「出版物物流の現状と今後の方向性」


                           第一経営経済研究部研究官 宮尾 好明

1 出版物は年間で書籍が約14億冊、雑誌が約46億冊流通しており、流通量は年々増加してきて
 いる。

  流通経路は出版社から取次を経て書店に流通する書店ルートが全体の7割以上を占めている。

  出版社の約8割が東京に集中しているため、出版物の流れは東京から他方への一方通行になって
 いること、取次では大手2社がシェア7割を超えた寡占体制をしていることが特徴である。

2 書店ルートにおける書店への配送システムは、取次から他方の書店については共同配送システム
 が、大都市の書店については自社配送システムが確立している。

  出版物物流の問題点としては、書籍物流が多品種少量物流であること、雑誌の発行部数が増えて
 供給構造が変化していること、手作業が多く機械化が遅れていることなどがある。

3 特に問題とされているのは、客からの注文本を調達するのに時間がかかり過ぎることであり、そ
 の原因は、書籍は代替性が乏しく、その調達はシングル・オーダー・システムであるのにもかかわ
 らず、それに対応したシステムができあがっていないことである。

  それに対応するため、最近では出版VAN、出版コンビナートなどの改善策が提案されており、
 その他、出版物物流についての様々な改善策が提案され、実行されてきている。

4 出版物物流の改善策を業種間統合に着目して分類すると、複合機能統合型、作業効率化型、新規
 参入型などに分けることができる。

  今後の出版物物流の方向性を考えると、出版物の発売部数の増加、客からの注文本調達システム
 の整備などに対応するために、業界全体でシステムの改善に取り組んでいく必要がある。

  そして、複合機能統合製の改善がなされていくことにより、出版物物流に携わる物流業者の交替、
 再編をも含んだ変化が生じることになると考えられる。