郵政研究所月報

1998.10


調査・研究

郵便事業に関する産業連関分析


元第一経営経済研究部主任研究官    山浦 家久

[要約]

1 郵便事業分析用産業連関表の作成

 

 総務庁作成の「産業連関表」など各種統計資料等により、「郵便事業分析用産業連関表」の作成を行った。対象年次は平成2年及び平成6年、産業を「郵便事業」「郵便周辺産業」「その他の産業」に分け、さらに、「郵便周辺産業」を「郵便大口利用産業」「郵便大口利用者支援産業」「郵便ユーザー支援産業」「郵便業務支援産業」に分けた部門分類を行った。

2 郵便事業分析用産業連関表に基づく分析結果

(1) 郵便事業の需要構造
 郵便事業と最終需要との関係
郵便事業の民間消費支出に対する生産誘発依存度は平成6年で60.7%と産業平均(48.9%)よりも高く、郵便事業は民間消費支出に強く依存した需要構造である。 
 郵便需要の変化に関する変動要因
平成2年から平成6年にかけての郵便需要の変化については、郵便需要の85.6%を占めるサービス部門は、郵便投入量の増加が45.5%、生産規模の拡大が37.2%である。また、14.4%を占める物財部門については、郵便投入量の増加が23.1%、生産規模の拡大が△7.5%であり、サービス・物財部門共郵便投入量が生産規模よりも大きな増加要因となっている。
(2) 郵便事業の他産業への影響
 郵便料金改定の価格波及効果
郵便料金改定の影響は、変動幅を100%とすると、産業平均については0.47%(平成2年)及び0.55%(平成6年)、家計(民間消費支出)については0.38%(平成2年)及び0.44%(平成6年)とかなり小さい。
 郵便事業の生産波及効果
郵便事業の生産波及効果を生産誘発係数でみると、平成2年は1.25、平成6年は1.24と小さい。また、波及先の産業の国内生産額に占める割合をみても、産業平均で0.23%(平成2年)及び0.29%(平成6年)とかなり小さい。
(3) 郵便周辺産業の他産業への影響
 郵便周辺産業が郵便事業及びその他の郵便周辺産業に与える影響
郵便事業は商業の生産活動に最も依存し、メーリングサービス業、DM広告業、便箋・封筒等紙製品製造業などの郵便周辺産業も、商業に強く依存している。
 通信販売業、DM広告業の郵便事業及びその他の郵便周辺産業に与える影響
通信販売業の生産誘発を受ける産業は、印刷・製版・製本、広告、運輸などで、DM広告業の生産誘発を受ける産業は、郵便事業、印刷・製版・製本、出版などである。

本調査研究については、清水雅彦慶應義塾大学経済学部教授兼産業研究所長(郵政研究所特別研究官)と池田明由早稲田大学社会科学部助教授の御指導を仰いだ。記して謝意を表します。 Return

 

1 はじめに

1.1 研究の趣旨

 国民経済を構成する各産業部門は、相互に取引関係を結びながら生産活動を営み、複雑な相互依存関係の網の目を通じてつながっている。

 ある産業の生産活動は、一方では他産業の生産活動の動向に左右されるとともに、他方、他産業の生産活動の動向に影響を及ぼしている。

 今回の調査研究の目的は、産業連関分析の手法を用いて、生産額がおよそ2兆円を超える郵便という事業が、他産業からどのような影響を受けているかを分析するとともに、また、郵便事業が他の産業にどのような影響を及ぼすかについて分析することである。特に、今回の分析では、郵便事業と密接不可分な通信販売業、メーリングサービス業などの、いわゆる郵便周辺産業と郵便事業との相互依存関係を計量的に分析しようとするものである。

 既に、産業連関表を用いて郵便事業を分析したものとしては、『電気通信の郵便に与える影響』の中で行った郵便と国内電気通信の投入比率の時系列的変化を、昭和55年、昭和60年、平成2年、平成4年、の4時点で分析した研究がある。

 この研究では、@国内電気通信の投入比率は上昇傾向にあるのに対して、郵便の投入比率は安定的であること、A郵便と国内電気通信の投入比率が共に上昇している産業に郵便需要が集中する傾向にあるという分析結果が得られている。

 本研究では、郵便事業について、上記の分析に引き続いて、新たに「郵便事業分析用産業連関表」を作成し、これに基づき、代表的な産業連関分析の手法を用いて、郵便事業と他産業、特に郵便周辺産業との相互依存関係の分析を行おうとするものである。

1.2 産業連関表の形態

 産業連関表は、一定期間(作表対象としての期間は1年間)の各産業の投入・産出という取引過程を経て行われる生産活動の実態を総体的に表した表であり、一国の産業構造を一覧表の形で表した表である。

 我が国の「産業連関表(基本表)」については、行が約400部門、列が約500部門設定し、西暦年の末尾が0又は5となる年を対象として、総務庁をとりまとめ省庁とし、関係省庁(現在は11省庁)の共同事業として作成されている。作表は昭和30年表から開始され、現在、平成2年表が最新版である。

