86 1995年12月

『郵趣の実情とニーズについて』

                           第一経営経済研究部主任研究官 谷  隆宏
  1.  「郵趣」とは、「郵便切手収集趣味」を縮めた言葉として使われているが、単に切手を集めるというだけでなく、「郵便切手などを収集し、観察し、系統づけて研究し楽しむ趣味」と広く考えられている。
  2.  郵趣の振興は、様々な知識の修得、国際親善及び郵便事業発展などに寄与するものとして意義づけられているが、近年における趣味の高度化、多様化により、切手を収集する人の高齢化が進むとともに、ジュニア層が減少する等、郵趣の将来は非常に厳しい状況になってきていることから、今後、郵趣の育成と郵趣層の拡大を図るべく、有効な対応が求められているところである。
  3.  郵政研究所では、このような状況を踏まえ、平成7年3月に、切手や葉書等の需要側及び供給側を対象にそれぞれアンケート調査を実施し、今後のマーケティングに役立つ郵趣の実情とニーズを把握した。
     
    (1) 需要側から見た郵趣の実情  
    過去において郵趣を経験した人は、大人では66.6%、子供では38.5%あり、そのうち、大人は35.8%が、子供は48.9%が郵趣を継続している。
     大人の半数は中学生頃までに、また、子供は10歳頃までに切手を集め始めているが、切手収集期間はと言うと、大人は7割の人が5年未満、子供は8割が3年未満と短くなっている。
     切手収集の経験者とは対照的に、過去に切手などを贈物として贈与したことのある人は、1割程度と低くなっている。
     切手の情報源は、郵便局の窓口及びポスターがほとんどであり、いつ、どのような切手が発行されるのか、一般利用者には十分伝わっているとは言えない状況にある。  
    (2) 供給側から見た郵趣の実情   
    切手商の売上高規模は、4割が1〜3千万円未満と小規模であり、しかも、郵趣品は切手商の売上げのメインとはなっていない。郵便局では、特殊切手の売上高は、切手収入に対しては9.3%、総収入に対しては2.5%となっている。
    顧客層は、切手商、郵便局ともに、数年前と比べ、年齢層は高くなり、子供及び固定客は大幅に減少している。  
    (3) 郵趣に対するニーズ  
    郵趣に対するニーズとしては、切手のテーマの工夫に対するものが最も多く、次いで、アイディア商品の開発、シート当たりの枚数の見直し、発行回数の見直しの順となっており、投資効果に対するニーズは少なくなっている。

  4.  今後、郵趣を育成し、郵趣層を拡大するために検討すべき方向性としては、切手のテーマの工夫やアイディア商品の開発を行うとともに、テレビ等のマスメディアを活用したPR及び供給側の取組強化が必要であると言える。