米国地域通信における新形態競争


                                通信経済研究部 木村 順吾

1. 我が国の電気通信市場においては、従来、長距離通信市場や移動体通信市場の競争進展が注目を
 集めてきたが、NTT民営化以降も依然としてほぼNTTの独占が続く地域通信市場に関してはあ
 まり関心が払われることは少なかった。しかしながら、1.NTTの地域通信サービス(市内通話部
 門・加入者線部門)の損益明細の開示、2.NTTにおける事業部制導入に伴う長距離通信事業部と
 地域通信事業部との領域明確化、3.次世代網BISDN推進におけるFTTH/FTTC建設問題
 が契機となって、地域通信市場の動向及びこれをめぐる電気通信政策の在り方が一躍注目を集めつ
 つある。

2. そこで、我が国の今後の電気通信政策上の中核的課題と考えられる地域通信問題に関して、前号
 に引き続き米国の動向を調査した。前号においては、LECがほぼ事実上独占してきたLATA内
 通信市場のうちの比較的長距離通信の市場について触れたが、本号においては更に加入者に近いラ
 スト・ワン・マイル部分についての動向について触れることとする。

3. 加入者に近い末端網の建設はコストが嵩み、この意味で参入障壁が高い市場ではあったが、先ず
 大口企業等を対象とした専用線サービス、更にはIXCとの相互接続を請け負うCAPという新事
 業者が登場しつつあり、これに対して規制庁も容認の姿勢を見せはじめている。翻って、そもそも
 自由化自体が遅れた日本の電気通信にあってはこの地域通信分野においても米国からは後進性は否
 めないが、日本の地域通信の将来を考えるとき、早晩、地域通信事業を安定化しつつも同時に活性
 化させる複雑で補償的な政策の検討準備が要請されるのではないかという示唆を与えてくれている。