 なお、郵政省では昭和50年表から産業連関表の作成事業に参画している。

 ほかに、「産業連関表(基本表)」を基に、各省庁及び各地方自治体では、独自に産業連関表を作成している。郵政省については、情報通信産業に関する詳細な部門設定をした「郵政産業連関表」を作成している(図表1―1参照)。

 

図表1−1 主な産業連関表の作成状況
   産業連関表
(基本表)
産業連関表
(延長表)
郵政産業連関表 郵便事業分析用
産業連関表
特色 我が国の経済構造全体を明らかにする政府の基礎統計の一つとして関係省庁の共同事業により、5年ごとに作成されている、最も基本となる産業連関表である。 産業連関表(基本表)を基に、ほぼ同様の部門数で、各年を対象年次として、作成されている産業連関表である。 産業連関表(基本表)、産業連関表(延長表)を基に、情報通信産業を詳細に分類する一方、他の産業は統合化し、各年を対象年次として、作成されている産業連関表である。 産業連関表(基本表)、産業連関表(延長表)を基に、郵便周辺産業を詳細に分類する一方、他の産業は統合化して、作成されている産業連関表である。
対象期間 昭和30年―平成2年
(5年ごと)
昭和48年―平成7年
(毎年)
昭和55年、昭和60年、平成2年−平成6年
(毎年)
平成2年、平成6年
作成機関 総務庁(関係11省庁の共同事業) 通商産業省 郵政大臣官房財務部 郵政省郵政研究所
部門構成 行部門:527
列部門:411
行部門:525
列部門:409
行部門:74
列部門:74
行部門:53
列部門:53

 


井筒・山浦[1997]「電気通信の郵便に与える影響」『郵政研究所月報』1997年9月号No108 Return
総務庁作成の産業連関表は単に、「産業連関表」としか標記されないが、他の産業連関表と明確に区別するため、以下では、「産業連関表(基本表)」と標記する。 Return

 

2 郵便事業分析用産業連関表の枠組み

2.1 作成対象

 作成対象としては、直近の産業連関表(基本表)のデータが得られる平成2年と、郵便周辺産業等の直近のデータが得られる平成6年について、「郵便事業分析用産業連関表」を作成する。

2.2 郵便周辺産業の範囲と部門分類

 郵便事業分析用産業連関表では、郵便事業と密接に関係する産業を「郵便周辺産業」と位置付け、@郵便大口利用産業、A郵便大口利用者支援産業、B郵便ユーザー支援産業、C郵便業務支援産業、の4つの産業に分類している。

 

図表2―2 郵便事業と郵便周辺産業との関係

(注)矢印は、財・サービスの流れ

 

2.2.1 郵便事業

「産業連関表(基本表)」の「郵便」が該当する。

2.2.2 郵便周辺産業

2.2.2.1 郵便大口利用産業
2.2.2.1.1 範囲

 生産のために郵便を大量に利用する産業を「郵便大口利用産業」と呼ぶ。この部門は、平成2年産業連関表(基本表)でみて、郵便サービスの利用金額が年間200億円を超える産業を対象とした(郵便大口利用産業以外の郵便周辺産業を除く。)。

2.2.2.1.2 該当部門

 商業、金融、公務、通信販売業、保険、国内電気通信、出版、情報サービス、教育、社会保険事業、対家計民間非営利団体、水道・ガス・熱供給業、電力

2.2.2.1.3 郵便サービスの利用金額

 図表2ー3のとおりである。

 

図表2−3 郵便サービスの利用金額(平成2年)
(単位:百万円、%)
 
利用金額 郵便の投入比率 国内生産額
商業
金融
公務
通信販売業
保険
国内電気通信
出版
情報サービス
教育
社会保険事業
対家計民間非営利団体
水道・ガス・熱供給業
電力
205,033
128,734
119,195
55,812
46,091
41,102
39,701
31,350
31,141
26,948
25,290
27,156
25,088
0.2488
0.0059
0.0058
0.0788
0.0049
0.0062
0.0181
0.0048
0.0194
0.0243
0.0085
0.0037
0.0022
82,414,379
21,834,373
20,409,493
708,340
9,417,170
6,647,226
2,197,273
6,517,052
18,301,105
1,106,701
2,982,450
7,396,095
11,465,552
(注)「投入比率」は利用金額/当該部門の国内生産額

 

