81 1995年7月

『公的施設の評価に関するサーベイ』

                              主席研究官付研究官 野崎 英司
  1.  公的施設の評価は、サービス提供に対して対価を伴うものであれば、事業採算性を基準としたものとなろうが、それは施設設置主体の会計的な内部評価という側面が強く、利用者や地域社会など外部からの評価(社会的・公的評価)とは必ずしも一致しない。また、サービス提供に対して対価を伴わないものであれば、その評価は利用者や地域社会などからの評価によることのみとなろう。
  2.  このような公的施設の適切な配置等を図るために、社会的な評価は極めて重要であることから、その方法論について検討することとし、具体的には、経済学、社会学、都市計画論の3分野についてサーベイした。
  3.  経済学では、公共財の最適配分の議論が理論的なものとしてあるが、計量的な分析はなされていないところであり、今後の開発が望まれる。また、費用・便益分析は、社会的な効果・影響を含めて分析できるところから有効である。
  4.  社会学では、地域社会学(農村社会学、都市社会学)やコミュニティの社会学が、地域やコミュニティを分析する方法としてあり、社会的関係性により公的施設を分析しうるものである。これらは、公的施設の役割、機能を明らかにすることについては、有効と考えられるが、評価方法論については明確な視点を持ってはいない。
  5.  都市計画論は、公的施設の最適設置等について研究が進んでおり、新たに公的施設を設置するとき、あるいは現在の公的施設配置が望ましいものであるかについては、有益なものである。
  6.  公的施設の社会的な評価方法については、上記の3分野の研究成果を踏まえ、計量的な評価を行うための方法論等につき、さらに検討すべきものと考えられる。