No.99 1996年12月

高度情報通信社会に向けた我が国行政改革の取組みとその課題

                   主席研究官付主任研究官    木村 順吾

 本稿は、規制緩和、省庁・公務員制度改革、情報公開、地方分権といった個別目標を統一するとともに、行政改革の手順と具体像を明らかにする試みとして、高度な情報通信技術を活用した行政業績改善について、若干の考察を行うものである。
 先ず、第1章では、我が国の行政情報化の取組みについて概観している。米国では、アル=ゴア副大統領が政治的指導力を発揮して、NIIのIITF(情報基盤タスクフォース)において個別システムの統合を図ってきたのに対し、我が国では、行政情報システム各省庁連絡会議における事務調整が特徴であるが、高度情報通信社会推進本部によるハイレベルの取組みも始まっている。我が国の行政情報化は、漸く緒についたこともあり現在は行政情報システムの整備が中心となっているが、行政と国民等との間の事務・サービスとを改善するとともに、行政内部における意思の伝達・決定を効率化するためには、情報化に対応した制度・慣行の見直しが必要である。
 第2章では、事務負担軽減のための制度見直しについて採り上げている。高度情報化社会推進本部が制度見直し作業部会報告を了承したことを受けて、各省庁において@書類の電子データによる保存、A申告・申請手続の電子化・ペーパーレス化の積極的な推進が期待される一方、電子化に対応した認証制度の手当てと省庁横断的な法令整備とが求められる。
 第3章では、行政保有情報有効活用のための制度の見直しについて採り上げている。現行の文書閲覧制度の業績を顧みると、行政情報公開法の施行に当たって非法律事項の運用問題として、@行政保有情報の公開方法として利便性の高い電子的提供を推進すべきであり、A公開すべき行政保有情報についてのポジティブな基準の整備とこれに付随する情報管理の問題として電子的書庫や電子化に対応した文書管理規程の整備が必要である。また、必ずしも文書に固定されない将来の政策情報についても、郵政省の公開努力の経験を振り返ると、決定過程の情報公開が重要である。
 以上の考察を踏まえ、最後に、現実的に改革を実行し、且つ、国民が希求する低コストで高機能な行政を実現する観点からは、行政情報化という機能改革アプローチが有効な選択肢の一つであり、政・官一致団結した取組みが必要であることを提言している。