2.2.2.2 郵便大口利用者支援産業
2.2.2.2.1 範囲

 郵便大口利用者向けに財・サービスを提供し、郵便大口利用者の郵便の利用を支援する産業を「郵便大口利用者支援産業」と呼ぶ。

2.2.2.2.2 該当部門

メーリングサービス業、DM広告業

2.2.2.3 郵便ユーザー支援産業
2.2.2.3.1 範囲

 郵便ユーザー全般に財・サービスを提供し、郵便の利用を支援する産業を「郵便ユーザー支援産業」と呼ぶ。

2.2.2.3.2 該当部門

便箋・封筒等紙製品製造業

2.2.2.4 郵便業務支援産業
2.2.2.4.1 範囲

 郵便事業を営む上で密接不可分な財・サービスを提供する産業を「郵便業務支援産業」と呼ぶ。

2.2.2.4.2 該当部門

運輸業、郵便受託業

2.3 郵便事業分析用産業連関表の部門構成

 郵便事業分析用産業連関表は、国内生産額・投入額・産出額推計に関する統計データ等の制約から生ずる産業連関表の精度を勘案し、図表2―4に示す53部門の構成とした。

 郵便周辺産業の中で、「産業連関表(基本表)」の基本分類では捉えることができない、通信販売業は「小売」(本表では通信販売業以外の「小売」と「卸売」を「商業」に統合)、メーリングサービス業は「その他の対事業所サービス」、DM広告業は「列:広告、行:新聞・雑誌・その他の広告」、便箋・封筒等紙製品製造業は「その他のパルプ・紙・紙加工品」、郵便受託業は「その他の通信サービス」、からそれぞれ分割し、新たな部門設定を行った。

 

図表2―4 郵便事業分析用産業連関表の部門構成

 


正確には「商業(通信販売業を除く。)」と標記すべきだが、表現上煩雑となるので単に「商業」とのみ記述する。他に部門分割した産業についても、同様な標記形態とする。 Return

3 郵便事業の投入・産出構造

3.1 投入構造

 郵便事業の他の産業からの投入比率は、平成2年が16.13%、平成6年が16.08%と、投入比率が極めて低いのが特徴的である。

 平成6年の郵便事業の投入構造をみると、運輸が864億円(投入比率4.17%)、金融が399億円(同1.93%)、不動産が357億円(同1.73%)、その他の対事業所サービスが284億円(同1.37%)が金額の大きなものである(図表3―1参照)。

 

図表3−1 郵便事業の投入構造
(単位:百万円、%)
 
平成2年 平成6年
投入額 投入比率 投入額 投入比率





総計 266,083 16.13 332,777 16.08
運輸
金融
不動産
その他の対事業所サービス
電力
石油・石炭製品
印刷・製版・製本
商業
建設
情報サービス
郵便受託業
国内電気通信
水道・ガス・熱供給業
繊維製品
保険
新聞
化学製品
63,836
33,087
30,358
18,868
11,516
12,161
12,035
10,467
8,099
7,752
8,560
9,369
3,914
3,998
2,034
2,246
2,015
3.87
2.01
1.84
1.14
0.70
0.74
0.73
0.63
0.49
0.47
0.52
0.57
0.24
0.24
0.12
0.14
0.12
86,365
39,913
35,696
28,394
15,777
15,361
14,506
12,655
12,051
9,794
8,993
6,695
5,508
3,816
3,171
2,682
2,202
4.17
1.93
1.73
1.37
0.76
0.74
0.70
0.61
0.58
0.47
0.43
0.32
0.27
0.18
0.15
0.13
0.11
粗付加価値部門計 1,383,689 83.87 1,736,369 83.92
国内生産額 1,649,772 100.00 2,069,146 100.00

 

3.2 産出構造

 郵便事業の産出先を中間需要と最終需要に分けると、平成6年については、中間需要が74.9%、最終需要については民間消費支出が23.4%、その他の最終需要が1.8%の割合である。また、中間需要について、郵便大口利用産業の割合は、全体の45.0%である(図表3―2参照)。

 また、個別産業で、郵便事業の産出先として大きな割合を占める産業を抜き出したのが、図表3―3で、平成6年は、公務(全需要の7.55%)、商業(同6.76%)、金融(同6.45%)、建設(同4.33%)、対個人サービス(同3.89%)などである。

 

図表3―2 郵便事業の主な産出構造

 

図表3―3 郵便事業の個別産業についての産出構造

 

4 郵便事業分析用産業連関表に基づく分析結果

4.1 郵便事業の需要構造

4.1.1 郵便事業と最終需要との関係

4.1.1.1 分析目的と分析方法

 産業連関表では、国内生産額は、最終需要によって誘発されるものであると考え、その生産誘発依存度を計算することによって、最終需要の変化が各部門の生産にどのような影響を与えるかを分析する。

 ここでは、郵便事業及び郵便周辺産業について、最終需要による生産誘発依存度を測定し、その産業構造の特徴を明らかにする。

4.1.1.2 分析結果(図表4―1参照)

 郵便事業の需要の約6割は民間消費支出をまかなうための生産から直接・間接的に発生したものである。平成2年における民間消費支出に対する生産誘発依存度は、58.5%、平成6年は60.7%であった。

 これを郵便周辺産業及び全産業平均と比べると、郵便事業は郵便周辺産業よりも約5ポイント、全産業平均よりも12〜13ポイントも高く、郵便事業が民間消費支出の動向から強い影響を受けやすいという特徴がうかがえる。

 また、平成2年と平成6年を比較すると、平成6年の方がより民間消費支出による生産誘発依存度が高い。一般政府消費支出も同様の傾向を示し、両者を合わせると、民間消費支出に対する依存度は平成2年の70.1%から平成6年の72.9%に2.8ポイント上昇した。

 

図表4−1 最終需要による生産誘発依存度
(単位:百万円、%)
 
家計外
消費支出
民間
消費支出
一般政府
消費支出
国内総固定
資本形成(公的)
国内総固定
資本形成(民間)
在庫
純増
輸出 合計
郵便事業
平成2年
平成6年

