No.89 1996年3月

物流のトータルサービスの動向について

                         第一経営経済研究部主任研究官 谷  隆宏
  1.  最近、商品の受注から配達、代金回収までの物流サービスを一貫して提供するトラック輸送会社が増えてきている。これは、物流部門のコストを削減したいとする荷主側の要望と、競争が激化する中で生き残るために付加価値の高い物流のサービスを提供しようとする運送会社の要望が合致してできたサービスであると言える。

  2.  物流のトータルサービスとは、トラック運送会社が商品の「受発注管理」、「保管」、「流通加工」、「仕分け」、「輸送・配達」、「代金回収」など小売業等個別企業から最終消費者に商品が届けられるまでの全工程における作業を一貫して提供するサービスである。

  3.  物流のトータルサービスの提供側である大手のトラック運送会社においては、情報処理システムを荷主と共同で開発するなど特定の企業と提携して運営しており、事業規模が大きく、機械化も進んでいる。

  4.  一方、物流のトータルサービスの需要側である小売業等企業においては、今回実施したアンケートでは、回答企業の半数の企業が自社の物流業務を部外に委託している。委託業務内容としては、「保管」が61.1%と最も多く、次いで「包装・梱包」が58.4%、「仕分け」が55.7%、「在庫管理」が51.4%、「検品」が50.3%、「代金回収」が48.1%などとなっている。部外に物流業務を委託する理由としては、「専門業者に任せた方が効率が良い」とするのが64.2%と最も多く、次いで「コスト削減のため」が48.7%、「一括して任せた方が手間が省ける」が37.4%などとなっている。

  5.  物流のトータルサービスの今後の動向としては、物流業界全体が「総合物流業」を指向する動きにあり、各運送会社とも取組みを強化してきていることから市場規模は年々拡大していくものと想定される。