郵政研究所月報

2000.8


調査研究論文

郵政事業環境会計に関する調査研究


前郵政研究所客員研究官(神戸大学大学院経営学研究科助教授)
前第一経営経済研究部主任研究官(現第二経営経済研究部主任研究官
第一経営経済研究部研究官

國部 克彦
山本 一吉
延原 泰生

[要約]

 1 近年、環境会計を導入する企業が増加しているが、郵政事業においても効果的、効率的な環境政策の推進及び情報公開の必要性を考えると、環境会計は、検討に値すべき課題である。
  本稿では、環境会計導入の背景、導入状況について検討し、また、郵政事業に環境会計を導入した場合の環境保全コスト等を試算するとともに、環境会計を導入する場合の課題について検討する。
2 企業が環境会計を導入している背景としては、経営管理の効率化等の内部管理の必要性、ISO14001の認証取得に代表される企業の自主的な環境保全活動の促進、株主、投資家、消費者等からの環境情報開示の要求等が挙げられる。
3 環境保全コストから投資額を除いた費用が算出でき、かつ、環境保全コストの集計範囲に相当する売上高が把握できた企業35社について、環境保全のための費用の売上高に対する比率を平成10年度分のデータから算出すると、最小0.08%、最大2.35%、平均0.64%であった。しかし、一部の企業の数値が平均値を押し上げており、半数以上が0.5%未満であった。
4 環境報告書等で開示された環境会計等に関する情報を次の6タイプ―(1)環境保全コストに対応する効果についての対比がないもの、(2)経済効果対比型:実質的効果だけを計上し、環境保全コストに対比させているもの、(3)経済効果対比型:実質的効果以外にいわゆる「みなし効果」又は偶発効果も計上し、環境保全コストに対比させているもの、(4)環境保全効果を環境保全コストに対比させる環境保全効果対比型、(5)経済効果と環境保全効果の両者を計上し、環境保全コストに対比させる総合的効果対比型、(6)環境保全コストの効率的な管理に力点を置く内部志向型―に分類し、平成10年度の公表事例から53社について調査したところ、(1)のタイプが54.7%と最も多く採用されている。しかし、環境庁の検討会が本年5月に公表した環境会計に関するガイドラインでは、効果を含んだ公表用のフォーマットも含まれており、(1)のタイプは今後減少していくと考えられる。
5 郵政事業における平成10年度の環境会計を試算した。環境保全コストについては、「郵政省環境基本計画第2回フォローアップ」の「10年度実施状況」欄に記載された施策について、種々の前提の基に環境保全コストを試算した。投資額は約231百万円、費用額は約1,323百万円であった。
  環境保全効果については、「郵政省環境基本計画第2回フォローアップ」及び「同第3回フォローアップ」における数値目標の進捗状況のデータを用いて、総量ベース及び対前年度比の数値を掲出することにより、環境負荷量そのものを示すとともに、環境負荷削減量を計算することにより環境保全コストとの比較を可能とした。
6 郵政事業に環境会計を導入する場合には、環境保全コストを把握する体制の確立、入札制度の採用に伴う環境保全コストの把握、郵政事業としての環境パフォーマンス指標の確立、情報開示の継続性、第三者意見書の問題が課題として挙げられる。

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