3.9
3.6

58.5
60.7

11.6
12.2

3.9
5.3

14.2
11.7

0.4
―0.1

7.5
6.6

100.0
100.0
郵便周辺産業
平成2年
平成6年

2.5
2.3

53.7
54.4

17.4
18.7

3.4
4.3

14.7
13.6

0.3
―0.1

8.0
6.7

100.0
100.0
産業平均
平成2年
平成6年

3.3
3.2

45.6
48.9

6.4
7.4

7.2
9.7

24.5
19.8

0.6
―0.2

12.3
11.2

100.0
100.0

 

4.1.2 郵便需要の変化に関する変動要因

4.1.2.1 分析目的と分析方法

 経済のサービス化を経済全体に占めるサービス部門の比率が増加していくことととらえ、産業構成の中でサービス部門が大きな比率となることが、郵便需要にとってプラス要因となるかどうかを明らかにする。

 このため、産業連関分析の分析方法の一つである変動要因分析の手法を用いて、平成2年の郵便事業の国内生産額から平成6年の郵便事業の国内生産額の変化を、各部門の郵便の投入比率の変動分、各部門の国内生産額の変動分、両者の変化による変動分(交絡項)、の3つに分けるとともに、さらに、産業をサービス部門及び物財部門の2つに分け、郵便事業の国内生産額の変化をみる。

4.1.2.2 分析結果(図表4―2参照)
@  平成2年から6年にかけての郵便事業に関する中間需要の増加額は、郵便事業の国内生産額全体の増加額4,194億円の66.1%に当たる2,772億円である。
A  この中で、サービス部門による郵便需要の寄与率が85.6%を占める。その内訳は、投入比率の変化、すなわち単位当たりの生産に要する郵便投入量の増加が45.5%、国内生産額の増大が37.2%である。
B  物財部門の寄与率は全体の14.4%を占め、その内訳は投入比率の変化が23.1%、国内生産額の増大が△7.5%である。
C  サービス部門では生産の拡大と投入比率の上昇という2つの面から、郵便需要を拡大させている。特に投入比率については、サービス部門はプラス要因、物財部門はマイナス要因となっており、産業全体におけるサービス部門の比率が上昇すること、すなわち、サービス化の進展は、他の条件が一定である場合、郵便需要を押し上げる要因になると言えよう。
D  なお、中間需要増加の最大要因となっている産業全体の郵便事業についての投入比率の変化をみると、平成2年が0.15%、平成6年が0.18%である。一般的に投入比率が変化する要因としては、相対価格の変化、生産要素の組合せの変化などが挙げられるが、対企業向けサービス価格指数(日本銀行)によると、平成2年基準改訂の指数(平成2年=100)では、平成6年の価格指数は124.5であることから、投入比率の変化による需要増のかなりの部分は価格上昇(平成6年1月24日改訂)に伴う金額の増加であると推察される。

 

図表4―2 平成2年から6年にかけての郵便需要増加の変動要因分析

 

4.2 郵便事業の他産業への影響

4.2.1 郵便料金改定による価格波及効果

4.2.1.1 分析目的と分析方法

 郵便料金改定による諸物価への影響の強さとその特徴を明らかにするため、郵便事業及び郵便事業と同様に通信産業の一つである国内電気通信事業の料金改定による各産業への影響を産業連関分析の価格波及モデルによって計測する。

 産業連関分析の価格波及モデルは、価格変動が需要量に影響を与えないことを前提としており、全ての部門の取引において生産要素価格の変化が全て産出価格に転嫁された場合に市場で成立すると期待される計算上の均衡価格である。通常の場合、投入される財の価格が変動すると、その財の需要が変動するため、その財に支出される費用の変動額はその財価格の変動率ほどは変化しない。

 したがって、以下の分析も産業連関分析上の理論値を求めているのであり、生産者価格への潜在的影響力をみるための分析であることに十分注意する必要がある。

4.2.1.2 分析結果
4.2.1.2.1 産業への価格波及

@ 郵便料金改定の価格波及

 郵便料金改定による価格波及を最も強く受ける部門は、郵便大口利用者支援産業である。この産業は、平成6年を例にとると、その改定率の23.53%分変動する。その他に影響の大きい産業は、郵便大口利用産業で、改定率の0.54%分変動する。
 一方、産業平均では、0.47%(平成2年)、0.55%(平成6年)と低い。これは、産業平均の郵便投入比率が0.15%(平成2年)、0.18%(平成6年)と極めて低いことを反映しているものと考えられる(図表4―3参照)。

 

図表4―3 郵便料金改定による産業別価格変動率
部門名 平成2年 平成6年
郵便大口利用産業 0.48% 0.54%
郵便大口利用者支援産業 22.82% 23.53%
郵便ユーザー支援産業 0.18% 0.22%
郵便業務支援産業 0.20% 0.22%
農林水産業 0.10% 0.10%
鉱工業・建設 0.17% 0.18%
サービス 0.23% 0.25%
産業平均 0.47% 0.55%

 

