多チャンネル時代における視聴者行動に関する分析


                              情報システム研究室 外薗 博文

1. 我が国においては、放送メディアの多様化にともない、多チャンネル化が着実に進展しつつある。
  多チャンネル化はサービスの競合をも意味し、NHKや民放の経営にも影響を及ぼそうとしてい
 る。現在、このような問題に関し放送メディアサイドの議論は多いものの、視聴者サイドに立った
 議論は少ない。本件は、視聴者サイドから調査したデータを比較分析することにより、多チャンネ
 ル化の問題点や効用を明らかにしようとするものである。

2. 多チャンネル化の影響を時間軸上でみると、多チャンネル化により低視聴率の時間帯で視聴率が
 高くなり、高視聴率の時間帯の視聴率が低くなるという視聴構造の変化が現れ、時間軸上における
 視聴の分散、平準化が進んでいく。また、NHKや民放といった地上波に限ってみると、プライム
 タイムにおいて急激に視聴率が低下していくが、これは直接的なメディア間の競争だけでなく、時
 間軸上における視聴の移行といった構造的な問題を含んでいる。更に、この時間帯の番組は、高コ
 ストの番組が多く、収益上のウエイトも大きいことから、将来的に経営上の大きな問題となる可能
 性がある。

3. 多チャンネル化の影響を番組の種目別にみると、現在プライムタイムにおいて高視聴率を獲得し
 ている娯楽番組の視聴率が大幅に減少するのに対し、映画、スポーツ、音楽といった専門番組が全
 般的に視聴率を伸ばしていく。ニュース番組は、提供チャンネル数は飛躍的に増えているにも係わ
 らず、視聴率はそれほど増えない。今後、多チャンネル化の進展にそった番組編成の見直しが必要
 になってくるものと考えられる。

4. 多メディア化・多チャンネル化の意義として、質、量ともに提供される番組の多様性が増大する
 こと、及びこれにともない実際に視聴される番組が多様化することが挙げられる。しかし、このこ
 とに関しては客観的に実証されているとは言えず、あくまでも多様化してくるであろうという憶測
 の域をでていなかった。今回、相対エントロピーを用いた多様性の分析において、多チャンネル化
 にともない視聴番組の多様性が着実に増大していくであろうことが検証できた。