただしこれには、離島が散在する性格上、交通手段として空路が発達せざるを得ないとう面もあると考えられる。 また、経済活力指数、行政活力指数、情報化活力指数ではストックとフローでかなり管内格差の状況に違いが認められたのに対し、交流活力指数はストックとフローでみた場合の管内格差の状況が似通っている点が特徴としてあげられる。これは、飛行機、新幹線、自動車という3つの交通モードにおいて、それぞれ飛行場数と離発着便数といったような対応関係でハードとソフトの指標を採用していることも起因していると考えられる。
C情報化活力指数
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4.3 郵便局のポテンシャル4.3.1 郵便局活用の考え方地域活力指数では、郵便局が地域の交流拠点や情報化拠点として機能すると想定し、「郵便局数/人口」を郵政指標として取り挙げ分析を行っている。具体的には、@郵便局が地域コミュニティの活動拠点として機能するとの想定から「郵便局数/人口」を交流活力指数のストック指標として採用し、また、 A郵便局が地域情報化の拠点施設として機能するとの想定から「郵便局数/人口」を情報化活力指数のストック指標として採用し、それぞれの指数がどのように変化するかについて分析を行った。 4.3.2 郵便局活用による影響@交流活力指数(ストック)郵便局が地域コミュニティの活動拠点として機能するとした場合、北海道管内、東北管内、信越管内、北陸管内、中国管内、四国管内、九州管内の交流活力指数が相対的に上昇した。一方、東京管内をはじめ、関東管内、東海管内、近畿管内の大都市圏では地方管内の上昇により相対的に交流活力指数が低下し、全体にみて地方と都市部との格差が縮小する結果となった。また、沖縄管内は人口あたりの郵便局数が少ないため、相対的に低下する結果となった。
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
A情報化活力指数(ストック)
(単位:±全国からの乖離/標準偏差σ)
おわりに本調査は、生活者の豊かさを主体別に試算することにより、誰にとって住み良い地域なのかという視点を重視した。また、経済活動のみで評価されがちな地域の活力についても、行政、交流、情報化といった様々な分野からも評価できるよう試みた。そのために、生活者活力指数においては280の指標を、地域活力指数においては93の指標を採用し、地域の豊かさを多面的に捉えるよう努めた。また、指標を採用する際には、豊かさの質をあらわすことが可能な指標や地域のダイナミックな動きを反映できる指標の抽出に努めた。以上のように、本調査では生活者活力指数と地域活力指数の2本立てで地域の豊かさを試算し、かつ、生活者活力指数においては主体別に豊かさの違いを評価してみるという、既存の調査にはみられない特徴的な分析を試み、一定の成果を納めることができたといえる。しかしながら、試算結果は採用される指標に大きく影響され、また、定性的な豊かさをいかに定量的なデータを用いて分析を行うかという問題点は依然として残されており、今後の研究においては指標の精査や豊かさの質を評価できる指標の入手、開発に努めていくことが課題となっている。 <参考文献>
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