A 国内電気通信料金改定の価格波及

 国内電気通信の料金改定の影響を強く受ける産業は、郵便の場合と同様に、郵便大口利用者支援産業で、平成6年については、国内電気通信の料金改定率の2.79%分価格が変動する。また、産業平均では、1.67%(平成2年)、1.87%(平成6年)価格変動を招く(図表4―4参照)。

 

図表4―4 国内電気通信の料金改定による産業別価格変動率
部門名 平成2年 平成6年
郵便事業 0.70% 0.47%
郵便大口利用産業 1.37% 1.19%
郵便大口利用者支援産業 2.73% 2.79%
郵便ユーザー支援産業 0.62% 0.66%
郵便業務支援産業 0.96% 1.02%
農林水産業 0.36% 0.34%
鉱工業・建設 0.55% 0.53%
サービス 0.92% 0.96%
産業平均 1.67% 1.83%

 

B 郵便と国内電気通信の料金改定の産業への価格波及の比較

 郵便と国内電気通信の料金改定の影響を産業平均で比較すると、平成2年では、郵便は0.47%、国内電気通信は1.67%、平成6年では郵便は0.55%、国内電気通信は1.83%と、国内電気通信は郵便の約3倍の価格変動を招く(図表4―5参照)。

 

図表4―5 郵便及び国内電気通信の料金改定の産業への波及効果

 

4.2.1.2.2 家計(民間消費支出)への価格波及

 郵便及び国内電気通信の料金改定による各産業の価格波及が投入される財・サービスの価格にすべて反映され、又このとき購入する財・サービスの構成に何らの変化もないと仮定した場合、家計(民間消費支出)の価格への影響(全ての財・サービスの価格変化を民間消費支出の構成比で加重平均したもの)は、平成6年の場合、郵便は料金改定率の平均0.44%、国内電気通信は1.34%である。産業への価格波及と同様に郵便は国内電気通信の約1/3弱となっている(図表4―6参照)。

 

図表4―6 郵便及び国内電気通信の料金改定の家計(民間消費支出)への波及効果

 

4.2.2 郵便事業による生産波及効果

4.2.2.1 分析目的と分析方法

 郵便事業の他産業に対する影響を明らかにするため、郵便事業の生産が郵便事業に財・サービスを提供する産業に発生する生産誘発額を計測する。

4.2.2.2 分析結果
4.2.2.2.1 郵便の生産波及全体

 平成2年における郵便事業の国内生産額16,498億円が誘発する生産額は、郵便事業の国内生産額の1.25倍に相当する総額20,569億円の生産誘発額を国内産業にもたらす。同様に、平成6年は郵便事業の20,691億円の国内生産額から、総額で25,717億円の生産誘発額がもたらされるが、郵便の生産誘発係数はかなり小さい(1.24)。
 このように、郵便の生産誘発係数が小さいのは、郵便事業における他財の中間投入比率が0.16%であることが示すように、郵便事業の中間投入額が雇用者所得等の粗付加価値額に比してかなり小さいためであると考えられる。

4.2.2.2.2 郵便事業の生産誘発依存度

 今度は、郵便事業の生産に誘発される各財の生産誘発額が各財の国内生産額に占める割合をみる(図表4―7参照)。

 郵便事業の生産誘発依存度は、産業平均では、平成2年が0.23%、平成6年が0.29%と極めて低く、最も生産誘発依存度の高い郵便ユーザー支援産業でも、平成2年は0.35%、平成6年は0.43%に過ぎない。

 

図表4―7 郵便事業の生産誘発依存度
部門名 平成2年 平成6年
郵便大口利用産業 0.06% 0.07%
郵便大口利用者支援産業 0.06% 0.06%
郵便ユーザー支援産業 0.35% 0.43%
郵便業務支援産業 0.23% 0.29%
農林水産業 0.01% 0.01%
鉱工業・建設 0.02% 0.03%
サービス 0.04% 0.05%
産業平均 0.23% 0.29%

 

4.2.2.2.3 生産波及分の産業別構成

 生産波及分の産業別構成比についてみると、「郵便大口利用産業」の比率が最も高く(29.2%(平成2年)、27.9%(平成6年))、「鉱工業・建設」(25.3%(平成2年)、24.2%(平成6年))、「サービス」(20.9%(平成2年)、22.1%(平成6年))の順である(図表4―8参照)。

 

図表4―8 郵便事業の生産波及分の構成比
部門名 平成2年 平成6年
郵便大口利用産業 29.2% 27.9%
郵便大口利用者支援産業 0.0% 0.0%
郵便ユーザー支援産業 0.1% 0.1%
郵便業務支援産業 19.5% 20.9%
農林水産業 0.3% 0.2%
鉱工業・建設 25.3% 24.2%
サービス 20.9% 22.1%
その他 4.7% 4.5%
産業合計 100.0% 100.0%

 

4.3 郵便周辺産業の他産業への影響

4.3.1 郵便周辺産業が郵便事業及びその他の郵便周辺産業に与える影響

4.3.1.1 分析目的と分析方法

 郵便周辺産業の生産に必要とする中間需要から発生する生産誘発額が郵便事業及びその他の郵便周辺産業の生産にとって大きな割合となっている産業ならば、その産業に対する需要面での依存性は高いといえるであろう。

