「通信販売事業の特徴と商品政策からみた将来展望」


                           第一経営経済研究部研究官 多田 雅則

1 通信販売の市場規模は16千億円で小売業全体での占有率は1.2%と小さいが、近年の対前年
 伸長率は約14%の増加と他の小売業に比べ高い。

  一昔前までは、必ずしも社会的に認知されていたとはいえない通信販売であるが、現在はコンピ
 ューターの導入により顧客を「個」として取り扱うデータベースマーケティングの様相を呈し、さ
 らに配送の合理化の推進など装置産業化してきている。

  また、多額の先行投資を必要とする通信販売は、売上高総利益率は高いが売上高販売費及び一般
 管理費率も高く売上高営業利益率が2%前後の低収益構造となるため価格訴求のみを武器に戦うこ
 とは困難と考えられる。

2 一方、物の充足・質の向上が達せられた現在の消費者は、物より心の豊かさを求め、教養を高め
 趣味を広げる傾向にある。

  また、高学歴化した消費者は、商品情報の提供の拡充や新しいライフスタイルの提案など流通に
 対する積極的な意見を持つ傾向にある。

3 このような状況のもと通信販売企業は、大きな市場領域を対象に商品個性の小さな商品を販売し
 ていた段階から顧客管理面では、顧客データのコンピュータ管理によるカタログのスペシャル化の
 推進により市場のセグメンテーションを行い、商品政策面では、仕入れ型から開発型への移行によ
 り商品の個性化を進めるという、標的を定めそのニーズにあった商品の開発などによる集中化マー
 ケティングを指向していると考えられる。

4 今後の通信販売市場では、マーケティング戦略が細分化度合いの弱い顧客層をターゲットとし仕
 入れ型の商品政策をとる領域から細分化度合いの強い顧客層をターゲットとし開発型の商品政策を
 とる領域へ移行を示すならば、装置産業的企業のほか、ふるさと小包などの物流主導のオープン型
 の通信販売システムを活用した企業や専門店型のベンチャー的企業などの進出により市場の二極分
 化がみられることになるだろう。