商店街における店舗配置とアクセシビリティ
−品川区大井町駅周辺地区の商店街を事例に−


                              第一経営経済研究部 小倉 信行

1. 商業施設や公的サービス施設などの生活関連施設が集積したものとして、代表的なものに商店街
 があげられる。商店街は地域住民にとって重要なものであるが、近年、商店街の衰退がみられ、流
 通業界のみならず地域社会においても大きな問題となっている。

2. 一般に、商店街の衰退の大きな要因として挙げられているのは、大型店との競争激化であるが、
 商店街が現在抱えている問題を整理すると、大型店との競争激化は二次的要因であり、回遊性の悪
 さといった商店街の内部構造の問題が、商店街の衰退を引き起こす大きな要因と考えられる。そし
 て、この問題は、消費者から見た場合、一つの商店街の中で買回行動が合理的にできるかどうか、
 即ち各商店へのアクセシビリティ(近接性)が高いかどうかの問題として捉えることができ、これ
 に大きく関与している要因として、商店街における店舗配置が考えられる。しかし、商店街の内部
 構造に関するこれまでの調査・研究をみると、商店の店舗配置に関するものは、あまりみられない。

3. そこで、本調査では、品川区大井町駅周辺地区の商店街を事例とし、店舗配置とアクセシビリテ
 ィの関係に焦点をあて、現状の商店街が消費者にとって利便性の高いものとなっているか、を計量
 的に分析した。

4. 分析手法としては、居住地から商業施設・公共施設などの生活関連施設への近づきやすさ(近接
 性)を測定するアクセシビリティ・モデルを適用した。

5. その結果、現状の店舗配置は商店街に来る全ての消費者に対して、必ずしも利便性の高いものと
 はなっていないことが確認された。

6. 現在、我が国では、店舗を計画的に配置しているショッピングセンターの開発が急速に進んでお
 り、商店街においては、今以上に厳しい状況を迎えようとしている。このような中、商店街にとっ
 ては、消費者に対しいかに利便性を高めていくかが課題と考えられるが、その対応方向としては、
 商店街全体を一つのショッピングセンターとして捉えることによって、戦略的視点に基づいた合理
 的な業種構成と適切な店舗配置を実現するために、真剣に取り組むことが不可欠と思われる。