 ここでは郵便周辺産業それぞれについて、まず、それぞれの産業の生産がもたらす郵便事業及びその他の郵便周辺産業への生産誘発額を求め、次に、その誘発額の当該産業(郵便事業及びその他の郵便周辺産業)の国内生産額に占める比率を求めることにより、依存関係の強さをみることとする。

4.3.1.2 分析結果
4.3.1.2.1 郵便周辺産業に対する郵便事業の依存度(図表4―9参照)

 郵便事業に対し最も影響力を持つ郵便周辺産業は商業である。この商業に対する依存度は平成2年が10.90%、平成6年が10.50%であり、郵便事業の1割強が商業の生産活動から直接・間接的に波及されたものである。

 その他、郵便事業に対する影響力の強い郵便周辺産業は金融(平成6年の依存度:6.95%)、公務(同5.88%)、運輸(同3.01%)、DM広告業(同2.86%)、通信販売業(同2.53%)、保険(同2.36%)、国内電気通信(同2.26%)の順となっている。

 

図表4―9 郵便周辺産業に対する郵便事業の依存度

 

4.3.1.2.2 郵便周辺産業の依存関係

 郵便大口利用者支援産業であるメーリングサービス業、DM広告業、郵便ユーザー支援産業である便箋・封筒等紙製品製造業について、他の郵便周辺産業からの影響をみると、いずれも商業に対する依存度が極めて高い。

 この他、メーリングサービス業については、DM広告業、通信販売業、金融、公務などに対する依存度が高くなっている(図表4―10参照)。

 

図表4―10 平成6年の郵便周辺産業相互の依存度
(国内生産額に対する生産誘発額の割合)
(単位:%)
  メーリング
サービス業
DM広告業 便箋・封筒等
紙製品製造業
合計 100.00 100.00 100.00
商業
DM広告業
通信販売業
金融
公務
国内電気通信
保険
電力
運輸
水道・ガス・熱供給業
出版
教育
情報サービス
対家計民間非営利団体
社会保険事業
郵便事業
便箋・封筒等紙製品製造業
メーリングサービス業
郵便受託業
38.49
17.60
14.87
10.97
7.61
7.50
4.07
2.82
2.64
2.39
2.33
2.03
1.55
0.26
0.10
0.06
0.01
0.00
0.00
64.15
0.00
0.09
5.54
1.25
1.83
2.08
1.57
2.85
1.22
3.64
3.02
2.23
0.31
0.08
0.06
0.01
0.00
0.00
24.52
0.05
0.35
5.46
3.60
0.92
1.93
1.25
5.69
1.36
0.48
2.34
2.29
1.01
0.26
0.43
0.00
0.00
0.00

 

4.3.2 通信販売業、DM広告業の郵便事業及びその他の郵便周辺産業に与える影響

4.3.2.1 分析目的と分析方法

 通信販売業及びDM広告業は、郵便周辺産業の中でもとりわけ国内生産額の増加率が高い産業である。

 そこで、これらの産業の平成2年から平成6年にかけての国内生産額の増加による郵便事業及び郵便周辺産業に対する生産誘発額の大きさを分析する。なお、分析方法としては、平成6年の「郵便事業分析用産業連関表」を基に、通信販売業とDM広告業それぞれについて、平成2年から平成6年にかけての国内生産額の増加分の生産波及効果を求めた。

4.3.2.2 分析結果
4.3.2.2.1 通信販売業

 平成2年及び平成6年の通信販売業の国内生産額は、それぞれ7,083億円、8,784億円で、この間の通信販売業の国内生産額の増加額は1,701億円(年平均増加率は5.53%)である。通信販売業の国内生産額の増加による郵便事業の生産誘発額の増加額は112億円で、平成6年における郵便事業の国内生産額の0.54%に当たる。

 これを国内生産額の増加率で考えると、年平均5.53%の割合で通信販売業の国内生産額が増加することは、郵便事業にとって年平均0.17%の国内生産額の増加要因となったことを示す。
 通信販売業の国内生産額の増加を最も享受する産業は、印刷・製版・製本(412億円)、広告業(281億円)である。なお、メーリングサービス業への生産誘発額は21億円である(図表4―11、4―13参照)。

4.3.2.2.2 DM広告業

 平成2年から平成6年にかけてのDM広告業の国内生産額の増加額の601億円(年平均増加率6.89%)は、郵便事業の国内生産額の増加率を0.23%増加させる。また、DM広告業の国内生産額の増加を最も享受する産業は、郵便事業(181億円)であるが、そのほかでは印刷・製版・製本(89億円)、出版(51億円)への生産波及が大きい。メーリングサービス業への生産波及は30億円である(図表4―12、4―13参照)。

 

