No.64 1994年2月

「国際通話交流の変動要因分析―何が国際通話交流を拡大させたか―」

                             第三経営経済研究部研究官 山崎 健 
1 本稿は、1970年度から1991年度までの国際通話トラヒックデータ(発信回数・着信回数)を用い、計量的方法により国際通話交流を規定している要因を分析し、何が国際通話交流を拡大させているかを明らかにした。

2 まず、国際通話トラヒックと社会経済指標との相関分析により世界全体及び国別の国際通話交流構造を推定した。全体的な傾向として、国際通話交流は、・日本及び海外の経済成長、・貿易取引や対外直接投資にみられる企業活動に伴う経済交流、・外国人入国者や日本人出国者にみられる人的交流の影響を受けているが、国別にみると、通話相手国の経済水準や日本との地理的条件の相違等を反映し、国際通話交流を規定する要因に特徴がみられる。その違いを経済交流・人的交流という2つの要因からみてみると、欧米先進国のように、経済交流・人的交流の双方の影響を受けている国や、イランやブラジルのように、経済交流の側面より専ら人的交流の影響を強く受けている国があることが明らかになった。このように、国際通話交流の要因分析により、各国との国際関係を別の角度から明らかにすることができた。

3 次に、発信(日本発信→海外着信)・着信(海外発信→日本着信)別に国際電話需要関数を推定することにより、所得要因と料金要因が国際電話の需要に与える影響を世界全体及び国別に分析した。   発信は、世界全体及び国別ともに、海外の所得水準の上昇と国際電話料金の低廉化が国際電話の需要を増大させたことがわかった。また、日本への着信は、日本の所得水準の上昇が日本向けの国際電話の需要を増大させているのは各国共通だが、海外の国際電話料金が与える影響については、国によって異なっており、国によっては非弾力的になっている。

4 最後に、MTV分析を参考にして、因子分析を用いて国際通話トラヒック(総発信回数)の変動要因を抽出した。その結果、国際通話トラヒックの変動要因として3つの変動要因が抽出され、第一変動要因が経済水準・国際交流要因、第二変動要因が料金要因、第3変動要因が企業業績要因である。その中でも、経済水準・国際交流要因が、国際通話交流に最も大きな影響を与えていることが分かった。

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