No.63 1994年1月

「加工食品分野におけるジャスト・イン・タイム物流の現状と課題」

 
                        第一経営経済研究部長 安住 透
                研究官 村尾 昇
1 ジャスト・イン・タイム物流は、その進展に伴って、交通渋滞、環境汚染などの深刻化の問題や物流コストの増大によるメーカーや卸売業者の経営圧迫の問題などが指摘されている。このジャスト・イン・タイム物流は、運輸政策審議会答申(平成2年12月)においては、労働力不足の観点からその見直しが必要であるとされ、産業構造審議会・中小企業政策審議会の報告書(平成3年6月)では、非効率なジャスト・イン・タイム物流と、システム化された真の意味でのジャスト・イン・タイム物流とに分けて捉える必要があるとされた。

2 沿革的にはジャスト・イン・タイム物流は、アメリカの食品業界で採用されていた「小口配送」と、我が国の自動車産業における部品の調達方式としての「多頻度配送」の2つの方式をモデルとし、1985年の電気通信の制度改革により、異なる経営主体にまたがる情報通信システムが自由に構築できるようになったことを契機として、それらの本来的に次元の異なる物流形式が結合され成立したものである。

3 郵政研究所では、平成4年、加工食品を例にとり、加工食品問屋、製造業者及びトラック業者を対象にアンケート調査を実施した。この調査結果から、ジャスト・イン・タイム物流を「配送の多頻度化」と捉えれば、それは平均して1日1回であること、また、多頻度配送には「小口」配送と「大口」配送があり、問題にされているのは主として小口で、より本質的には小口化したことにより積載効率が低下していることであること、などが明らかになった。

4 このようなジャスト・イン・タイム物流に対しては社会的・市場的対応として、・環境規制・交通規制など社会的規制の強化、・大手トラック業者による物流システムの再構築、・製造業者による共同配送の推進、が講じられてきた。しかしながら、個々の問屋の配送頻度が1日1回というのは食品としては多すぎるとは言えず、全体として多くなるのは、問屋が流通系列によりメーカー毎に細分化されているためで、また小口化により積載効率が低下したのは、流通簡素化が、貸切り輸送主体のトラック業界の構造の下で進行したためである。従って、・メーカー系列に影響を及ぼす大店法の改正、・全てのトラック業者に積合せ輸送を認める物流2法の制定、・流通圏の広域化を促進する通信料金の遠近格差の是正、がより根本的な制度的対応である。

5 しかし、物流というのは一つの社会システムである。これらの制度的対応が実効的となるためには、物流センター、流通センターなどが国民生活上の「社会資本」として捉えられて整備される必要があり、それを推進する都市計画を核とする強力な地方自治行政が確立していくことが望まれるところである。

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