図表4―11 平成2年から平成6年にかけての通信販売業の国内生産額の増加に伴う他産業への生産誘発額(主な産業)
図表4―12 平成2年から平成6年にかけてのDM広告業の国内生産額の増加に伴う他産業への生産誘発額(主な産業)
図表4―13 平成2年から平成6年への通信販売業及びDM広告業の生産額の増加に伴う他産業への生産誘発額の増加
(単位:百万円)
産業名 通信販売業 DM広告業
郵便事業
商業
金融
公務
保険
国内電気通信
出版
情報サービス
教育
社会保険事業
対家計民間非営利団体
水道・ガス・熱供給業
電力
通信販売業
メーリングサービス業
DM広告業
便箋・封筒等紙製品製造業
運輸
郵便受託業
農林水産業
鉱業
食料品
繊維製品
パルプ・紙・木製品
新聞
印刷・製版・製本
化学製品
石油・石炭製品
窯業・土石製品
鉄鋼
非鉄金属
金属製品
一般機械
電気機械
輸送機械
精密機械
その他の製造業
建設
不動産
国際電気通信
公共放送
民間放送
有線放送
研究
医療・保険
その他の社会保障
その他の公共サービス
広告
ニュース供給・興信所
その他の対事業所サービス
対個人サービス
事務用品
分類不明
11,239
5,847
8,092
112
1,009
3,397
1,782
5,831
150


1,322
4,212
170,034
2,096
47
60
12,411
49
905
388
443
769
10,368
4,908
41,207
4,106
2,725
510
833
259
1,007
420
891
931
70
3,890
2,776
8,216
163

8,518
50
811


392
28,129
1,847
8,006
3,342
1,363
2,608
18,125
1,945
2,361
115
207
2,125
5,143
1,132
47


377
1,266

2,998
60,100
10
2,632
79
210
107
117
203
2,299
173
8,910
1,519
723
117
215
83
214
42
192
92

1,328
593
1,006
41

240
114
329


266
700
661
260
909
227
2,679
(再掲)
 当該産業を除く郵便周辺産業計
 非郵便周辺産業
170,034
57,656
140,859
60,100
38,561
24,581
産業合計 368,549 123,242

 


j部門の郵便(=k)投入額の変化は次の式により求められる。
△ Xkj=△ Xj・akj+Xj・△ akj+△ Xj・△ akj
ただし、Xi は j 部門の国内生産額、Xkjは j 部門の郵便投入額、akj は j 部門の k(郵便)の投入比率、△は2時点間の変動分を表す。
Return
k財の価格変化に対するj部門の価格変化は次の式により求められる。
△ Pj=(bkj/bkk)・△ Pk
ただし、kは郵便又は国内電気通信、Pi は j 部門の価格、bkj は kj 部門の逆行列係数、bkk は kk 部門の逆行列係数、Pk は k 財の価格、△は変動分を表す。
Return
郵便(=k)による j 部門の国内生産額の変化(=生産誘発額)は次の式により求められる。
△ kj=(bjk/(bkk)・△ Xk
ただし、Xj は j 部門の国内生産額、bjk は j 部門と k 部門の交点の逆行列係数、bkk は k 部門と k 部門の交点の逆行列係数、Xk は郵便(=k)の国内生産額、△は変動分を表す。
Return

 

5 まとめ

 本調査研究では、郵便事業と他産業、特に郵便事業と密接に関連する郵便周辺産業との相互依存関係について、既存の産業連関表のほか各種統計資料等に基づいて作成した「郵便事業分析用産業連関表」により分析を行った。

5.1 郵便事業の他産業への影響

 郵便事業と他産業との関係については、郵便料金改定の価格波及の産業平均については、変動幅を100%とすると、0.47%(平成2年)及び0.55%(平成6年)とかなり小さいことが分かった。これは、産業平均の郵便投入比率が0.15%(平成2年)、0.18%(平成6年)と極めて低いことを反映しているものと考えられる。家計についても0.38%(平成2年)及び0.44%(平成6年)と比較的低い。

 一方、郵便事業の生産波及効果について、郵便事業の生産誘発係数でみると、平成2年は1.25、平成6年は1.24と小さいことが分かり、さらに、波及先の産業の国内生産額に占める割合をみると、産業平均で0.23%(平成2年)及び0.29%(平成6年)とかなり小さいことが分かった。なお、このように郵便事業の生産誘発係数が小さいのは、郵便事業における他財の中間投入比率が0.16%であることが示すように、郵便事業の中間投入額が雇用者所得等の粗付加価値額に比してかなり小さいためである。郵便事業の波及先の産業の国内生産額に対する依存度が小さいのは、郵便事業の中間投入比率が低いことと、郵便事業の国内生産額が小さいことによる。

 一方、郵便事業と郵便周辺産業との関係については、郵便料金改定の波及効果は、変動幅を100%とすると、「郵便大口利用者支援産業」(DM広告業及びメーリングサービス業)への波及が22.82%(平成2年)及び23.53%(平成6年)と極めて大きいことが分かった。

 また、郵便事業の郵便周辺産業への生産波及については、波及金額の構成比でみると、「郵便大口利用産業」(商業、金融、通信販売業等)が29.2%(平成2年)及び27.9%(平成6年)への影響が最も大きいが、生産誘発依存度については0.06%(平成2年)及び0.07%(平成6年)とかなり小さい。

 以上により、郵便事業の他産業への影響については、産業全体でみると、価格波及及び生産波及はかなり小さい。価格波及が小さいのは、各産業の郵便の投入比率の低さを反映しているとともに、生産波及が小さいのは、郵便事業の中間投入比率の低さを反映しているものと考えられる。

 一方、郵便周辺産業への影響については、価格波及は特定の産業(郵便大口利用者支援産業)への影響が大きく生じる一方、生産波及については、各産業の生産誘発依存度からみるとその影響は小さいことが分かる。

5.2 郵便周辺産業の他産業への影響

 郵便周辺産業に対する郵便事業の依存度についてみると、郵便事業に対し最も影響力を持つ郵便周辺産業は商業である。この商業に対する依存度は平成2年が10.9%、平成6年が10.5%であり、郵便事業の1割強が商業の生産活動から直接・間接的に波及されたものである。また、郵便周辺産業のうち、郵便大口利用者支援産業であるメーリングサービス業、DM広告業、郵便ユーザー支援産業である便箋・封筒等紙製品製造業についても、いずれも商業に対する依存度が高い。

 また、郵便周辺産業の中でもとりわけ国内生産額の増加率が高い産業である通信販売業及びDM広告業について、平成2年から平成6年にかけての国内生産額の増加が郵便事業に対する影響をみると、通信販売業の国内生産額の増加(年平均増加率5.53%)は郵便事業の国内生産額の0.17%の増加をもたらし、DM広告業の国内生産額の増加(年平均増加率6.89%)は、郵便事業の国内生産額の0.23%の増加をもたらす。

 また、DM広告業については、郵便事業が最も大きく生産誘発を受ける産業ではあるが、通信販売業については、郵便事業よりも印刷・製版・製本が最も高い生産誘発をうける産業であることが分かる。

 以上のことから、郵便事業及び郵便周辺産業相互の生産面での依存関係をみると、郵便事業及び郵便周辺産業とも商業への依存関係が強いこと、郵便周辺産業の中でもとりわけ国内生産額の増加率が高い産業である通信販売業及びDM広告業の影響をみると、通信販売業は印刷・製版・製本、DM広告業は郵便事業が、それぞれ最も大きい生産誘発をうける産業であることが分かる。

5.3 今後の課題

 本分析は、郵便事業と郵便周辺産業との相互依存関係について、新たな産業連関表を作成の上分析した初めての試みである。今回作成した「郵便事業分析用産業連関表」は、新たに部門を設定した「通信販売業」「メーリングサービス業」「DM広告業」「便箋・封筒等紙製品製造業」については、統計資料が乏しいことにより、多くを業界団体へのヒアリング結果に基づき、国内生産額・投入額・産出額を推計したもので、試作表的な意味合いが強い。

 各種波及結果については、国内生産額・投入額・産出額の推計により大きく左右され、今回の分析結果が郵便事業と郵便周辺産業との相互依存関係を的確に反映しているとは必ずしもいえない。

 さらに、今回の分析方法についても、産業連関分析の基本的・初歩的な分析方法を用いており、ほかにも郵便事業と郵便周辺産業との相互依存関係を産業連関分析の手法で明確に描き出す手法も検討の余地があるものと考えられる。

 しかし、今回初めて「郵便事業分析用産業連関表」を作成し、郵便事業の経済学的な影響力、特に郵便周辺産業への影響力を計量的に分析した本研究は、郵便事業の社会的な影響力を計量化・数値化する上で端緒となる研究になったものと考えられる。

 今後、通信販売業、DM広告業、メーリングサービス業などの郵便周辺産業について、産業統計の基になる「日本標準産業分類」における新たな分類設定をはじめとする各種統計データの整備が十分図られることを期待するとともに、郵便事業の社会的・経済的な影響力を図る尺度として今回の分析が参考となってくれれば幸いである。

 

<参考文献>

1 井筒郁夫、山浦家久[1997]「電気通信の郵便に与える影響」『郵政研究所月報』1997年9月号No.108

2 総務庁編[1994]『平成2年産業連関表』

3 通商産業大臣官房調査統計部編[1997]『1994年産業連関表(延長表)』、(社)通産統計協会

4 郵政大臣官房財務部編[1995]『郵政産業連関表作成に関する調査報告書』

5 郵政省郵務局編[1995]『最近における郵便の利用構造―平成6年9月郵便利用構造調査結果報告書―』

6 郵政省郵務局編[1997]『郵便の統計』

7 (社)日本通信販売協会編[1997]『通信販売ファクトブック’1997』

8 (社)日本ダイレクト・メール協会編[1997]『DM年鑑’97』

9 (株)電通編[1997]『電通広告年鑑』

10 TKC編[1997]『TKC経営指標』

11 日本銀行調査統計局編[1997]『物価指数年報』

12 総務庁編[1998]『日本標準産業分類(平成5年10月改訂)』

13 郵政省大臣官房財務部編[1996]『郵政関連業実態調査報告書(平成7年度メーリングサービス業)』

14 東條進・北島光泰[1991]『メーリングサービス業に関する調査研究報告書―郵政研究所調査研究報告書―』

15 竹下剛・田中明宏[1993]『情報通信の産業連関分析に関する調査研究報告書―郵政研究所調査研究報告書―』